作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

【新着】スヴェトラーノフ/ベルリンフィル「軍隊」ライヴ!

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今日はメジャーな指揮者とメジャーなオケの共演。曲も含めた組み合わせはかなりニッチなもの。

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HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

エフゲニー・スヴェトラーノフ(Evgeny Svetlanov)指揮のベルリンフィルの演奏で、ベートーヴェンの「レオノーレ」序曲第3番、ハイドンの交響曲100番「軍隊」、チャイコフスキーのマンフレッド交響曲の3曲を収めたアルバム。収録は1989年3月4日、ベルリンフィルハーモニーでのライヴ。レーベルは英TESTAMNT。

このアルバム、HMV ONLINEの解説によれば、スヴェトラーノフとベルリンフィルが唯一の共演した貴重なコンサートをライヴ収録したものとのこと。1989年といえば、この年の4月にカラヤンがベルリンフィルの芸術監督と終身指揮者を辞任した激動の年。おそらくスヴェトラーノフがこのコンサートを振った3月は、カラヤンとベルリンフィルの関係は冷えきり、そのためスヴェトラーノフをはじめとして多くの指揮者がベルリンフィルに客演しているようです。スヴェトラーノフが振った4日後にはカルロス・クライバーがコンサートに客演し、翌4月には、ジュリーニ、ハイティンク、小沢征爾、バレンボイムなどがベルリンフィルと録音セッションをもったそうです。この年の10月にはベルリンフィルの団員の投票でクラウディオ・アバドが次期音楽監督に選ばれ、そして11月にはベルリンの壁崩壊と、まさに歴史の転換点だったわけですね。

指揮者のスヴェトラーノフはロシアの爆演系指揮者として有名ですね。ただしハイドンの録音はこれまでに見た事もなく、従って私もあまりなじみではありません。1928年モスクワ生まれで、モスクワ音楽院で学びました。1955年からボリショイ歌劇場で指揮をはじめ、1962年には首席指揮者となりました。1965年からソ連国立交響楽団(現ロシア国立交響楽団)首席指揮者に就任、1979年からはロンドン交響楽団の客演指揮者となるなど、ロシア以外でも活躍していました。晩年はフリーとなって世界各国のオケに客演、なかでも日本ではN響への客演でおなじみの方も多いのではないでしょうか。

ということで、爆演系のスヴェトラーノフが、キレ味鋭いベルリンフィルを振って、しかも曲はハイドンの交響曲でもことさら迫力ある演奏が映える「軍隊」とくれば、否応なしに期待してしまいます。スヴェトラーノフ、爆発するのでしょうか?

Hob.I:100 / Symphony No.100 "Military" 「軍隊」 [G] (1793/4)
序奏はゆったりとしたテンポで、ベルリンフィルの線のそろった精度の高いアンサンブルで安定した入り。ただ、ちょっとすると、音に異様な力が漲ってきているのに気づきます。主題に入ると巨人がゆっくりと歩をすすめるような遅めのテンポで、じっくりと描いていきます。一貫して遅めのテンポで大きな造りの音楽。図太い筆で音楽を描いていくような雄々しい展開。どこかで爆発するかと思いきや、意外と冷静にじっくりと音楽をつくっていきます。ボディービルダーがまだまだ筋肉を完全に浮き上がらせるまで力を入れず、軽くポーズをとっているがごとき余裕。ただならぬ迫力の気配。
打楽器大活躍のアレグレットも、なにやら不気味な迫力を帯びた展開ですが、打楽器はほどほどの爆発。ただ、大爆発するよりもかえって迫力を感じるのが不思議なところ。豪腕投手が決め球を投げずに変化球で打者を翻弄しているような感じ。それでもベルリンフィルハーモニー一杯に図太い響きが充満。普段のドイツ系の指揮者とは音楽の造りが違います。既にホールはビリつき気味。
メヌエットに入ってもスヴェトラーノフは落ち着き払って、じっくりとオケを鳴らしていきます。ベルリンフィルもスヴェトラーノフのタクトに素直に応えて、図太い響きでホールを満たしていきます。スヴェトラーノフのこのオーソドックスなオケのコントロールはハイドンへの敬意を表しているのでしょうか。
そして、フィナーレ。そろそろアクセルを踏み込んでくるころ。早いパッセージに入り、にわかにオケにスイッチが入ってきました。ベルリンフィルが本領発揮で、キレと迫力が一段上がり、めくるめく音の洪水。打楽器奏者のバチさばきが見えるような素晴しいキレ。最後はまさに爆風のような迫力で締めくくります。会場からも嵐のような拍手が降り注ぎます。

演奏を聴く前に期待した大爆発は聴かれませんでしたが、スヴェトラーノフ=爆演というこちらの安直な想像とは異なり、スヴェトラーノフのハイドンに対する視点は極めて真っ当なもので、ベルリンフィルから引き締まった音楽をうまく引き出した流石の指揮というところ。フィナーレの最後にずばっと豪速球を見せるあたりのセンスも抜群です。やはり指揮者にとってハイドンとは音楽の原点をなすものなのでしょう。スヴェトラーノフの酔眼にやられたという感じです。直前にアバドのキレで聴かせるスタイリッシュな軍隊を取りあげましたが、スヴェトラーノフの軍隊はやはり迫力で聴かせる演奏の代表格。スヴェトラーノフという豪腕指揮者にとっても、ハイドンには規律と機知に溢れたものでした。ベルリンフィル激動の時代の貴重な記録と言う意味でも素晴しい価値をもったアルバムだと思います。ハイドンの交響曲好きの皆様、是非お聴きいただくべきかと。評価は[+++++]です。

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