アポニー四重奏団のOp.33のNo.5、冗談
今日はTwitterで気になる書き込みをみて、ラックから取り出したアルバム。

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(別装丁盤)/ amazon
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TOWER RECORDS(別装丁盤)
アポニー四重奏団(Appónyi-Quartett)の演奏によるハイドンの弦楽四重奏曲Op.33の6曲、通称ロシア四重奏曲集を収めたアルバム。収録は1993年5月、ドイツケルンのDLFケルン放送ホールでのセッション録音です。レーベルはドイツ、フライブルクを拠点とするARS MUSICI。
Twitterでこのアポニー四重奏団のメンバーはフライブルク・バロック・オーケストラのメンバーであると書いているのを見て、気になっていたもの。ラックから取り出してメンバーを見てビックリ。
第1ヴァイオリン:ゴッドフリート・フォン・デア・ゴルツ(Gottfried von der Goltz)
第2ヴァイオリン:ペトラ・ミューレジャン(Petra Müllejeans)
ヴィオラ:クリスティアン・グーセズ(Christian Goosses)
チェロ:グイド・ラリシュ(Guido Larisch)
フライブルク・バロック・オーケストラのメンバーということですが、チェロのグイド・ラリシュ以外はソリストとしても名の知れた人で、特にゴルツとミューレジャンはコンサートマスターとして、フライブルク・バロック・オーケストラが指揮者を置かずに演奏する際、実質的に音楽を造っている人だと思います。手元にハイドンのアルバムもあります。
Freiburger Barockorchestrer
ゴッドフリート・フォン・デア・ゴルツはヴァイオリニスト、指揮者(コンサートマスター?)として多くのアルバムを出している人。当ブログでもハイドンやモーツァルトの交響曲やヴァイオリン協奏曲などを取りあげています。
2012/06/22 : ハイドン–交響曲 : ゴットフリート・フォン・デア・ゴルツ/フライブルク・バロック・オーケストラの「受難」等
2010/09/05 : ハイドン以外のレビュー : シュタイアーのピアノ協奏曲(モーツァルト)
2010/09/05 : ハイドン–協奏曲 : シュタイアーのピアノ協奏曲
ゴルツは指揮もヴァイオリンもちょっと硬直したところがありますが、キレとテクニックは素晴らしいものがあります。
もう一人のヴァイオリンはペトラ・ミューレジャンで、彼女もフライブルク・バロック・オーケストラのコンサートマスター。レビューはしていませんが、ハイドンでは朝、昼、晩を入れたアルバム、ジャン=ギアン・ケラスがチェロを弾いてチェロ協奏曲のアルバムがあります。
そして、ヴィオラのクリスティアン・グーセズは、名曲、ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲集のアルバムがあり、こちらはレビューしています。
2012/08/12 : ハイドン–室内楽曲 : アントン・シュテック/クリスティアン・グーセズによるヴァイオリンとヴィオラのためのソナタ集
要するにメンバーは、現在も一線で活躍する、古楽器の腕利き揃いのクァルテットということです。気になるのはアポニー四重奏団として残されたアルバムは、このハイドンのロシア四重奏曲集と、ボッケリーニの弦楽四重奏曲集が見つかるくらいで、他に録音が見当たらないこと。
ライナーノーツを読んでみると、1986年に設立され、古楽器による演奏は、アンナー・ビルスマ、ラインハルト・ゲーベル、ニコラウス・アルノンクールらに影響を受けているとのこと。コンサート活動ではオランダのユトレヒト古楽音楽祭やブリュージュ・フランダース音楽祭などに出演していたようですが、それ以外のことはよくわかりません。フライブルク・バロック・オーケストラの設立も1985年とほぼ同じ頃であるということを考えると、彼らが弦楽四重奏や古楽器オケという活動をいろいろしてみた結果、オーケストラの活動の方にシフトしていったものと思われます。この1993年の録音は彼らが弦楽四重奏に挑んだ貴重な記録であると見る事もできます。
