作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

イムレ・ローマン/ザルツブルク・モーツァルト・アンサンブルのピアノ協奏曲など(ハイドン)

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今日は珍しいアルバム。

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ザルツブルク・モーツァルト・アンサンブル(Salzburg Mozart Ensemble)の演奏で、モーツァルトのディヴェルティメント(K.251)、ハイドンのピアノ協奏曲(XVIII:11)、同じくザルツブルク・モーツァルト・アンサンブルの演奏で、弦楽四重奏曲Op.1のNo.1の3曲を収めたアルバム。ハイドンのピアノ協奏曲でピアノを担当するのはイムレ・ローマン(Imre Rohmann)。収録は2003年11月22日から23日にかけて、オーストリア、ザルツブルクの東にあるモンゼー(Mondsee)という街にある柱状ホール(säulensaal)でのセッション録音。レーベルは墺PREISER RECORDS。

ザルツブルク・モーツァルト・アンサンブルは、モーツァルテウム管弦楽団とモーツァルテウム大学の教師からなるアンサンブル。ライナーノーツによれば、レパートリーはモーツァルトとウィーン古典派ということで、まさにこのアルバムに収められた曲などが中心。このアルバムでもピアノのソロを務めているイムレ・ローマンとはたびたび共演しているそうです。

イムレ・ローマンは1953年、ブダペスト生まれのハンガリーのピアニスト。ブダペストのフランツ・リスト・アカデミーで学び、その後、ヨルグ・デムスに師事。ブダペスト放送コンクール、リスト=バルトーク・コンクール、アメリカのブルーミントン・コンクールなどに入賞して頭角を現しました。1990年よりモーツァルテウムでピアノを教えています。

このアルバム、何が珍しいかというと、ハイドンのピアノ協奏曲の伴奏が各パート一人という最小限のアンサンブルというところ。OVPP(One Voice Per Part)というのでしょうか。普段聴く厚みのあるアンサンブルとは異なり、非常に透明感あるタイトなアンサンブルが特徴です。しかもモーツァルテウムの腕利き奏者揃いということで、アンサンブルの精度も抜群。普段とは違う構成で聴く事で、ピアノ協奏曲の名曲がどう姿を変えるのでしょうか。

Hob.XVIII:11 / Concerto per il clavicembalo(l'fortepiano) [D] (1784)
序奏からクリア。当たり前ですが響きは削ぎ落され、室内楽のような響き。録音は基本的にデッドでクリアなもの。アンサンブルの人数が少ない上に残響も押さえ気味で、特に弦楽器がかなり鋭い音色を聴かせます。ピアノは残響が少ない訳ではありません。ソロのはじまる前の序奏からピアノがかなり装飾音をともなって出てくるタイプの演奏。頭の中にオーケストラによる演奏が刷り込まれているので、最初はちょっと違和感が強いですが、聴きすすめていくうちにタイトな音響の魅力に慣れてきます。イムレ・ローマンのピアノはオケに合わせてか、ピアノを響かせるというよりは響きの芯で聴かせるような、手堅い響き。音階のキレは良く、速いパッセージは音がころがるような滑らかさ。ピアノ協奏曲よりもピアノトリオに近い緊密な響き。序奏と同様全曲にわたってピアノは伴奏にも加わります。鮮度の高い録音によって曲の構造がクッキリ浮かび上がり、レントゲン写真のような趣も。ピアノもオケもインテンポでたたみ掛け、緊密なアンサンブルを楽しめます。カデンツァはかなり変わったもので、畳み掛けるように攻め込んだと思うと、一転、かなり抑えてピアノの表現の枠を使い切るようなイメージ。
オケでの演奏では癒しを感じることが多いアダージョは、やはり響きを削ぎ落した伴奏で印象が変わり、ピアノソロの明晰なメロディーにヴァイオリンが装飾音を加えるような趣。1楽章よりも曲の良さをうまく表現できているように感じます。やはりピアノの存在感がポイントでしょう。現代音楽のような峻厳な雰囲気を感じさせるところもあり、この曲の新たな魅力を見いだしています。
演奏が乗ってきているのか、こちらの耳が慣れてきているのかわかりませんが、フィナーレに至り、アンサンブルの緊密さはかなりのレベルに至り、スリリングなこの曲の魅力が際立ちます。アルゲリッチとクレーメルのアンサンブルを彷彿とさせる掛け合い。これはなかなかの演奏です。

Hob.III:1 / String Quartet Op.1 No.1 [B flat] (c.1757-59?)
アルバムの最後は、弦楽四重奏曲Op.1のNo.1。もちろん弦楽器4人での演奏です。非常にシンプルな曲想の曲。演奏はシンプルな曲を、演奏者自体が楽しんでいるような演奏。専門の弦楽四重奏団の演奏とはちょっと異なり、精妙な弦の重なりに表現の主体があるのではなく、あくまでもアンサンブルとして響きの細部よりは曲の構造に素直に演奏しているのが違いでしょうか。この曲は弦楽合奏によるエミール・クラインの名演奏が記憶に残っていますが、クラインほど楽天的ではなく、キリリと引き締まった響きを保って、なかなか良いバランスです。

ハイドンのピアノ協奏曲をOVPPで演奏した珍しいアルバム。オケの響きが研ぎすまされ、普段聴くこの曲とはかなり異なる印象を与えます。ピアノのイムレ・ローマンのかなりストイックなピアノと、ザルツブルク・モーツァルト・アンサンブルの腕利き奏者のタイトなアンサンブルの魅力が聴き所でしょう。弦楽四重奏曲の方は、弦楽四重奏曲というよりはディヴェルティメントらしい演奏。どちらも室内楽好きの方にはなかなか刺激的な演奏であることは間違いありません。評価は両曲とも[++++]とします。

このアルバムの聴き所はやはり1曲目に置かれたモーツァルトのディヴェルティメント。やはりモーツァルテウムだけあって、モーツァルトはお手の物ということでしょう。説得力がハイドンとは一段違います。

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