ガブリエリ弦楽四重奏団のひばり他(ハイドン)
今日は弦楽四重奏曲。燻し銀の一枚。

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ガブリエリ弦楽四重奏団(Gabrieli String Quartet)の演奏で、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.64のNo.5「ひばり」、Op.54のNo.2の2曲の演奏を収めたアルバム。収録は1986年2月13日から15日にかけて、イギリス、ロンドンの北東にあるスネイプという街のモルティングというコンサートホール。オールドバラ音楽祭のメイン会場として知られたホールとのこと。レーベルは英CHANDOS。
ガブリエリ弦楽四重奏団は1966年に創設された弦楽四重奏団。特にイギリスでは良く知られた存在のようです。オールドバラ音楽祭、チェルトナム音楽祭、シティ・オブ・ロンドン音楽祭などの常連であり、またバービカン・センターで行われるモストリー・モーツァルト音楽祭にも毎年出演しているそう。ラジオやテレビにも頻繁に出演しています。1971年以降イングランド南東部のコルチェスターにあるエセックス大学に所属するクァルテットとなっています。録音も多く、このアルバムが録音された1986年以降CHANDOSと契約し、ブラームス、エルガー、ウォルトンなどの曲を録音したそうです。
このアルバムの演奏当時のメンバーは次のとおり。
第1ヴァイオリン:ケネス・シリトー(Kenneth Silito)
第2ヴァイオリン:ブレンダン・オライリー(Brendan O'Reilly)
ヴィオラ:イアン・ジュェル(Ian Jewel)
チェロ:キース・ハーヴェイ(Keith Harbey)
このあと、ヴァイオリンの2人は他の人に替わっています。
Hob.III:63 / String Quartet Op.64 No.5 "Lerchenquartetett" 「ひばり」 [D] (1790)
実に間の上手くとれた入り。この曲独特の雰囲気を良くつかんで、軽々とした、しかも趣き深いリズム。いきなりぐっと心をつかまれたよう。ヴァイオリンの伸びやかさは流石名門。チェロの存在感も素晴しく、ハイドンの曲の面白さがクッキリ浮かび上がります。録音はCHANDOSだけに手慣れたもの。少し古びた印象がなくはありませんが、弦楽器独特のテンションの高さを上手く録っていて、かなり迫力ある音。オンマイク気味ながら弦の響きは失われていません。おそらく何度も演奏している名曲でしょう、聴かせどころは完全に掌握して、余裕たっぷりの演奏。
つづくアダージョ・カンタービレは、クァルテットらしい弦楽器同士の精妙な音の重なりを通して陰のある表情をじつに上手く表現していきます。手慣れているとはいっても、聴かせどころをきちんと落としてくるあたりは流石。ふっと明るさが射すところの絶妙な変化、ちょっとした間の効果的な配置、ふと力を抜くところなど、クァルテットを聴く悦びに溢れる楽章。
楽章間の変化も見事。メヌエットは刺さるようにクッキリと入り、前楽章の余韻を断ち切るよう。噛み締めるようにじっくりと溜めたリズムによって曲の構造を透視するよう。
フィナーレはあえて、ゆっくりと。速いパッセージをスローモーションで見せるような面白い効果。フレーズを次々と受け渡していく面白さがよくわかります。いやいや見事な演奏。
Hob.III:57 / String Quartet Op.54 No.2 [C] (1788)
つづいて第一トスト四重奏曲集から。エステルハージ侯爵家の楽団にいたヨハン・トストというヴァイオリン奏者が、侯爵家を去ってパリに行くにあたり、楽長のハイドンにパリで演奏する弦楽四重奏曲と交響曲の作曲を依頼し、作曲された曲。弦楽四重奏曲はOp.54と55の6曲。ちなみに交響曲は88番、89番の2曲。
パリで演奏するこためかどうか、曲想もすこし変わっていて、アダージョのメランコリックな旋律が印象的な曲。前曲の老練なテクニックと安定した演奏を聴いているので、安心して身を任せることができます。1楽章はこちらも曲のツボを押さえて、弦楽四重奏曲の演奏の伝統の重さを感じさせるもの。クッキリとした表情で、次々とハイドンの旋律を描いていきながら、アンサンブルの精妙さを印象づける見事なもの。4人の音楽の方向性が完全に一致していて揺るぎない安定感。プロの技を見せつけます。
アダージョは霞のなかの景色を見るようなぼんやりとした表情が独特。ガブリエリ弦楽四重奏団は曲にあわせて、霞のような音楽をつくっていきます。この辺の表現の幅の広さはは伊達ではありません。意外と演奏が難しい楽章なんではないでしょうか。
霞が晴れて、緑がクッキリ浮かび上がってくるところを描いたようなメヌエットの入り。いつもながらハイドンの創意に感服ですが、それを非常にうまく音楽にするガブリエリも流石。軽さの表現が秀逸。盤石の解釈。
アダージョから入る珍しいフィナーレ。ゆったりした演奏ですが、耳を澄ますと各楽器の非常にデリケートなボウイングによるメロディーの交換が素晴しい音楽をつくっていきます。静かなクライマックス。大海原を波に揺られて進むような実に豊かな音楽。終盤のプレストはカッチリ決めて、再びアダージョに戻り、静かに曲を閉じます。
最初は手堅い演奏かと思いきや、聴き進めるにつれて音楽の豊かさとプロの技の素晴しさが印象的な演奏だとわかりました。ハイドンの弦楽四重奏曲のツボを押さえて、実に趣き深い演奏。説得力のある解釈に感服しました。イギリスの実力派クァルテットの底力を見た気がします。評価は両曲とも[+++++]とします。