こうゆうパースペクティブで見てみると、この演奏が、フライブルク・バロック・オーケストラの演奏に共通する、硬質で先鋭的であり、時に硬直的でもある響きを通して、音楽を彫り込んでいくスタイルと近いものであるのが自然に感じられます。
今日はアルバムの中から最初の2曲を選びました。
Hob.III:41 / String Quartet Op.33 No.5 [G] (1781)
教会やホールではなくスタジオで録られているような残響が少なく直接音重視の鮮明な録音。フライブルク・バロック・オーケストラの演奏同様、インテンポでグイグイ食い込んでくるタイトな演奏。テクニックとアンサンブルの精度は抜群。古楽器独特の張りつめたテンションで鋭角的な響きが非常に高いテンションで迫ります。生で聴いたら手に汗握るであろう、迫真のアンサンブル。本来、おおらかで明るい表情のロシア四重奏曲ですが、アポニー四重奏団の演奏で聴くと、奏者のテクニックと掛け合いの妙で勝負する険しさにもスポットライトが当たります。オーケストラの曲で時折垣間見せる、硬直感はそれほど感じられず、圧倒的なプレゼンスにのまれる印象。
2楽章のラルゴでは、ハイドンの緩徐楽章できかれるユーモアやリラックス感よりも、まだ緊張感の残る演奏に聴こえます。このあたりの落ち着きが増すと音楽が深くなると思うのですが。続くスケルツォも非常にテンションが高く、一体感と各楽器のせめぎ合いによる恍惚感を感じるほどのテンション。
フィナーレに至り、ようやく力がぬけて、いい意味で流すような演奏の気楽さが加わり、音楽も豊かになります。力が抜けたところで、音楽の表情の変化が大きくなり、変奏が進むごとに変化する表情の面白さが増していきます。
Hob.III:38 / String Quartet Op.33 No.2 "The Joke" 「冗談」 [E flat] (1781)
続く名曲「冗談」も基本的なスタイルは変わりませんが、曲想からか、冒頭から少しリラックスムードで入ります。聴き進むうちにわかってきたのは、強音のところが録音のせいか、演奏のせいか、力を入れ過ぎというか混濁感があるというか、ちょっと響きが粗くなってしまうところが欠点かもしれないということです。力を抜いたところの表情にくらべて強奏部分で音楽の表情が平板になってしまうような過度な力感になっているように聴こえます。もう少し力を抑えてデリケートな表情の変化の面白さを追求するとさらに音楽の豊かさが増すのではないかと思った次第。この迫力も貴重なものだけに、違いは紙一重といったところでしょう。
2楽章のスケルツォはキレのよい前半部にユーモラスなメロディを挟んで再びキレで聴かせる楽章。古楽器特有の繊細な音色を生かしながらコンパクトにまとめます。こうしたところはキリッと引き締まって流石の出来。
続く3楽章はヴィオラとチェロの二重奏からヴァイオリンの二重奏に移る精妙な響きの魅力も流石。それぞれ腕利きの奏者だけにこうゆう部分の繊細なコントロールは秀逸ですね。
そしてフィナーレも抑えて入り、フレーズを小刻みに切りながら繰り返していく面白さは十分。コミカルな展開をささっとこなし、粋な表情を残して終わります。
腕利き揃いのアポニー四重奏団によるハイドンのロシア四重奏曲集から2曲を聴きましたが、やはりフライブルク・バロック・オーケストラと同様、かなり明確にアクセントをつけ、しかもその強音がちょっとキツいと言うか、くどさを感じさせてしまうところも同様な印象。弦楽四重奏として抑えた部分の精緻な演奏は流石と思わせるものがあり、演奏の技術的完成度の高さにくらべて、表情の硬さでちょっと損をしているように感じます。ハイドンの弦楽四重奏の面白さを表現しきれていないもどかしさも残してしまいます。評価は[++++]とします。
さて、あっという間に月末ですね。
追伸:湖国JHさんありがとうございます。届きました!

