作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

【番外】ラ・フォル・ジュルネで衝撃のブーレーズライヴ

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5月4日、5日は有楽町の東京国際フォーラムに出かけ、久しぶりに「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」のいくつかのコンサートを聴きました。今年のテーマは「パリ、至福の時」。

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」2013公式サイト

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンには過去何度か出かけています。2007年のモーツァルトを特集した年には意外とハイドンもいろいろ取りあげられていたので、ミシェル・コルボのモーツァルトのレクイエム他、ハイドンのピアノトリオや、バリトントリオの演奏を生で聴く貴重な機会に恵まれました。残念ながらそのころブログをはじめていなかったのでレポートはありません。ブログに書いておくと自分にとっての記録にもなって意外と役立ちます。記憶は年々おぼろげになっていきますので(笑)。

最近は毎年行っている訳ではありませんが、ゴールデンウィークの都心でのイベントとしても定着しており、賑やかな雰囲気の中で音楽を楽しめるいいイベントです。

さて、今年のテーマはパリ。ハイドンのパリセットでもやればいいのにと思いつつも、そんなマニアックな設定があるはずもなく、特に出かける予定もありませんでした。ところがところが、ちょっと前の日経新聞にアンサンブル・アンテルコンタンポラン来日という記事をみてビックリ。日頃ハイドンを偏愛していることはもちろん、なぜかブーレーズも嫌いではなく(もちろん指揮ではなく曲の方)、アルバムもいろいろ集めています。これは聴かなくてはと、新聞記事を見た通勤電車の中から即座に嫁さんにメールを打って、取れるチケットを手配したという次第。ということで5月4日と5日は東京国際フォーラム巡礼となったわけです。

4日にチケットをとったのはこちら。

公演番号:243(ホールC 14:15〜15:00)
ブーレーズ:デリーヴ1(6つの器楽のための)
ドビュッシー:フルート、ヴィオラとハープのためのソナタ
ミュライユ:セレンディブ(22人の音楽家のための)
スザンナ・マルッキ指揮 アンサンブル・アンテルコンタンポラン

アンサンブル・アンテルコンタンポランは1976年にピエール・ブーレーズが設立した、31人のソリストからなる団体。初代音楽監督がピエール・ブーレーズですが、現在の音楽監督はこのコンサートを指揮するスザンナ・マルッキ(Susanna Mälkki)。知らない人ですのでちょっと調べておきましょう。

スザンナ・マルッキは1969年ヘルシンキ生まれのフィンランドの指揮者です。ヘルシンキのシベリウス・アカデミーやロンドンの王立音楽アカデミーなどで学び、スウェーデンのイェーテボリ交響楽団の首席チェロ奏者などを務めた後、2006年からアンサンブル・アンテルコンタンポランの音楽監督を務めています。

アンサンブル・アンテルコンタンポランは、なんと今回18年振りの来日ということで、聴きにきた甲斐があるというもの。

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4日は定刻の少し前に東京国際フォーラムに到着。幸い天気に恵まれ東京国際フォーラムの中庭は大混雑。かなりの人出でした。

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今日の席はホールCの1階の左前の方。かなり左はじの方でしたが、音はダイレクトに届き、いい席でした。

ブーレーズ:デリーヴ1(6つの器楽のための)
1曲目からいきなりブーレーズ! 調べると1984年の作品。ピアノ、ヴィブラフォン、ヴァイオリン、チェロ、フルート、クラリネットのための曲。短い曲ですがブーレーズらしいきらめくようなめくるめく音の錯乱が印象的な名曲。ピアノとヴィブラフォンの透明感とフルートとクラリネットの鋭い響きが相俟って、細胞分裂の瞬間を音にしていくような響き。アンサンブル・アンテルコンタンポランのメンバーは流石に演奏し慣れている様子で、この難曲を精緻な響きで保ちます。家に帰ってブーレーズ自身の指揮のアルバムと比べても、ダイナミクスの多彩さ、響きの凝縮度、静寂感の表現が素晴しく、女流ながら精緻なスザンヌ・マルッキの指揮は見事なものでした。

ドビュッシー:フルート、ヴィオラとハープのためのソナタ
つづいてドビュッシー。指揮はなし。アンサンブル・アンテルコンタンポランの3人のメンバーによる演奏。ドビュッシーの曲の中でも印象派的な部分と抽象的な響きの混じった曲。武満がドビュッシーを聴いて影響をうけたというのがわかるような曲。やはり現代曲の演奏で磨かれた3人の素晴しく精緻な演奏にホールの観衆は釘付け。濃密な音楽に酔いしれました。

