レオポルド・ルートヴィヒ/バイエルン放送響のホルン信号、狩
今日はLPのレビュー。

レオポルド・ルートヴィヒ(Leopold Ludwig)指揮のバイエルン放送交響楽団の演奏によるハイドンの交響曲31番「ホルン信号」と交響曲73番「狩」の2曲を収めたLP。収録は1966年4月6日から7日にかけて、ミュンヘンのビュルガーブロイ(Bürgerbräu)というビアホールでのセッション録音。47年前のちょうど今日録音されていることになります。レーベルは独EMI。
このLPはしばらく前に中古で手に入れたものですが、状態が非常に良く、ノイズは皆無。しかも録音もゆったりして素晴らしく、音楽をゆったり楽しむのに最高のものです。
指揮のレオポルド・ルートヴィヒは、1908年チェコのオストラヴァ生まれの指揮者。1979年に亡くなっています。子供の頃からピアノとオルガンに親しみ、ウィーンでピアノと作曲を学び、1931年に指揮者としてデビュー、1939年にはウィーン国立歌劇場に登場、その後ヒトラーに重用されたようです。それもあって戦後は軍事裁判を受け、刑務所などでしばらく過ごしたのち、1951年以降ベルリン国立歌劇場などの客演指揮者や、ハンブルク州立か劇場の音楽監督を務めました。
今の時代になってレオポルド・ルートヴィヒの名前はほとんど知られていないのは戦中にヒトラー側についたからなのでしょうか。
ただ、このLPを聴く限り、穏やかでのびのびとしたハイドンの魅力を伝える演奏をする人であることは確かです。
Hob.I:31 / Symphony No.31 "Hornsignal" 「ホルン信号」 [D] (1765)
ホルンのソロはクルト・リヒター(Kurt Richter)。スピーカーのまわりにじわりと広がる音場。遅めのテンポでじっくりとした入り。ひとつひとつのフレーズをかなり丁寧にじっくりと演奏していきます。以前取りあげたトスカニーニの演奏のテンポを落とした感じ。ホルンが奥の方から響き、左にキレのいいヴァイオリン、右にチェロと鮮明に定位。テンポは一貫して遅めで、この曲のメロディーの面白さをスローモーションで見せていくがごとき展開。レトロとまではいいませんが、じつに穏やかな表情と美しい響きに思わず引き込まれます。
アダージョはヴァイオリンの控えめな表情づけから入ります。ヴァイオリンの表情豊かなソロとホルンをはじめとする金管楽器の実にゆったりした音色だけでも至福の境地。ハイドンが書いた音楽の懐の深さにじっくり浸ります。弦のピチカートも実にゆったり。ヴァリュームを上げて、静かな楽章に流れる音楽を楽しみます。ホルン信号のアダージョがこれほど豊かな音楽だったかと思い知らされるような素晴らしい演奏です。
メヌエットも実にゆったり。王様気分にさせられるほどの優雅さ。音楽をただただ楽しめと言われているような演奏。LP独特のリアリティと切れ込むような迫力に圧倒されながら、大音量でメヌエットを楽しみます。
フィナーレももちろんじっくりとした展開。テンポの変化もキレも穏やかにやり過ごし、ただじっくりと演奏するというレオポルド・ルートヴィヒのスタイルですが、各楽器が雄弁に表情をつけ、しかも極上の響きゆえ、素晴らしく聴き応えがあります。レコードが内周になっても歪み感もなく、じつに鮮明かつ穏やかな録音。これは名録音と言えるのではないかと思います。フィナーレではメロディーを様々な楽器に移していきますが、各楽器のソロがとろけるようなオケと好対照。長い終楽章があっという間に終盤になり、名残惜しさを感じさせるよう。終盤は郷愁さえ感じさせるような濃い情感。いや実に見事。
Hob.I:73 / Symphony No.73 "La Chasse" 「狩」 [D] (before 1782)