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アポニー四重奏団(Appónyi-Quartett)の演奏によるハイドンの弦楽四重奏曲Op.33の6曲、通称ロシア四重奏曲集を収めたアルバム。収録は1993年5月、ドイツケルンのDLFケルン放送ホールでのセッション録音です。レーベルはドイツ、フライブルクを拠点とするARS MUSICI。
Twitterでこのアポニー四重奏団のメンバーはフライブルク・バロック・オーケストラのメンバーであると書いているのを見て、気になっていたもの。ラックから取り出してメンバーを見てビックリ。
第1ヴァイオリン:ゴッドフリート・フォン・デア・ゴルツ(Gottfried von der Goltz)
第2ヴァイオリン:ペトラ・ミューレジャン(Petra Müllejeans)
ヴィオラ:クリスティアン・グーセズ(Christian Goosses)
チェロ:グイド・ラリシュ(Guido Larisch)
フライブルク・バロック・オーケストラのメンバーということですが、チェロのグイド・ラリシュ以外はソリストとしても名の知れた人で、特にゴルツとミューレジャンはコンサートマスターとして、フライブルク・バロック・オーケストラが指揮者を置かずに演奏する際、実質的に音楽を造っている人だと思います。手元にハイドンのアルバムもあります。
Freiburger Barockorchestrer
ゴッドフリート・フォン・デア・ゴルツはヴァイオリニスト、指揮者(コンサートマスター?)として多くのアルバムを出している人。当ブログでもハイドンやモーツァルトの交響曲やヴァイオリン協奏曲などを取りあげています。
2012/06/22 : ハイドン–交響曲 : ゴットフリート・フォン・デア・ゴルツ/フライブルク・バロック・オーケストラの「受難」等
2010/09/05 : ハイドン以外のレビュー : シュタイアーのピアノ協奏曲(モーツァルト)
2010/09/05 : ハイドン–協奏曲 : シュタイアーのピアノ協奏曲
ゴルツは指揮もヴァイオリンもちょっと硬直したところがありますが、キレとテクニックは素晴らしいものがあります。
もう一人のヴァイオリンはペトラ・ミューレジャンで、彼女もフライブルク・バロック・オーケストラのコンサートマスター。レビューはしていませんが、ハイドンでは朝、昼、晩を入れたアルバム、ジャン=ギアン・ケラスがチェロを弾いてチェロ協奏曲のアルバムがあります。
そして、ヴィオラのクリスティアン・グーセズは、名曲、ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲集のアルバムがあり、こちらはレビューしています。
2012/08/12 : ハイドン–室内楽曲 : アントン・シュテック/クリスティアン・グーセズによるヴァイオリンとヴィオラのためのソナタ集
要するにメンバーは、現在も一線で活躍する、古楽器の腕利き揃いのクァルテットということです。気になるのはアポニー四重奏団として残されたアルバムは、このハイドンのロシア四重奏曲集と、ボッケリーニの弦楽四重奏曲集が見つかるくらいで、他に録音が見当たらないこと。
ライナーノーツを読んでみると、1986年に設立され、古楽器による演奏は、アンナー・ビルスマ、ラインハルト・ゲーベル、ニコラウス・アルノンクールらに影響を受けているとのこと。コンサート活動ではオランダのユトレヒト古楽音楽祭やブリュージュ・フランダース音楽祭などに出演していたようですが、それ以外のことはよくわかりません。フライブルク・バロック・オーケストラの設立も1985年とほぼ同じ頃であるということを考えると、彼らが弦楽四重奏や古楽器オケという活動をいろいろしてみた結果、オーケストラの活動の方にシフトしていったものと思われます。この1993年の録音は彼らが弦楽四重奏に挑んだ貴重な記録であると見る事もできます。
