【新着】ヨエル・レヴィ/イスラエルフィルの「迂闊者」、「ロンドン」ライヴ

HMV ONLINEから届いたばかりのアルバム。けっこう前に注文していたのですが、他のものの未入荷に引きずられて到着がおそくなってました。

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ヨエル・レヴィ(Yoel Levi)指揮のイスラエル・フィルハーモニー管弦楽団(The Israel Philharmonic Orchestra)の演奏で、ハイドンの交響曲60番「迂闊者」、ピアノ協奏曲(Hob.XVIII:11)、交響曲104番「ロンドン」の3曲を収めたアルバム。収録は2012年4月30日、イスラエル、テルアヴィブ大学のスモラーツ・オーディトリウムでのライヴ。レーベルはイスラエルフィルのライヴをリリースしつづけているhelicon。

ヨエル・レヴィは初めて聴く人。1950年ルーマニア生まれですが、生後すぐにイスラエルに移住、エルサレム音楽大学で学ぶなどイスラエルは地元と言っていい人。1978年、ブサンソン国際コンクールで優勝し頭角を現しました。クリーヴランド管弦楽団の副指揮者を経て、1988年アトランタ交響楽団の音楽監督および首席指揮者となり、1996年のアトランタオリンピックの開会式、閉会式において指揮を担当したということです。2001年よりイスラエル・フィルの首席客演指揮者となっています。息子はヘヴィ・メタルのイアル・レヴィ(笑) その影響か、1996年には、イングヴェイ・マルムスティーンの「エレクトリック・ギターとオーケストラのための協奏組曲『新世紀』」のオーケストラ・パートの録音でチェコ・フィル指揮して参加しています。

このアルバムは最新の2012年の録音で、オールハイドンプログラムのライヴ。2曲目のピアノ協奏曲のソロはマヤ・タミル(Maya Tamir)という当時12歳のイスラエル人天才ピアニスト。ピアノ協奏曲はお楽しみですね。

Hob.I:60 / Symphony No.60 "Il disrratto" 「迂闊者」 [C] (before 1774)
デッドな響き。最新の録音ですが、解像度は十分ながらちと潤い不足に聴こえるのはかなりデッドな演奏会場だからでしょうか。ヨエル・レヴィのコントロールは、ゆったりと丁寧にデュナーミクをつけ、間を上手くとって、この交響曲の力感とリズムの面白さを強調した演奏。主題に入ってからの推進力は十分。ハイドンの演奏のツボはしっかり押さえてます。良く聴くと弱音のコントロールがなかなか良く、勢いだけでなく立体的な構築感が良く表現できています。これはなかなかいい演奏。
アンダンテもハイドン独特のユーモラスな表情の演出が上手く、実に聴き応えがあります。ヴァイオリンをはじめとした弦楽器群が実に表情豊か。デッドな録音なのでクッキリとメリハリをつけたボウイングが鮮明にわかります。
メヌエットも同様、弦楽器の精緻なコントロールでハイドンの機知に富んだ旋律が素晴しい立体感を見せます。後半のトルコ趣味のような旋律もちょっと押さえ気味にして面白さを浮かび上がらせるあたり、なかなのセンス。
そして普通の曲だったらフィナーレになるプレスト。やはりアクセントの付け方が上手く、活力、推進力は見事なもので、勢い良くフィニッシュといくところが、これで終わりではないのがこの曲の面白いところ。
つづいてアダージョがはじまり、しかも非常に癒しに満ちたフレーズで、突然うっとりさせられます。ファンファーレのような堂々とした印象の中間部を挟んで、再びゆったりとしたメロディーが戻ります。この展開、何度聴いてもゾクゾクしますね。
そして、有名な調弦する場面をふくむ、活気に満ちた本当のフィナーレ。ヨエル・レヴィこの曲を得意としているのでしょう、ハイドン曲の面白さの真髄をつく素晴しいコントロールでした。ライヴですが拍手はありません。

