【追悼】コリン・デイヴィスの88番、99番

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サー・コリン・デイヴィス(Sir Colin Davis)指揮のアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団の演奏で、ハイドンの交響曲88番、99番の2曲を収めたLP。収録はLPには表記がありませんが、同じ音源だと思われるCDのほうには1975年11月、アムステルダム・コンセルトヘボウでのセッション録音と記載されています。レーベルは蘭PHILIPS。
コリン・デイヴィスのハイドンは下記のように結構とりあげていますが、一部のライヴ盤を除くと無難な評価なものが多いのが正直なところ。ただし、それには原因がありそうです。
2011/10/28 : ハイドン–交響曲 : コリン・デイヴィス/バイエルン放送響の「ロンドン」ライヴ
2011/08/19 : ハイドン–交響曲 : コリン・デイヴィス/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団の熊、雌鶏
2011/08/13 : ハイドン–声楽曲 : 【お盆特番3】コリン・デイヴィス/バイエルン放送交響楽団のネルソンミサ
2011/06/16 : ハイドン–オラトリオ : コリン・デイヴィスの天地創造ライヴ-2
2011/06/14 : ハイドン–オラトリオ : コリン・デイヴィスの天地創造ライヴ-1
2010/07/17 : ハイドン–交響曲 : コリン・デイヴィスの時計ライブ
今日取り上げるLPはかなり前に手に入れたもの。実は手に入れたばかりのときに数度針を通しただけで、あまりちゃんとした演奏の記憶がありません。今回追悼を機に聴いたところ、かなり良いのげビックリしたのが正直なところ。手元にはおそらく同じ音源のSACDであるPentaTone classics盤(上記amazonのリンク先のアルバム)があり、引っ張り出して聴いたところ、明らかにLPの方が音質がいいです。PHILIPS自身がリリースしてるザロモンセットのCDもあまりキレが良くないことを考えると、CD化にあたって音質が落ちていると想像されます。迫力、弦のキレ、実体感は明らかにLPの方が良く、デイヴィスのオケのヴォリューム感とコンセルトヘボウをゆったりと鳴らした演奏本来の鮮明な響きの魅力がLPからつたわります。コリン・ディヴィスのハイドンの交響曲は風景画をあしらった上品なジャケットで次々とリリースされ、LPの発売当時はコンセルトヘボウの響きの魅力で、かなり話題になった記憶がありますが、CDではその魅力が薄まっていたのかもしれません。
Hob.I:88 / Symphony No.88 "Letter V" 「V字」 [G] (1787?)
アムステルダム・コンセルトヘボウの豊かな瑞々しいオーケストラの響き。デイヴィス特有のアポロン的中庸さの均衡のとれたフォルム。オーケストラを聴く悦びに溢れたバランスの良い響き。そしてLPならではダイレクトな音像。そう、PHILIPSの輸入盤ならではのこの空気感です。ただ音楽が流れることが快感な演奏ですね。音量を絞る部分の透明感も素晴らしく、まさしくHi-Fi録音。コリン・デイヴィスの演奏は実に自然なテンポとリズム、フレージングなのにキレの良さが爽快なもの。
つづくラルゴもじつに穏当なもの。これ以上オーソドックスな演奏はないほどの、ある意味素晴らしい完成度。完璧なフォルムの石膏彫像のような安定感があります。録音がよいからこそ引き立つ自然な響きの魅力。
おそらくこの演奏の白眉はメヌエット。オケの力強い響きがコンセルトヘボウに響き渡ります。抜群の立体感。部屋の中にフルオーケストラがやってきたような異次元の立体感。音量を上げて、メヌエットの響きに打たれます。
88番のコミカルなフィナーレは、コミカルであるよりも律儀な印象なのはデイヴィスの性格に由来するのでしょうか。やはり、明らかにCDとは別格の彫刻的フォルム。中盤以降の変奏の迫力の素晴らしさはLPならではの響きです。最後は転げ落ちるような急激なテンポの変化を聴かせる演奏もありますが、コリン・デイヴィスのコントロールは落ち着き払って、ちょいとテンポを上げるだけですが、彫り込みの深い抜群の迫力で聴かせきってしまいます。やはりLPで聴くと素晴らしい演奏でした。
Hob.I:99 / Symphony No.99 [E flat] (1793)
つづいてこちらも名曲99番。予想通り大河のごときおおらかさで雄大な響きから入ります。この曲はデイヴィスに合ってますね。弦や管のさざめくような伴奏に対して、分厚い響きの弦楽器群の奏でる旋律が実に大胆にメロディーを乗せていきますが、デイヴィス特有のさっぱりとしたコントロールによって実に純音楽的で、アカデミックな印象を残します。短い音符のキレがいいので、全般に引き締まった緊張感を保ちます。
99番のアダージョは穏やかな表情と徐々に盛り上がる感興が有名な曲。聴き入るうちに大河の流れに浮かんでいるような錯覚に襲われます。大波に身を任せてオーケストラの力強い響きを堪能。
メヌエットも同様。オケの精度が高いため、スピーカーから流れ出るサウンドはまさに正確そのもの。特に短い音の余韻にコンセルトヘボウの美しい響きが乗って、最高の演奏。
フィナーレは前曲同様落ち着き払って、オケをどうしたら良く鳴らせるか熟知しているようですね。手元のこのアルバム、ノイズもなく非常に聴きやすい音。まさに名録音です。
コリン・デイヴィスの指揮するアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団の演奏で、ハイドンの名曲を2曲録音したLP。どちらの曲もLPのほうがCDよりも音楽の骨格が豊かでかつ、彫りも深く音楽が眼前に展開する素晴らしい録音であることがわかりました。この彫りの深さが、穏当なデイヴィスの音楽にタイトさを加えて、しかも音響的な面白さもかなりアップさせています。LPを再生する装置をお持ちでしたら、このシリーズは是非LPでそろえられるべきかと思います。評価は両曲とも[+++++]とし、CD版とは差を付ける事と致します。
コリン・デイヴィスはハイドンばかりでなく、モーツァルトやベートーヴェン、ベルリオーズ、シベリウス、ストラヴィンスキーと広いレパートリーにいろいろ名盤を残しています。ネットではデイヴィスが亡くなった事をしのんでいろいろなアルバムがレビューされており、今更ながら、穏やかながら人を惹き付けて止まない、流れるような彼の音楽の魅力を再認識した次第です。また一人偉大な指揮者を失いました。ご冥福をお祈りします。
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