こうゆうパースペクティブで見てみると、この演奏が、フライブルク・バロック・オーケストラの演奏に共通する、硬質で先鋭的であり、時に硬直的でもある響きを通して、音楽を彫り込んでいくスタイルと近いものであるのが自然に感じられます。
今日はアルバムの中から最初の2曲を選びました。
Hob.III:41 / String Quartet Op.33 No.5 [G] (1781)
教会やホールではなくスタジオで録られているような残響が少なく直接音重視の鮮明な録音。フライブルク・バロック・オーケストラの演奏同様、インテンポでグイグイ食い込んでくるタイトな演奏。テクニックとアンサンブルの精度は抜群。古楽器独特の張りつめたテンションで鋭角的な響きが非常に高いテンションで迫ります。生で聴いたら手に汗握るであろう、迫真のアンサンブル。本来、おおらかで明るい表情のロシア四重奏曲ですが、アポニー四重奏団の演奏で聴くと、奏者のテクニックと掛け合いの妙で勝負する険しさにもスポットライトが当たります。オーケストラの曲で時折垣間見せる、硬直感はそれほど感じられず、圧倒的なプレゼンスにのまれる印象。
2楽章のラルゴでは、ハイドンの緩徐楽章できかれるユーモアやリラックス感よりも、まだ緊張感の残る演奏に聴こえます。このあたりの落ち着きが増すと音楽が深くなると思うのですが。続くスケルツォも非常にテンションが高く、一体感と各楽器のせめぎ合いによる恍惚感を感じるほどのテンション。
フィナーレに至り、ようやく力がぬけて、いい意味で流すような演奏の気楽さが加わり、音楽も豊かになります。力が抜けたところで、音楽の表情の変化が大きくなり、変奏が進むごとに変化する表情の面白さが増していきます。
Hob.III:38 / String Quartet Op.33 No.2 "The Joke" 「冗談」 [E flat] (1781)
続く名曲「冗談」も基本的なスタイルは変わりませんが、曲想からか、冒頭から少しリラックスムードで入ります。聴き進むうちにわかってきたのは、強音のところが録音のせいか、演奏のせいか、力を入れ過ぎというか混濁感があるというか、ちょっと響きが粗くなってしまうところが欠点かもしれないということです。力を抜いたところの表情にくらべて強奏部分で音楽の表情が平板になってしまうような過度な力感になっているように聴こえます。もう少し力を抑えてデリケートな表情の変化の面白さを追求するとさらに音楽の豊かさが増すのではないかと思った次第。この迫力も貴重なものだけに、違いは紙一重といったところでしょう。
2楽章のスケルツォはキレのよい前半部にユーモラスなメロディを挟んで再びキレで聴かせる楽章。古楽器特有の繊細な音色を生かしながらコンパクトにまとめます。こうしたところはキリッと引き締まって流石の出来。
続く3楽章はヴィオラとチェロの二重奏からヴァイオリンの二重奏に移る精妙な響きの魅力も流石。それぞれ腕利きの奏者だけにこうゆう部分の繊細なコントロールは秀逸ですね。
そしてフィナーレも抑えて入り、フレーズを小刻みに切りながら繰り返していく面白さは十分。コミカルな展開をささっとこなし、粋な表情を残して終わります。
腕利き揃いのアポニー四重奏団によるハイドンのロシア四重奏曲集から2曲を聴きましたが、やはりフライブルク・バロック・オーケストラと同様、かなり明確にアクセントをつけ、しかもその強音がちょっとキツいと言うか、くどさを感じさせてしまうところも同様な印象。弦楽四重奏として抑えた部分の精緻な演奏は流石と思わせるものがあり、演奏の技術的完成度の高さにくらべて、表情の硬さでちょっと損をしているように感じます。ハイドンの弦楽四重奏の面白さを表現しきれていないもどかしさも残してしまいます。評価は[++++]とします。
さて、あっという間に月末ですね。
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