モーリス・ジャンドロンのチェロ協奏曲1番、2番

今日は湖国JHさんにお借りしているアルバムと先日手にいれたLPを取りあげます。

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モーリス・ジャンドロン(Maurice Gendron)のチェロ、レイモン・レッパード(Raymond Lepperd)指揮のロンドン交響楽団の演奏で、ハイドンのチェロ協奏曲1番、ボッケリーニのチェロ協奏曲を収めたアルバム。収録は1965年7月、ロンドンとしか表記がありませんが、セッション録音でしょう。

もう一枚。

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モーリス・ジャンドロン(Maurice Gendron)のチェロ、パブロ・カザルス(Pabro Casals)指揮のコンセール・ラムルー管弦楽団の演奏で、ハイドンのチェロ協奏曲2番とボッケリーニのチェロ協奏曲を収めたLP。収録は1960年10月5日から7日、パリの共済組合ホールでのセッション録音。こちらは日本ビクターによるPHILIPSレーベルの国内盤LPです。

モーリス・ジャンドロンは、1920年、フランスのニース生まれのチェロ奏者、指揮者。ニース音楽院でジャン・マンジオ、パリ音楽院でフルニエの師であるジェラール・エッカンに学び、カザルス門下に入ります。その後、デゾルミエール、シェルヘン、メンゲルベルクらから指揮を教わっています。 1947年にプロコフィエフのチェロ協奏曲のヨーロッパ初演を行い、広く知られる存在となりました。演奏家としての仕事の他、教育者としても知られ、1954年からザールブリュッケン音楽大学のチェロ科教授、1970年からはパリ音楽院のチェロ科主任教授となり、後進の育成にも力を注ぎました。
日本との関係では、1960年にチェロ奏者として来日、また、1972年に指揮者として来日して東京都交響楽団を指揮。その後も1980年代には草津夏季国際音楽アカデミー&フェスティヴァルの講師としてたびたび来日し、チェロや室内楽、オーケストラの指揮や指導に携わっていたとのことで、私は知りませんでしたが、日本との関係が深い人でした。1990年8月に亡くなっています。

気になるのはカザルスにチェロを学び、また、カザルス自身が指揮をとったオケでハイドンのチェロ協奏曲を弾いていること。偉大なチェロ奏者カザルスの指揮で、それもチェロ協奏曲の最高峰であるハイドンのチェロ協奏曲を弾くということだけでも、かなり気になります。カザルスが指揮をしたなかでも、チェロ協奏曲の録音はそれまでなく、チェロの門下生を多くもっていたカザルスが、ハイドンのチェロ協奏曲のソリストに指定したということが当時のジャンドロンの立場を物語っているでしょう。カザルスとの演奏は当時話題となったとのことです。

まずは、レッパードとの1番のCDから。

Hob.VIIb:1 / Cello Concerto No.1 [C] (1765-7)
かなり表情の濃いレッパードの伴奏。テンポは標準的ですが、フレーズひとつひとつにはっきりと表情をつけて厚化粧のハイドン。ジャンドロンのソロは、オケの表情の濃さ故か、かなり抑えた大人しいソロ。録音上もオケが強めでソロが弱めのバランス故、一層オケの雄弁さに耳が行きます。渋めの音色で、枯れた表情のチェロ。テンポ感とリズムのキレはよく、味わい深いチェロです。ジャンドロンはこのとき45歳ですが、すでに老練な印象すら感じさせます。カザルス門下という背景から想像するイメージとは異なり、紳士的な印象。オケの濃さとの対比から荘感じさせるのでしょうか。カデンツァに入るとフランス人らしいエスプリの利いた手のこんだもの。えも言われぬ芳香を放つカデンツァ。
アダージョに入るとレッパードのコントロールは癒しを増す方向に変化し、厚化粧というより、自然に滔々と流れるような表情を帯びてきます。オケとチェロの音楽がマッチして、ひじょうにしなやかな表情を見せ始めます。レッパードがだいぶチェロに寄り添い、ジャンドロンもオケに上手く乗って伸び伸びと弾いていいきます。フレーズの表情は非常に柔らかく音楽の響きも深くなります。アダージョはいいですね。大海のうねりに身を任せているような時間が流れます。
フィナーレは、遅めのテンポながらキリリとリズムが引き締まったオケの入り。1楽章とは別人の振るような自然さ。ジャンドロンはゆったりしたオケに身を任せながら、そこここで変化をつけながら、自在に弓をを操り、糸を引くように滑らかにメロディーラインを描いていきます。余裕たっぷりに遊び心さえ感じさせる自由闊達なソロ。フルニエとは異なりますが、醸し出す印象は近いものがあります。

