【新着】エカテリーナ・デルジャヴィナのピアノソナタ全集

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エカテリーナ・デルジャヴィナ(Ekaterina Derzhavina)のピアノによるハイドンのピアノソナタ全集を収めた9枚組のアルバム。収録は1993年から2008年にかけて、ドイツ、ザールブリュッケンにあるザールランド放送の室内楽スタジオおよび放送大ホールでのセッション録音。レーベルは独Profil。
デルジャヴィナはまったくはじめて聴く人。今までその存在も知りませんでしたが、いきなりハイドンのピアノソナタ全集がリリースされビックリしたのが正直なところ。ハイドンのピアノソナタ全集を出されて、放っておく訳にはまいりません。
エカテリーナ・デルジャヴィナ1967年モスクワ生まれのロシア人ピアニスト。6歳の頃からピアノを学び始めました。モスクワにあるグネーシン音楽大学、グネーシン音楽アカデミーに進み1989年ロシアピアノコンクールで3位とロマン派ピアノ演奏特別賞を受賞、また1992年ザールブリュッケンで開催されたバッハピアノコンクールで90人のピアニストのなかから1位に輝きました。1993年から2006年までの間出身校であるグーネシン音楽大学で講座をもち、また、モスクワのチャイコフスキー音楽院でも2003年以降教職の立場にあるとのことです。
日本には2012年のラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンに出演して話題となったそうです。このアルバムの他にはメトネルなどの演奏をはじめとして数枚のアルバムがリリースされているくらいで、あまり知られた存在ではない模様です。ルックスはロシア人というより、東洋の血が混じった人のように見受けられ、ライナーノーツに多数載せられた写真はおじさんの心を射止めているようです。
※当ブログ読者のあるおじさんのからカミングアウトがありました(笑)
今日は全集のなかでも録音年代が最近の2曲を取りあげましょう。
Hob.XVI:48 / Piano Sonata No.58 [C] (1787/9)
2008年とこのアルバムの中では最新の録音。ハイドン晩年の2楽章のソナタ。ライプツィヒの出版社クリストフ・ゴットロープ・ブライトコップの依頼で作曲された曲。女流らしい華麗なピアノを想像していたところ、1楽章のアンダンテはかなり力強いタッチで朴訥な音楽を奏でる人。遅めのテンポでじっくりとメロディーを単音単位で積み上げ、一音一音をかなりはっきり区別しながら、ミニマルな響きで詩情を乗せていきます。和音の響きよりも単音の独立性がかなり印象に残ります。ハイドンの演奏としてはかなり個性的なもの。ハイドンのソナタを古典期の曲として描くと言うよりは現代音楽のような孤高の表情も垣間見せます。放送ホールでの録音らしくオンマイクの直接音重視の鮮明なもの。もう少し残響があるほうが潤いがあっていいように思います。
続くプレストはテンポあがるものの、ゴリッとした力強さはそのまま。すこし荒っぽいところもありますが、かなりバリバリと弾き進めていくところの力強さはかなりのもの。あまり細かいところにこだわらず曲の勢いを描く事を重視しているようです。思ったより男性的な演奏でした。
Hob.XVI:49 / Piano Sonata No.59 [E flat] (1789/90)
こちらは2006年の録音。荒々しく迫力重視で弾き進めていくところは前曲同様。力強いタッチでメロディーラインに隈取りをクッキリつけて描いていき、キレのいいアクセントが特徴。どちらかというと強音で押していく演奏。指はかなり良く回る方で、音階のクリアさはありますが、一音一音のツブがそろっている訳ではなく、いい意味で弾き散らかしていくようなところが迫力を生んでいるのでしょう。
2楽章はアダージョ・カンタービレ。音量を落としたところで、ようやく繊細な表情が見えてきました。繊細な中にも音を一音一音独立させて構成していくデルジャヴィナの特徴は保たれていて、独特の表情は健在。中間部の大きな盛り上がりでは再び鋼のような強音を聴かせて、クリア強音を印象づけます。
フィナーレは本当にミニマルミュージックのような印象が強くなります。左手の伴奏が信号音のように単純化された響きを繰り返し、それに乗ったメロディーもクッキリ、間をしっかりとってかなりの存在感。良く聴くとピアノの一音一音が透き通った氷のような純度の高い音。
エカテリーナ・デルジャヴィナのハイドンのピアノソナタ全集から2曲ばかりを選んで聴きましたが、ルックスから想像される可憐な演奏とは異なり、かなり力強く個性的な演奏。ハイドンのソナタに新たな光を当てようと言う斬新なアプローチでしょう。ただ、これまでのハイドンの演奏から聴かれる豊穣な響き、流麗な表情や機知に富んだ解釈の多様性が失われ、整理されすぎてしまった感もなきにしもあらず。ちょっと評価が割れそうな演奏です。もしかしたら、この演奏に対する評価は、こちらの耳や心の柔軟性が問われているのかもしれませんね。まだまだ数枚取り出して聴いているだけですので、これからゆっくりデルジャヴィナのハイドンを解きほぐして行かなくてはなりません。この2曲の評価は[++++]とします。
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