ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管の時計旧盤

ユージン・オーマンディ(Eugene Ormandy)の指揮するフィラデルフィア管弦楽団の演奏で、ハイドンの交響曲101番「時計」とジョージ・セル指揮のクリーヴランド管弦楽団の演奏で、交響曲92番「オックスフォード」の2曲を収めたLP。今日はオーマンディの方の演奏を取りあげます。収録は1949年5月10日としか記載がありません。レーベルは英COLUMBIA。
オーマンディのハイドンは以前に2回取りあげました。
2012/05/24 : ハイドン–協奏曲 : ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管のトランペット協奏曲、協奏交響曲
2011/03/28 : ハイドン–交響曲 : オーマンディ/フィラデルフィア管の88番1958年モスクワライヴ
オーマンディの略歴などはモスクワライヴの方の記事をご参照ください。
ネットの情報などによると、オーマンディはハイドンの録音は多くなく、この時計については、今日取り上げる1949年のモノラル盤と1961年のステレオ盤の2種の録音があるようです。今日取り上げるLPはディスクユニオンでたまたま見かけた英COLUMBIA盤。かなり年季の入ったLPですが、針を落とすと、豊かな音楽が溢れ出てくるではありませんか。この癒しに満ちた響きも悪くありません。
Hob.I:101 / Symphony No.101 "Clock" 「時計」 [D] (1793/4)
厳かにはじまる序奏。ゆったりというよりは緊張感あるかなり遅めのテンポでじっくり入ります。主題に入るとテンポを上げますが、アクセントは抑え気味で、なだらかに面取りをした流線型のオケが、迫力よりも推進力優先でやわらかく畳み掛けていきます。意外にも強音は音を短く切って、さっぱりとしたアクセント。これがオーマンディ流の美学でしょうか。ヴァイオリンパートの純度の高いアンサンブルによる音階の繰り返しが聴き所。1楽章の最後はずばっと踏み込んでようやくキリリと締まります。
有名な時計のリズムのアンダンテは実におおらかな音楽。香しい芳香を放つオーケストラ。リズムはすこし溜めを効かせて、生成りの布のような素朴な表情も見せます。音量を変え、表情を変えつつ変奏が進みますが、実に趣き深いアンダンテ。
メヌエットに入ると力強さが戻りますが、弦楽器の磨かれた表情は変わらず、うっすらと色気のようなものが漂うのも前楽章までと同様。フレージングに溜めがなくささっと煽るので、曲が軽快に聴こえ、それが全体を華やかな印象に保つのに寄与しているよう。美しい響きと適度な力感のバランス。じつに玄人好みの演奏。LPならではの華やかな響きでしょう。
フィナーレは一気にスピードを上げて、所々アクセントをつけながらも軽やかな仕上がり。程よい迫力を感じさせる部分と、抑えた音量でスビーディに進む部分を上手く織り交ぜながら曲をすすめ、最後は吹き抜けるように終わります。
ユージン・オーマンディと手兵フィラデルフィア管弦楽団による時計の1949年の演奏は、やはりオケの音色の美しさと、適度な力感、適度な盛り上がりをおりまぜたバランスの良い演奏でした。LPならではの実体感あるクリアな響きを楽しめる、なかなかいい録音でした。評価は[++++]とします。


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