序奏は朝のはじまりのような独特の穏やかな音楽。かわらずゆったりしたテンポとゆったりした音楽がスピーカーから流れます。主題に入っても軽さは失いません。フルートの瑞々しい音色が華を添えます。弦楽器はゆったりしながらもキレはよく、リズミカルに主題を奏でていきます。やはりドラティの演奏をすこし穏やかにしたような、彫りは深いのに穏やかな演奏という感じです。ヴァイオリンの音階が自在に駆け巡る音楽ですが、以前とりあげたシュミット・ゲルテンバッハの演奏を彷彿とさせるキレ。音楽の神様降臨しそうです。
アンダンテはハイドンらしい素朴な音楽ですが、穏やかな中に素晴らしい起伏があり、部屋中にハイドンの晴朗なユーモア溢れるメロディーが充満します。LPならではの実体感ある音響が襲いかかってくるよう。
つづくメヌエットも同様。すこし休符を長くとることで音楽のスケールが大きくなります。弦セクションの存在感が際立ちます。
単独でも演奏されるフィナーレ。かなり落としたテンポで重量級の演奏。他の多くの演奏が速めのテンポで爽快感を重視した演奏でした。こちらはどっこいかなり重心の低い、迫力重視の演奏。これもありですね。オケは一流のバイエルン放送交響楽団ゆえ演奏の精度がいいせいか、じっくりした演奏の迫力で貫き通しても、かなりのインパクトがあります。最後はさらりと終わりますが、かなりの迫力を聴かせました。
やはりLPの響きはいいですね。オケのリアリティが一段上がります。まさに部屋にオーケストラがやってきた感じ。今は名も聞かなくなったレオポルド・ルートヴィヒですが、彫りの深い音楽をじっくりと練り上げてくる手腕は流石。スケール感を大きく聴かせる手腕は並のものではありません。もしかするとこのへんがヒトラーの好みに合ったのかもしれませんね。今聴くハイドンはハイドンの古典期の範囲できっちり盛り上げ、しかもタイトな響きの魅力を伝えるツボを押さえたもの。おそらくCDにはなっていないので入手は難しいかとおもいますが、これぞホルン信号と狩の名盤と言える演奏です。評価は[+++++]をつけない訳にはまいりませんね。

レオポルド・ルートヴィヒ(Leopold Ludwig)指揮のバイエルン放送交響楽団の演奏によるハイドンの交響曲31番「ホルン信号」と交響曲73番「狩」の2曲を収めたLP。収録は1966年4月6日から7日にかけて、ミュンヘンのビュルガーブロイ(Bürgerbräu)というビアホールでのセッション録音。47年前のちょうど今日録音されていることになります。レーベルは独EMI。
このLPはしばらく前に中古で手に入れたものですが、状態が非常に良く、ノイズは皆無。しかも録音もゆったりして素晴らしく、音楽をゆったり楽しむのに最高のものです。
指揮のレオポルド・ルートヴィヒは、1908年チェコのオストラヴァ生まれの指揮者。1979年に亡くなっています。子供の頃からピアノとオルガンに親しみ、ウィーンでピアノと作曲を学び、1931年に指揮者としてデビュー、1939年にはウィーン国立歌劇場に登場、その後ヒトラーに重用されたようです。それもあって戦後は軍事裁判を受け、刑務所などでしばらく過ごしたのち、1951年以降ベルリン国立歌劇場などの客演指揮者や、ハンブルク州立か劇場の音楽監督を務めました。
今の時代になってレオポルド・ルートヴィヒの名前はほとんど知られていないのは戦中にヒトラー側についたからなのでしょうか。
ただ、このLPを聴く限り、穏やかでのびのびとしたハイドンの魅力を伝える演奏をする人であることは確かです。
Hob.I:31 / Symphony No.31 "Hornsignal" 「ホルン信号」 [D] (1765)
ホルンのソロはクルト・リヒター(Kurt Richter)。スピーカーのまわりにじわりと広がる音場。遅めのテンポでじっくりとした入り。ひとつひとつのフレーズをかなり丁寧にじっくりと演奏していきます。以前取りあげたトスカニーニの演奏のテンポを落とした感じ。ホルンが奥の方から響き、左にキレのいいヴァイオリン、右にチェロと鮮明に定位。テンポは一貫して遅めで、この曲のメロディーの面白さをスローモーションで見せていくがごとき展開。レトロとまではいいませんが、じつに穏やかな表情と美しい響きに思わず引き込まれます。