Hob.XVIII:11 / Concerto per il clavicembalo(l'fortepiano) [D] (1784)
これは聴いてビックリ。2000年生まれの演奏当時12歳のマヤ・タミル、この人、文字通り天才です。軽やかに転がるピアノに濃厚な音楽が宿り、若い人が弾いているとは思えない、枯れたような芸術性も聴かせる人。あまりの素晴しさに腰を抜かさんばかり。
冒頭のそよ風のようなオケの序奏はやはりヨエル・レヴィらしくクッキリと表情がついて、非常に音楽的。この人の音楽、ハイドンに実に合っています。単なる序奏が抜群の立体感で実に趣き深いものになります。弦楽器の豊かな表情が抜群。マヤ・タミルのピアノは12歳と言う事でタッチの力強さはほどほどながら、力が抜けて、音楽のエッセンスはきちんと押さえているような弾きぶりは成熟を感じるところ。早いパッセージのクリアな表情は水晶の輝きのような独特のセンスに溢れ、軽やかさが印象に残ります。クッキリとした伴奏に華麗なピアノ。ハイドンが書いた楽譜から、まるでサンテミリオンのワインの軽やかで香り高い音楽が立ちのぼります。もう少し重く深刻な演奏が多い中、これだけ華麗なピアノは滅多に聴くことができません。流石なのはカデンツァ。一音一音は軽やかなのにマスで迫ってくるまとまりがあり、一気に聴かせきります。
2楽章の伴奏もレヴィの丁寧な彫り込みの深い伴奏によって緊張感が持続します。タミルのピアノはやはりクリスタルの輝きをそのままに、詩情も乗せて言うことなし。純粋にピアノだけ聴いていると老ピアニストが若い頃を思い出しながら弾いているような風情もあります。
フィナーレはタミルが完全に主導権を握ります。インテンポでいくところとちょっと遅らせるところの絶妙な使い分けは12歳とは思えない器を感じます。レヴィもオケをキレよく煽って集中力を高めます。最後までタミルは一貫した演奏。技術も精神も安定した素晴しい演奏。オケも万全のサポートで期待に応えます。

Hob.I:104 / Symphony No.104 "London" 「ロンドン」 [D] (1795)
最後は大曲ロンドン。これまでの曲でヨエル・レヴィの巧みな演出力は把握済み。いよいよロンドンということで緊張も高まります。これまで小曲での盛り上げ主体でしたが、レヴィのコントロールはこうした大曲でも威力を発揮します。ことさらロンドンということではなく、普段通りの演奏なんでしょうが、これまでの曲で聴かれたヨエル・レヴィの丁寧なフレージングで、ロンドンの序奏もクッキリ浮かび上がります。もう少し大曲然としているかと思ってましたが、むしろスケール感は小曲のまま、精度が高いオケは純度が上がって、本当に小曲のよう。
つづくアンダンテも前楽章同様ですが、今まで間を上手く取っていたのでフレージングが冴えていたのが、その部分が普通になって、立体感もほどほど。展開部ではかなりテンポを上げて迫力を重視しますが、かえってちょっと慌てているように映って、音楽のデリケートさを感じさせてしまいます。アンダンテも中盤以降になると落ち着きを取り戻しますが、不思議と音楽の腰高な印象はぬぐい去れません。
メヌエットは小気味好い感じで、タイトな音楽の魅力を維持します。おそらくロンドンには数多の名演があり、ヨエル・レヴィの室内楽的ともいえる演奏のみではこれまでの雄大な演奏の魅力には敵わないと言う印象を与えてしまっているという事なのかと思います。
フィナーレに至り、レヴィのコントロールするオーケストラは集中力が上がります。レヴィ流の間とクッキリとしたメリハリが戻り、ハイドンの大曲のフィナーレにふさわしい盛り上がりを聴かせます。終盤はライヴらしい嵐のような盛り上がり。ようやくティンパニが炸裂し素晴しい高揚感。フィニッシュはロンドンに相応しい盛り上がりでした。

このアルバム、よくも悪くもデッドな録音とライヴと思わせない拍手のカットがポイントでしょう。前半の2曲はその音響での緻密なコントロールが功を奏した演奏。そしてロンドンは数多の名演奏とくらべると、実質は盛り上がっているのに、録音からちょっと覚めて聴こえてしまう印象を残しました。レヴィのコントロールは実にハイドンの音楽にぴったりで、良いホールでの条件の良い録音を今後期待したいところです。評価は前2曲が[+++++]、ロンドンは[++++]としました。

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tag : 迂闊者 ピアノ協奏曲XVIII:11 ロンドン ライヴ録音

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ハイドン(Franz Joseph Haydn)の膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。私はなぜハイドンにはまったのか?

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