ロリン・マゼール/ベルリン放送響のオックスフォード、太鼓連打

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ロリン・マゼール(Lorin Maazel)指揮のベルリン放送交響楽団(Radio-Symphonie-Orcheser Berlin)の演奏で、ハイドンの交響曲92番「オックスフォード」、103番「太鼓連打」の2曲を収めたLP。収録は1969年とだけ記載されています。レーベルはConcert Hall Societyの日本盤。
このアルバム、調べたら、なんとamazonに輸入盤のLPの在庫ありです! 今になって、これだけマニアックなアルバムのLPの在庫ありとはどうなっているのでしょう。
マゼールのハイドンは以前にCD-Rを一度取りあげています。
2011/07/12 : ハイドン–交響曲 : ロリン・マゼール/ウィーンフィルの85年オックスフォードライヴ
以前の記事にも書いたように、わたしはマゼールは嫌いではありません。ちょっとグロテスクな演奏をするときもあり、怖いものみたさ的な興味をそそる指揮者。歌舞伎で言うと外連味溢れるといったところでしょう。
今日取り上げるアルバムはそのマゼールのかなり若い時の演奏。マゼールは1930年生まれということで、このアルバムはマゼール39歳の時の録音ということになります。
あらためてマゼールの略歴を調べてみると、マゼールの凄さを再認識しました。1930年、フランスのパリ近郊の街に生まれ、父はユダヤ系ロシア人、母はハンガリーとロシアのハーフとの事で、マゼールにはユダヤ、ロシア、ハンガリーの血が流れています。生後しばらくで家族でアメリカに移住。5歳からヴァイオリン、7歳から指揮の勉強をはじめますが、8歳でニューヨークフィルハーモニックを指揮してデビューし、9歳でストコフスキーの招きでフィラデルフィア管を指揮、11歳でトスカニーニに認められNBC交響楽団を指揮する等、10代半ばまでに全米のほとんどのメジャーオーケストラを指揮したそうです。
ピッツバーグ大学にすすみ、在学中には前記事でアンドレ・プレヴィンの指揮で取りあげたピッツバーグ交響楽団の団員として活躍しました。1960年には史上最年少でバイロイト音楽祭に登場し、指輪を指揮したそう。そして1965年からはベルリン・ドイツ・オペラとこのアルバムのオケであるベルリン放送交響楽団の音楽監督に就任しました。どちらもフェレンツ・フリッチャイの後任です。
以後は、クリーブランド管、ウィーン国立歌劇場、フランス国立管、バイエルン放送交響楽団、ニューヨークフィルハーモニック、ミュンヘンフィルなど有名オケの音楽監督を総なめしているのはご存知の通りです。凄すぎる経歴ですね。
マゼールのハイドンの録音は少なく貴重なものです。若かりしマゼールの才気は爆発するでしょうか。
Hob.I:92 / Symphony No.92 "Oxford" 「オックスフォード」 [G] (1789)
やはり期待したよりは大人しく、しかも若々しい演奏。音楽の造りがディテールの積み上げで、大きな流れよりもクッキリとしたフレージングひとつひとつが聴き所なのがマゼールらしいところでしょう。日本盤のせいかはわかりませんが、録音はキレが今ひとつ。良く撮られたLP独特のカッチリした印象が弱く、音場がすこしせまくまとまった感じがします。1楽章は腕試しのような位置づけ。
つづくアダージョ・カンタービレはかなり音の角を意図的に落としてかなり柔らかさを意識した演奏。それでもどこか冷静なコントロールが行き渡っている印象があり、叙情的にはなりません。
メヌエットに入り、マゼール流の各パートそれぞれが交互に鮮明なフレージングで交錯する面白さが浮かび上がってきました。それぞれのパートが鮮明にデュナーミクの変化をつけながらアンサンブルが進む面白さはなかなか。音楽全体の流れよりもパートパートの絡み合いが聴き所。
そしてフィナーレは冒頭のメロディーが不思議に浮かび上がるフレージング。追ってオケが重なっていきますが、各パートそれぞれがキレていて非常に面白い。マゼールの面目躍如ですね。精密な歯車がそれぞれ回りながら時を刻む時計のメカニズムを眺めているような演奏。アンサンブルがかみ合って進んでいく面白さがあります。終楽章は見事にマゼール流。もうちょっと外連を交えてほしいと期待もありましたが、十分面白い演奏でした。
Hob.I:103 / Symphony No.103 "Mit dem Paukenwirbel" 「太鼓連打」 [E flat] (1795)
オーソドックスな遠雷タイプの太鼓連打から入ります。1楽章はやはりオーソドックスに入りますが、キビキビと小気味好い力感が心地いい演奏。やはり各楽器に次々とスポットライトが当たり、マゼールの緻密なコントロールが行き渡っている印象があります。テンポ感とキレの良さ、安定感は流石なところ。
2楽章のアンダンテは前曲とは異なり穏やかな部分もほどほどで、鮮度の高い部分との対比をカッチリつけていきます。全体の中での2楽章の位置づけよりも、2楽章中でのメリハリを重視しているよう。ディテールに格別のこだわりをもつマゼールならではの展開でしょう。非常に聴き応えのある2楽章です。
メヌエットに入ると普通なら雰囲気が変わるのですが、前楽章と同じような拍子がつづくので、少々くどい感じを残してしまいます。テンポが近いのと、またリズムも結構重いのが原因でしょう。音楽はクリアですが、ハイドンでリズムが重いのは命取りです。
フィナーレに入っても独特のリズムの余韻が残り、普通だったら見事な吹き上がりに圧倒されるところですが、ちょっとくどい印象は変わらず。マゼール独特の節回しが災いしている感じです。
LPを聴くシリーズで取りあげたロリン・マゼールの若き日の演奏ですが、良くも悪くもマゼールの個性が感じられる演奏。オックスフォードではオケの各パートをクッキリと浮かび上がらせるマゼールの手腕が活きたのに対し、太鼓連打では、特に2楽章以降の演奏がマゼールの練るリズムでちょっと癖のある演奏という印象を残してしまいました。聴く方としてはマゼールのグロテスクな演奏も期待のうちですが、外連のキレがわるいというか、もう少し派手にやっていただきたいというのが正直なところです。評価はオックスフォードが[++++]、太鼓連打は[+++]とします。
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