アダージョはヴァイオリンの控えめな表情づけから入ります。ヴァイオリンの表情豊かなソロとホルンをはじめとする金管楽器の実にゆったりした音色だけでも至福の境地。ハイドンが書いた音楽の懐の深さにじっくり浸ります。弦のピチカートも実にゆったり。ヴァリュームを上げて、静かな楽章に流れる音楽を楽しみます。ホルン信号のアダージョがこれほど豊かな音楽だったかと思い知らされるような素晴らしい演奏です。
メヌエットも実にゆったり。王様気分にさせられるほどの優雅さ。音楽をただただ楽しめと言われているような演奏。LP独特のリアリティと切れ込むような迫力に圧倒されながら、大音量でメヌエットを楽しみます。
フィナーレももちろんじっくりとした展開。テンポの変化もキレも穏やかにやり過ごし、ただじっくりと演奏するというレオポルド・ルートヴィヒのスタイルですが、各楽器が雄弁に表情をつけ、しかも極上の響きゆえ、素晴らしく聴き応えがあります。レコードが内周になっても歪み感もなく、じつに鮮明かつ穏やかな録音。これは名録音と言えるのではないかと思います。フィナーレではメロディーを様々な楽器に移していきますが、各楽器のソロがとろけるようなオケと好対照。長い終楽章があっという間に終盤になり、名残惜しさを感じさせるよう。終盤は郷愁さえ感じさせるような濃い情感。いや実に見事。
Hob.I:73 / Symphony No.73 "La Chasse" 「狩」 [D] (before 1782)
序奏は朝のはじまりのような独特の穏やかな音楽。かわらずゆったりしたテンポとゆったりした音楽がスピーカーから流れます。主題に入っても軽さは失いません。フルートの瑞々しい音色が華を添えます。弦楽器はゆったりしながらもキレはよく、リズミカルに主題を奏でていきます。やはりドラティの演奏をすこし穏やかにしたような、彫りは深いのに穏やかな演奏という感じです。ヴァイオリンの音階が自在に駆け巡る音楽ですが、以前とりあげたシュミット・ゲルテンバッハの演奏を彷彿とさせるキレ。音楽の神様降臨しそうです。
アンダンテはハイドンらしい素朴な音楽ですが、穏やかな中に素晴らしい起伏があり、部屋中にハイドンの晴朗なユーモア溢れるメロディーが充満します。LPならではの実体感ある音響が襲いかかってくるよう。
つづくメヌエットも同様。すこし休符を長くとることで音楽のスケールが大きくなります。弦セクションの存在感が際立ちます。
単独でも演奏されるフィナーレ。かなり落としたテンポで重量級の演奏。他の多くの演奏が速めのテンポで爽快感を重視した演奏でした。こちらはどっこいかなり重心の低い、迫力重視の演奏。これもありですね。オケは一流のバイエルン放送交響楽団ゆえ演奏の精度がいいせいか、じっくりした演奏の迫力で貫き通しても、かなりのインパクトがあります。最後はさらりと終わりますが、かなりの迫力を聴かせました。
やはりLPの響きはいいですね。オケのリアリティが一段上がります。まさに部屋にオーケストラがやってきた感じ。今は名も聞かなくなったレオポルド・ルートヴィヒですが、彫りの深い音楽をじっくりと練り上げてくる手腕は流石。スケール感を大きく聴かせる手腕は並のものではありません。もしかするとこのへんがヒトラーの好みに合ったのかもしれませんね。今聴くハイドンはハイドンの古典期の範囲できっちり盛り上げ、しかもタイトな響きの魅力を伝えるツボを押さえたもの。おそらくCDにはなっていないので入手は難しいかとおもいますが、これぞホルン信号と狩の名盤と言える演奏です。評価は[+++++]をつけない訳にはまいりませんね。
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