つづいてカザルスとの2番LP。

Hob.VIIb:2 / Cello Concerto No.2 [D] (1783)
カザルスらしい、太い筆での個性的な書のような風格ある序奏。レッパードの流麗さとは異なり、いきなり孤高の響き。2番の穏やかな表情を味わい深く描いていきます。オケに合わせるようにジャンドロンも芸術的な弓使い。こちらはカザルス門下というイメージに近い印象。1番より5年前という録音時期と、伴奏がカザルス自身であるということの影響でしょうか。チェロの音階の描き方は、カザルスのバッハの無伴奏チェロ組曲のゴリゴリした表情に近く、前曲の弓使いとかなり印象が異なります。オケも曲の真髄にせまるアーティスティックさを醸し出します。録音はやはり少し古さを感じさ、もうすこし潤いがあればと感じさせますが、それが味わいを増すように働き、悪くはありません。1960年の録音ですがステレオです。ジャンドロンのソロは流石にカザルスが選んだだけあって燻し銀の至芸を聴かせます。カデンツァは円熟の極み。間を活かした非常に集中力の高い演奏。心技体が一体となった素晴しい演奏。カザルスも聴き惚れている事でしょう。
アダージョはソロもオケも枯れた表情が印象的。オケも音量を落としてチェロのソロを引き立て、ソロはかすれた表情を隠さず、唯我独尊の域。オケとのせめぎ合いも随所に見られ、沸き上がる感興。
フィナーレは独特の郷愁が秋晴れの空のような突き抜けた爽やかさをもたらします。ジャンドロンとカザルスの音楽がピタリと一致して、表現がぐっと踏み込んできます。荒削りなところまで計算したような踏み込み方。ソロは引きずるような表情を見せながら起伏を大きくして、クライマックスに向かいます。最後は大きく踏み込んでフィニッシュ。

モーリス・ジャンドロンがチェロを弾いた2種のアルバムを聴きましたが、指揮者によって表情を大きく変える器をもっているのか、指揮者がソロを含めて音楽を支配しているのか、本当のところはどちらかわかりませんね。レパードとの1番は、1楽章のオケの非常に濃い表情が特徴でしょう。2楽章以降は自然な表情にもどり、非常にしっとりとしたいい演奏ですが、それだけに1楽章の特殊な印象が気になってしまいます。カザルスとの2番は師匠の前での演奏故、ジャンドロンも気合いのノリがちがいます。レッパード盤では演奏を楽しむ余裕のようなものすら感じられましたが、カザルス盤ではもの凄い集中力での真剣勝負の趣。まあ、こういったところが協奏曲を聴く楽しみでもあるわけですね。評価は1番が1楽章の分ちょっと減点で[++++]、2番は[+++++]とします。

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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : チェロ協奏曲 ヒストリカル LP

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No title

チェロ協奏曲第1番は大好きでいろいろ聴きましたが、デュ=プレ/バレンボイムが傑作ですね。古楽なら鈴木秀美/クイケンもいいと思います。
ジャンドロンは気になってるものの未聴です。バッハの無伴奏などの録音もありますか?
レッパードはグリュミオーのハイドンのヴァイオリン協奏曲の伴奏指揮者でしたね。あれは溌剌としたノーブルな音楽で大好きです。

Daisyさんのこのブログ、大好きです。ハイドン以外も楽しく拝見しています。私もハイドン好きのはしくれ、ぜひアニキと呼ばせてください(笑)

Re: No title

トトラさん、コメントの返信もれておりました、すみません。
いつもコメントありがとうございます。
チェロ協奏曲は名曲故名演奏が多く、みなさんこれぞというアルバムがあると思います。デュプレ盤もファンの多いロマンティックな演奏ですね。ジャンドロン、バッハの無伴奏のアルバムありますね。amazonでも出てきますので入手は容易だと思います。
ちょっと番外で暴走気味なときもありますが、それも含めて(笑)よろしくお願いします。どのような呼称でもOKです(笑)
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Daisy


Author:Daisy

ハイドン(Franz Joseph Haydn)の膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。私はなぜハイドンにはまったのか?

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