ミュライユ:セレンディブ(22人の音楽家のための)
再びスザンヌ・マルッキが指揮台に立ちます。このプログラムのメインであろうミュライユと言う人の曲。解説によれば、1947年生まれのアメリカに拠点をおくフランスの現代作曲家。メシアンに師事していたそう。コンピュータによる音響分析により特定の音の倍音構成を和声に用いたり変調してポリフォニーに応用する「スペクトル楽派」の創始者の一人とのこと。打楽器群による多彩な響きとブーレーズを彷彿とさせる分裂と集散を繰り返しながらダイナミクスが波のように襲ってくる曲。ここでもアンサンブル・アンテルコンタンポランのライヴとは思えない精緻な響きに会場内が水を打ったように鎮まり、聴衆の脳髄に前衛が刺さりました。

お祭りムードのラ・フォル・ジュルネですが、Cホールの観客はアンサンブル・アンテルコンタンポランのあまりに見事な演奏にフランス現代音楽の底力に圧倒されたよう。素晴しい演奏でした。

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ホールの出口から中庭を望みます。ここはラファエル・ヴィニオリの素晴しい設計で空間構成も見事。ホールからの動線のスペクタクルさも楽しみの一つです。

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次にとったコンサートまでの間、中庭に出てみると、出店の一つの看板に「のび〜るアイス」と気になるコピーが。写真の右上に注目。

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これが「のび〜るアイス」。食べてみると確かに弾力があり、「のび〜る」に偽りなし(笑)

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私はもちろんHeineken。ブーレーズの余韻を楽しみます。

さて、もう一つチケットをとったのがこちら

公演番号224(ホールB7 16:00〜16:45)
トゥリーナ:交響的狂詩曲 op.66
ファリャ:恋は魔術師
アントニア・コントレラス (フラメンコ歌手)
海老彰子 (ピアノ)
オーヴェルニュ室内管弦楽団
ジャン=フランソワ・エッセール (指揮)

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こちらは、ファリャを生で聴いてみたくてとったもの。指揮者もオケも歌手もはじめて聴く人。ホールに来てみて思い出しましたが、ここは音楽用ではなく会議用のホールで音が全く響かず、ちょっと演奏者に気の毒。とくに情熱的なスペインの音楽を演奏するには向いていません。トゥリーナの曲はピアノ海老彰子さんの演奏が日本人離れしたラテン的な響きが印象的なものでした。オケと指揮は期待したほどホットではなく、むしろ理性的な演奏。そして恋は魔術師は圧倒的なプレゼンスのフラメンコ歌手登場で、独特のスペイン語の語りとクラシック歌手とはまったく異なる歌が面白かったです。ここでもエッセールの指揮はテンポ良くクッキリと理性的な演奏。ファリャ独特の闇の深さとゾクゾクするようなエキゾチックな魅力とは少々異なる演奏でしたが、やはりそこは生の魅力もあり、なかなか楽しめました。返す返すもこのホールで音楽をやるのは気の毒と感じたコンサートでした。

コンサートを満喫したところで、帰りは最近出来た東京駅前の旧東京中央郵便局を建替えたKITTEに寄ってみました。

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KITTE | キッテ オフィシャルホームページ

入ってビックリ。もの凄い人でした。2階以上に上がるエスカレータに長蛇の列。連休を手軽に都内で過ごす人たちの恰好のお出かけスポットだったわけですね。

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外から見るとこんな感じ。旧東京中央郵便局舎の部分が商業施設になり、上はJPのタワーオフィス。調べてみるとJPタワーは三菱地所設計。KITTEはなんと歌舞伎座を担当した隈研吾さんでした。隈さん流行ってますね。混んだエスカレーターに並ぶのもなんなので、1階でちょっとお土産を買っただけでしたが、巨大な吹き抜けを象徴的に設けて、商業施設としてはかなり大胆な空間構成のもの。透明感のあるミラーの反射や格子状のトップライトなど、光の扱いの上手い隈さんならではのところも見られ、商業施設としては流行りそうな感じがするいい施設。リンクを張ったホームページの方がちょっと魅力を伝えきれていない感じですね。

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そして4日の帰りは東京駅から。こちらも改装して綺麗になったんですね。最近東京駅に用事がなかったので、改装後の駅舎に入るのは初めての事。見上げて写真撮っちゃいました。



