作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

モーリス・アンドレ4種目のトランペット協奏曲

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以前Morleyさんから、未入手盤の情報をメールで戴いていたもの。

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HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

モーリス・アンドレ(Maurice André)のトランペット、テオドール・グシュルバウアー(Theodor Guschlbauer)指揮のバンベルク交響楽団(Orchestre Symphonique de Bamberg)の演奏で、ハイドンのトランペット協奏曲などをおさめたアルバム。他にアンドレのソロで、ハイドン作とされていたオーボエ協奏曲のトランペット版、レオポルド・モーツァルトのトランペット協奏曲、モーツァルトのオーボエ協奏曲をトランペットで吹いたものが収められています。ハイドンのトランペット協奏曲の収録は1971年とだけ記載されています。バンベルク交響楽団の当時の本拠地でのセッション録音でしょうか。レーベルはERATOのなつかしいBONSAIコレクション。

モーリス・アンドレのERATOレーベルに入れたトランペット協奏曲のアルバムは、ながらくパイヤールと入れたものしかないと思っていたところ、ブログの読者のかたよりメールをいただき、このグシュルバウアー盤がある事を教えていただきました。いやいや、先入観とは恐ろしいものです。ERATOのトランペット協奏曲はパイヤール盤とばかり思い込んでいました。

これで4種目のモーリス・アンドレのトランペット協奏曲。これまでに他の3種は取りあげています。

2012/06/09 : ハイドン–協奏曲 : モーリス・アンドレ/ミュンヘン室内管のトランペット協奏曲
2012/02/28 : ハイドン–協奏曲 : 【追悼】モーリス・アンドレ/パイヤールのトランペット協奏曲
2010/11/05 : ハイドン–協奏曲 : モーリス・アンドレのトランペット協奏曲

年代的には60年代のパイヤール盤、66年のシュタットルマイヤー盤、そして今日取り上げる71年のグシュルバウアー盤、そして84年のムーティ盤となるわけですが、これまでに取りあげた中では66年のDGのシュタットルマイアー盤の演奏が最も聴き応えがあり、最近の録音であるアンドレ51歳の時のムーティ盤では、一歩引いて指揮者を引き立たせる大人の演奏を聴かせていました。この71年のアンドレ38歳の時のグシュルバウアー盤がアンドレの全盛期演奏とも期待できます。

Hob.VIIe:1 / Concerto per il clarino [E flat] (1796)
オケの音質はすこし古びた響きながら、序奏から突き抜けるようなトランペットの音色が耳をつんざきます。なにやら鬼気迫る迫力を感じます。ソロの入りは抑えていながらもエネルギーがわき出してくる感じ。なによりグシュルバウアーのコントロールするオケが殺気を感じるほどの集中力。冒頭からトランペットとオケのエネルギーのぶつかり合いのような演奏。アンドレならではパワーの乗った輝かしい音色。すこし荒々しくもある迫力満点の演奏。音量を上げて聴くとエネルギーが突進してくるよう。グシュルバウアーは伴奏に徹する気など微塵もなく、アンドレのエネルギーに真っ向勝負を挑むよう。ザクザク切り込んで見事な戦い。ただし、カデンツァに至ると勝負あり。カデンツァのアンドレは余人をよせつけない孤高の吹き上がり、輝き、エネルギーの噴出。全盛期のアンドレの迫力に鳥肌が立ちます。
2楽章のアンダンテ・カンタービレは、ビロードのように柔らかな表情に変わったオケの伴奏にのって、アンドレのトランペットも柔らかで伸びの良い見事な音色を響かせます。所々で異次元の伸びのある見事なトーンを織り交ぜながらも、トランペットという楽器のもつ柔らかな音色をこれでもかと聴かせます。
フィナーレは再びエネルギーのぶつかり合いの予感。グシュルバウアーは神々しい神殿のような建築的な入り。アンドレは余裕たっぷりにトランペットの音を乗せていきます。ぶつかり合いではなくエネルギーが渾然一体となった素晴らしい音楽。トランペットのソロは、そこここにアクセントをつけてアンドレらしい王道のフレージング。徐々に輝かしさとエネルギーを増してクライマックスへ。オケは非常にエネルギッシュながらもようやく落ち着いて伴奏に徹するようになります。最後はトランペットとオケの風圧を感じるような素晴らしいフィニッシュ。

