作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ウィーン弦楽四重奏団の「皇帝」旧盤(ハイドン)

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今日は弦楽四重奏曲の隠れた名演奏。アルバムは以前取りあげたパイヤールの交響曲のアルバムなんですが、その隙間に収められた名演奏です。

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ウィーン弦楽四重奏団(Vienna String Quartet)の演奏による、ハイドンの弦楽四重奏曲「皇帝」。収録は1974年のセッション録音。収録場所などの表記はありません。レーベルはRCA CLASSICS。

以前取りあげたパイヤールの交響曲の記事はこちら。このアルバムの最後にフィル・アップされているのが今日取り上げる演奏です。

2013/05/26 : ハイドン–交響曲 : 【追悼】ジャン=フランソワ・パイヤール/イギリス室内管の驚愕、軍隊

ウィーン弦楽四重奏団の演奏はこれまで2度ほど取りあげています。

2013/02/22 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : 【新着】ウィーン弦楽四重奏団の「皇帝」
2011/11/13 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : ウィーン弦楽四重奏団の五度、ひばり、セレナーデ

今日取り上げるアルバムと同じ「皇帝」を取りあげた演奏は、2010年の草津でのライヴですが、五度とひばり、セレナードの方は1978年と古いもの。この五度とひばりの方のアルバムは記事をご覧いただいたとおり、ウィーン風のハイドンの決定版的な素晴しい演奏。この演奏の記憶が鮮明に残っているため、先日パイヤールのハイドンを取りあげた時にも気になっていました。今日は思い出したようにこのアルバムを取り出し、CDプレイヤーにかけたところ、またもえも言われぬ美しい響きが流れてくるではありませんか。ということでたまらず取りあげた次第。

このクァルテットの成り立ちについては、五度、ひばり、セレナードの方の記事をご覧ください。また、camerataレーベルに詳しい情報が載っていますので、そちらへのリンクも紹介しておきましょう。

ウィーン弦楽四重奏団 - CAMERATA TOKYO

この録音当時のメンバーは、1964年に設立された当時のメンバーのままです。

第1ヴァイオリン:ウェルナー・ヒンク(Werner Hink)
第2ヴァイオリン:ヘルムート・プッフラー(Helmuth Puffler)
ヴィオラ:クラウス・パイシュタイナー(Klaus Peisteiner)
チェロ:ラインハルト・レップ(Reinhard Repp)

Hob.III:77 / String Quartet Op.76 No.3 "Kaiserquartetett" 「皇帝」 [C] (1797)
少し残響過多の録音。時代なりというか1974年としては今一歩鮮明さが欲しいのが正直なところ。ただ、演奏のほうはウェルナー・ヒンクとウィーンフィルのメンバーによる、美音の響宴。速めのテンポですべての楽器が輝きに満ち、アンサンブルの精度は完璧。ウィーンフィルのイメージ通りの柔らかな弦の響きで描かれるハイドンの傑作弦楽四重奏曲。4人が完全に対等というか、4人のタイトなせめぎ合いが素晴しい迫力と緊張感を醸し出しています。1楽章は疾風のよう。途中まくしたてるような掛け合いもあり、セッション録音とは思えない素晴らしいライヴ感。迫真の演奏を眼前にしたコンサート会場にいるよう。
有名なドイツ国歌のメロディーの第2楽章は、まさにウィーン風の高貴な印象を保ちながら、4人の弦がとろけるような極上のアンサンブル。変奏に入ると一人一人にハイドンが乗り移ったかのような生気。全員が極上の楽器の最も美しい音色を駆使して本当に溶けてしまいそうなほどの究極の美音。奇跡のような演奏。特にチェロのラインハルト・レップの美音が轟く瞬間は息を呑む美しさ。
聴き慣れたメヌエットですが、千変万化する美音で、この楽章も活き活きと豊かな音楽が流れます。実に自然な音楽の流れ。無理なアクセントもテンポもなく、ただメロディーを音に置き換えていくのですが、極上のアンサンブルで聴かされると、デモーニッシュな陰りさえ聴こえてきて、ハイドンのメヌエットからまるでモーツァルトの狂気のような気配さえ漂わせます。
フィナーレは1楽章のタイトなアンサンブルが再び戻ってきます。耳をつんざくような美音の強奏が畳み掛けてくるように襲いかかります。ヒンクのヴァイオリンの美音が録音会場に響き渡り、他の3人も渾然一体になった響きの塊となってグイグイ進みます。最後は心に刺さる鋭い音色でのフィニッシュ。まさに圧倒的な演奏。

この曲でこれ以上の演奏を望むのは難しいでしょう。まさに「皇帝」の決定盤的演奏。レビューでちょっと触れたように録音が少々鮮明さに欠けるところはありますが、その演奏は4人のアンサンブルが渾然一体となり、ハイドンの名曲の活き活きとした姿を究極の美音で奏でるもの。弦楽器の胴鳴りの美しさは格別。そして全盛期のウェルナー・ヒンクの素晴しい弓さばきも異次元のものでした。評価はもちろん[+++++]です。ウィーンフィルメンバーの底力を見せつけられました。

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