作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

イギリス弦楽四重奏団のOp.1、Op.42、Op.103(ハイドン)

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弦楽四重奏曲が続きます。湖国JHさんにお借りしているアルバム。

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イギリス弦楽四重奏団(The English String Quartet)の演奏で、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.1のNo.5(No.0)、Op.42、Op.103の3曲を収めたアルバム。収録はPマークが1986年との表記しかありません。レーベルは良い録音の多い英Meridian。

ライナーノーツによれば、ハイドンの数多の弦楽四重奏曲の中から、独立した作品として書かれたものを初期、中期、後期から1曲ずつ選んで取りあげたとの企画。珍しいのはOp.1のNo.5でしょうか。

演奏者のイギリス弦楽四重奏団は初めて耳にするクァルテット。古くからイギリス、ヨーロッパでは有名なクァルテットだそうですが、日本ではあまり知られた存在ではないようです。1982年にメンバーが交代し、この録音のメンバーとなったようです。

第1ヴァイオリン:ダイアナ・カミングス(Diana Cummings)
第2ヴァイオリン:コリン・キャロー(Colin Callow)
ヴィオラ:ルチアーノ・ロリオ(Luciano Iorio)
チェロ:ジェフリー・トーマス(Geoffrey Thomas)

ヴァイオリンのダイアナ・カミングスとヴィオラのルチアーノ・ロリオは夫婦とのこと。2人とも直前はロンドンの著名なオケのメンバーとして働いていたようですが1982年にこのクァルテットのメンバーとなったそうです。ダイアナ・カミングスは同年に王立音楽アカデミーの教授となっています。現在リリースされているアルバムもわずかであり、情報も少ないため、詳しいことはわかりません。

純粋に演奏から彼らの音楽を楽しむ事としましょう。

Hob.II:6 / String Quartet Op.1 No.0 [E flat] (c.1757-59?)
ながらく消失していた曲で、1931年にマリオン・スコットとガイリンガーによって別々に発見された曲。1986年の制作としては鮮明な録音。特に高音が鮮明というか、少々クッキリしすぎかもしれない独特の録音。MeridianらしくAKGのマイク、Nagraのテープレコーダー、AGFAのテープが使われいるとの記載があります。録音のせいかヴァイオリンがクッキリ鋭い音に聴こえます。イギリス弦楽四重奏団の響きは華麗、華美な印象。演奏は初期のハイドンの弦楽四重奏曲に共通なディヴェルティメントに近い明るく優雅な舞曲のような味わいを上手く表現しています。非常にオーソドックスな音楽のつくりですが、クッキリとしたヴァイオリンによって非常に華やか。リズムもはっきり刻んでいるので、音楽に活気があります。5楽章構成プレスト-メヌエット-アダージョ-メヌエット-フィナーレと言う構成。一貫して舞曲風で演奏者自身が楽しむための曲のようです。

Hob.III:43 / String Quartet Op.42 [d] (1785)
1785年にハイドンがスペインのオスナ公爵夫人に送った3曲のうちの1曲(他の2曲は消失)と考えられているそう(大宮真琴さんの新版ハイドンから)。録音の冴えは一段あがり、高音域はクッキリを通り越して超鮮明。前曲が華やかな印象だったのは曲のせいもありますが、短調のこの曲では、三次元デジタル的に鮮明な峻厳な響きに印象が一変します。この曲は2楽章がメヌエットで3楽章がアダージョ。どちらの楽章も実に良く練られた演奏。鮮度、リズム感、ゆったりと沈み込むアダージョのフレージングと申し分なし。特に超鮮明な録音でリアルながら、実に良く歌うアダージョが秀逸。音量のコントロールが非常に丁寧で、アダージョがクリスタルのように輝きます。そして美しく輝きながらも鬼気迫るフィナーレ。フーガ風に繰り返すメロディーがクリアな響きで畳み掛けます。この曲は、超鮮明な録音とクッキリした響きが曲のイメージに合っていて、いい出来。

Hob.III:83 / String Quartet Op.103 [d] (before 1803)
そしてハイドン最後の曲。前記事のリンゼイ四重奏団の演奏でも取りあげたばかり。やはりこの曲では穏やかな演奏に変わります。鮮明な音響によって、この穏やかな曲に不思議と絢爛豪華な印象も加わります。リンゼイ四重奏団の演奏では弦楽器の響きの中に力みというか力の入れ具合の変化の面白さが感じられたのに対し、こちらのイギリス弦楽四重奏団の演奏では全楽器の響きがクッキリと重なり、鮮明な隈取りで実に豪華な響きが耳に残り、聴かせどころが全く変わります。鮮明な音響にもかかわらず、音楽には澄みきった静けさのようなものが宿ります。つづくメヌエットも同様。峻厳な響きで一気に聴かせきってしまいます。アンサンブルの精度は抜群、デュナーミクのコントロールもきっちりして、演奏は第一級です。

ちょっと録音に癖があるので、最初は独特な印象をもったのですが、何回か聴いているうちに彼らの音楽のポイントがわかってきました。よく聴くとアンサンブルは鮮明、音楽も実に良く練られた演奏です。ハイドンの弦楽四重奏曲のうち、単独で残っている曲を時代ごとにならべるというアルバムの企画意図も冴えていてなかなか興味深いアルバムです。まだ手に入るようですので、弦楽四重奏曲好きな方にはオススメのアルバムですね。評価はOp.1のNo.0が[++++]、他は[+++++]とします。

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2 Comments

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だまてら

No title

ごぶさたしています。
作品42と作品103は「録音の空白地帯」になりがちなので、このようなカップリングは
ありがたいですね。(おっと、リンゼイSQ盤もそうでした・・・)
当方、弦楽四重奏曲でご披露できる新ネタはごく少ないですが、オーディオファイルの
間で少し評判のノルウェー「2L」レーベルからの作品76-5「ラルゴ」を気に入ってい
ます。(カップリングはグリークと地元?のソルバーグ、orソールベリ?)
SACD/CDハイブリッドで録音も見事です。

  • 2013/07/30 (Tue) 06:42
  • REPLY

Daisy

Re: No title

だまてらさん、コメントありがとうございます。
Op.103はともかくOp.42はなかなか取り出して聴く機会がありませんね。タイトな良い曲なのですが、録音の数も他の曲に比べて少ないですね。
2Lレーベルは全く知りませんでした。機会があったら聴いてみたいですね。
オーディオ関係は最近ネット流行りで、ついていけてません(苦笑)最近思い出したようにスピーカーケーブルをアンプに直付けしていたものを、オヤイデのYラグをつけてみたら、クリアさが激アップでビックリしています。しばらく耳が慣れるのに時間がかかりました。ほどよい感じを保つのにもバランス感覚が必要ですね。

  • 2013/07/30 (Tue) 22:51
  • REPLY