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ガブリエリ弦楽四重奏団(Gabrieli String Quartet)の演奏で、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.64のNo.5「ひばり」、Op.54のNo.2の2曲の演奏を収めたアルバム。収録は1986年2月13日から15日にかけて、イギリス、ロンドンの北東にあるスネイプという街のモルティングというコンサートホール。オールドバラ音楽祭のメイン会場として知られたホールとのこと。レーベルは英CHANDOS。
ガブリエリ弦楽四重奏団は1966年に創設された弦楽四重奏団。特にイギリスでは良く知られた存在のようです。オールドバラ音楽祭、チェルトナム音楽祭、シティ・オブ・ロンドン音楽祭などの常連であり、またバービカン・センターで行われるモストリー・モーツァルト音楽祭にも毎年出演しているそう。ラジオやテレビにも頻繁に出演しています。1971年以降イングランド南東部のコルチェスターにあるエセックス大学に所属するクァルテットとなっています。録音も多く、このアルバムが録音された1986年以降CHANDOSと契約し、ブラームス、エルガー、ウォルトンなどの曲を録音したそうです。
このアルバムの演奏当時のメンバーは次のとおり。
第1ヴァイオリン:ケネス・シリトー(Kenneth Silito)
第2ヴァイオリン:ブレンダン・オライリー(Brendan O'Reilly)
ヴィオラ:イアン・ジュェル(Ian Jewel)
チェロ:キース・ハーヴェイ(Keith Harbey)
このあと、ヴァイオリンの2人は他の人に替わっています。
Hob.III:63 / String Quartet Op.64 No.5 "Lerchenquartetett" 「ひばり」 [D] (1790)
実に間の上手くとれた入り。この曲独特の雰囲気を良くつかんで、軽々とした、しかも趣き深いリズム。いきなりぐっと心をつかまれたよう。ヴァイオリンの伸びやかさは流石名門。チェロの存在感も素晴しく、ハイドンの曲の面白さがクッキリ浮かび上がります。録音はCHANDOSだけに手慣れたもの。少し古びた印象がなくはありませんが、弦楽器独特のテンションの高さを上手く録っていて、かなり迫力ある音。オンマイク気味ながら弦の響きは失われていません。おそらく何度も演奏している名曲でしょう、聴かせどころは完全に掌握して、余裕たっぷりの演奏。
つづくアダージョ・カンタービレは、クァルテットらしい弦楽器同士の精妙な音の重なりを通して陰のある表情をじつに上手く表現していきます。手慣れているとはいっても、聴かせどころをきちんと落としてくるあたりは流石。ふっと明るさが射すところの絶妙な変化、ちょっとした間の効果的な配置、ふと力を抜くところなど、クァルテットを聴く悦びに溢れる楽章。
楽章間の変化も見事。メヌエットは刺さるようにクッキリと入り、前楽章の余韻を断ち切るよう。噛み締めるようにじっくりと溜めたリズムによって曲の構造を透視するよう。
フィナーレはあえて、ゆっくりと。速いパッセージをスローモーションで見せるような面白い効果。フレーズを次々と受け渡していく面白さがよくわかります。いやいや見事な演奏。
Hob.III:57 / String Quartet Op.54 No.2 [C] (1788)
つづいて第一トスト四重奏曲集から。エステルハージ侯爵家の楽団にいたヨハン・トストというヴァイオリン奏者が、侯爵家を去ってパリに行くにあたり、楽長のハイドンにパリで演奏する弦楽四重奏曲と交響曲の作曲を依頼し、作曲された曲。弦楽四重奏曲はOp.54と55の6曲。ちなみに交響曲は88番、89番の2曲。
パリで演奏するこためかどうか、曲想もすこし変わっていて、アダージョのメランコリックな旋律が印象的な曲。前曲の老練なテクニックと安定した演奏を聴いているので、安心して身を任せることができます。1楽章はこちらも曲のツボを押さえて、弦楽四重奏曲の演奏の伝統の重さを感じさせるもの。クッキリとした表情で、次々とハイドンの旋律を描いていきながら、アンサンブルの精妙さを印象づける見事なもの。4人の音楽の方向性が完全に一致していて揺るぎない安定感。プロの技を見せつけます。
アダージョは霞のなかの景色を見るようなぼんやりとした表情が独特。ガブリエリ弦楽四重奏団は曲にあわせて、霞のような音楽をつくっていきます。この辺の表現の幅の広さはは伊達ではありません。意外と演奏が難しい楽章なんではないでしょうか。
霞が晴れて、緑がクッキリ浮かび上がってくるところを描いたようなメヌエットの入り。いつもながらハイドンの創意に感服ですが、それを非常にうまく音楽にするガブリエリも流石。軽さの表現が秀逸。盤石の解釈。
アダージョから入る珍しいフィナーレ。ゆったりした演奏ですが、耳を澄ますと各楽器の非常にデリケートなボウイングによるメロディーの交換が素晴しい音楽をつくっていきます。静かなクライマックス。大海原を波に揺られて進むような実に豊かな音楽。終盤のプレストはカッチリ決めて、再びアダージョに戻り、静かに曲を閉じます。
最初は手堅い演奏かと思いきや、聴き進めるにつれて音楽の豊かさとプロの技の素晴しさが印象的な演奏だとわかりました。ハイドンの弦楽四重奏曲のツボを押さえて、実に趣き深い演奏。説得力のある解釈に感服しました。イギリスの実力派クァルテットの底力を見た気がします。評価は両曲とも[+++++]とします。
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