いやいや、参りました。間違いなくこのアルバムがアンドレの代表盤です。わたしが聴いた順番がかなり特殊なものだったのだろうと思います。モーリス・アンドレがなぜこれほどまでに大きな存在だったのか、このアルバムを聴いてようやく合点がいきました。チェロにおけるカザルス、ギターのセゴビアのような存在と言えばいいでしょうか。楽器の限界の中で音楽を創っている多くの奏者とは異なり、楽器の枠を超える大きな音楽をつくって、楽器の魅力の次元を高めるまでの存在です。ハイドンのトランペット協奏曲でもありますが、アンドレの音楽でもあります。やはり、モーリス・アンドレは偉大な人でした。評価はもちろん[+++++]とします。

アンドレさん、昨年2月に亡くなられました。あらためて追悼を。一度コンサートでこの弩迫力に打ちのめされたかった、、、

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8 Comments

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小鳥遊

アンドレのハイドンは4枚もあるのかぁ。

私は、ヘッドフォンで音楽を聴くのもあって、トランペット協奏曲は、どうも苦手です。

曲は好きなんだけど、トランペットが煩い。

アンドレは、一枚だけ持っていて、エラートだからやっぱりパイヤールだろうとばかり思っていたら、案の定(?)違っていて、こちらの盤でした。

パイヤールって、凄い人ってイメージは微塵もないのだけど、実は凄い存在感がある人なんですね(笑)

Daisy

Re: タイトルなし

小鳥遊さん、こんばんは。
早速コメントありがとうございます。音楽は聴く装置によっても感じ方が変わりますよね。私はかなり以前、父親のステレオで音楽を聴いていたときは、古楽器の音楽がかなり刺激音になるので苦手でしたが、いまのうちの装置では鮮明ですが実に心地良く響くので、かえって好きになりました。以前、ハンス・ガンシュのソロでトランペット協奏曲を生で聴いたときは、最前列だったこともあって、その脳天直撃のエネルギーに痺れました。
こればかりは相性でしょう。
わたしはパイヤールはモーツァルトのフルートとハープのための協奏曲のかなり典雅なイメージがありますが、それほど多くの演奏を聴いている訳ではないので、まだまだ鮮明なイメージはありません。もう少し利いてみなくてはとは思ってます。

  • 2013/03/27 (Wed) 23:25
  • REPLY

michael

No title

こんばんは
私もこのグシュルバウアーとの録音はLP盤で過去に持っていました。B面には協奏交響曲(105番)が入っていました。たしかにアンドレ充実期でソロもオケもエネルギッシュだった記憶です。これも再び聴いてみたいです。

Daisy

Re: No title

michaelさん、こんばんは。
いつもブログ楽しく拝見させていただいています。このアルバム、LPだとさらに迫力がありそうですね。昔聴いたアルバムで、手放してしまったものは、結構名残惜しかったりしますね。わたしもいくつかあります。
意外と見直したのはグシュルバウアー。ここまで踏み込んでくる人とは思っていませんでした。

  • 2013/03/28 (Thu) 22:43
  • REPLY

通りがかりのハイドン

No title

アンドレのハイドンのコンチェルト
1988 López-Cobos
1996 Janos Rolla
もありますね。

Daisy

Re: No title

コメントありがとうございます。

4種ばかりかと思っていましたが、まだありましたね。84年のムーティ盤以降も録音があったわけですね。これは探してきいてみたくなりました。

  • 2013/03/31 (Sun) 00:00
  • REPLY

通りがかりのハイドン

No title

これもなかなか。。。
1975年モーリスアンドレ来日時のハイドンのコンチェルト。
大フィル1975.4.9ライブ録音です。

http://www.youtube.com/watch?v=X081YhO1gSc

Daisy

Re: No title

コメントありがとうございます。
流石にモーリス・アンドレともなると、いろいろ録音がありますね。

  • 2013/04/01 (Mon) 07:29
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