そして5日もアンサンブル・アンテルコンタンポラン目当てに東京国際フォーラムへ。この日は1つだけ。

公演番号342(ホールC 12:30〜13:45)
ラヴェル:序奏とアレグロ
ブーレーズ:シュル・アンシーズ(3台のピアノ、3台のハープ、3台の鍵盤打楽器のための)
スザンナ・マルッキ指揮 アンサンブル・アンテルコンタンポラン

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コンサートが12:30からということで、ちょっと早めに東京国際フォーラムについて、ガラス棟のエスカレーターを降りたところにあるカフェでサンドウィッチなどをつまんで腹ごしらえ。

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今日も好天に恵まれ、東京国際フォーラムは大繁盛。ラ・フォル・ジュルネも5日が最終日ですが、まだチケットが残った公演もあり、カフェの向かいのチケット売り場は沢山の人で溢れていました。

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今日もホールは響きの良いホールC。今日は1階右寄り後方で、眺めは全体が見渡せていい席ですが、音は昨日の方がダイレクトでいいですね。昨日のコンサートがあまりに良かったので今日も期待できます。

ラヴェル:序奏とアレグロ
昨日のドビュッシーも良かったんですが、このラヴェル、絶品でした。ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ、フルート、クラリネット、ハープという8人のアンサンブルで奏でられるラヴェル。やはり腕利き揃いだけあって精緻な演奏から素晴しい色彩感が浮かび上がります。特にハープの美しさは素晴しかったですね。ヴァイオリンも管楽器もフランス風というのではなく、現代音楽をこなす正確な演奏からラヴェルの書いた音楽が鮮明に浮かび上がるという美しさの限りを尽くしたものでした。自然でかつ厳しさもあるなかから音楽の力が湧いてくる感じと言えばいいでしょうか。

ブーレーズ:シュル・アンシーズ(3台のピアノ、3台のハープ、3台の鍵盤打楽器のための)
ラヴェルの演奏でうっとりした余韻の中、ステージ上には3台のハープ、3台のピアノ、3組ヴィブラフォンなど打楽器がつぎつぎと配置され、場内がざわめきます。3台のハープとピアノが並ぶ姿は圧巻。そして、この大曲シュル・アンシーズ、超絶的名演でした。ブーレーズの真骨頂である人間の意図するものとは思えない膨大な数の音符の散乱、閃光のような鋭い爆発、響きの余韻を点描したように尾を引くトレモロ、三方から予期せず次々と押し寄せる衝撃。30分少しだたでしょうか、ただただ響きに打たれる至福の時。やはりスザンナ・マルッキのコントロールは秀逸。指揮棒なしで手を振るようすはブーレーズそっくり。そして3人のハープ、ピアノ、パーカッションの演奏も精緻の限りを尽くした見事なものでした。最後の一音の余韻が消えてしばらく凍り付いたように静まるホール。マルッキが手をゆっくりおろし場内から嵐のような拍手とブラヴォーの声。いやいや、生の音楽のパワーの凄まじさをまざまざと見せつけられました。横を見ると普段現代音楽など聴かぬ嫁さんもあまりのスゴさにあんぐり。これはすごいと圧倒されたようでした。

現代最高の現代音楽のもつパワーを再認識した次第。ハイドンが聴いたらどう思ったでしょうか。

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興奮冷めやらぬ中、ホールを後にします。ホールCからも中庭のようすが手に取るようにうかがえます。今日はこのコンサートで終わり。せっかくの有楽町なので、交通会館で地方物産、ロフト、イトシアの地下などを散策。昼前にサンドウィッチだけだったのでちょっとお腹が減ったので、イトシアの地下で食事を。

食べログ:うまやの楽屋

まずは生ですが、ここは一番搾りのフローズンを注文。ちゃんと飲むのははじめて。

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飲んでみると上の凍った泡とビールの温度差がかなりあり、何となく想像していたものとは違いました。涼感はありますが、ビール本来の美味しさが上がるものではないと、何となく納得。

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そして戴いたのは牛タン定食。麦飯で。仙台でいろいろ牛タンの美味しいものを戴いたので、本場の牛タン自体の旨味溢れる感じには一歩譲るものの、意外とみそ汁が美味しかったり、生卵がついて変化がつけられるなど独自の工夫もあり、悪くありませんでした。

このあと新宿に寄って買い物をして、連休の都内お出かけイベントは終了。新宿ではもちろんディスクユニオンでちょっと仕入れしました(笑)

ハイドンのブログなのに、なぜかブーレーズにノックアウトされたゴールデンウィークでした。

(参考盤)
BoulezDelive1.jpg
HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

BoulezSurIncises.jpg
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