作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

アウリン四重奏団の「五度」「皇帝」

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このところ弦楽四重奏曲のいい演奏を聴いて、ますます弦楽四重奏曲の魅力に取り憑かれています。今日は少しずつ収集を続けているこちら。スポーツクラブでひと泳ぎしてかえってくるとamazonから到着していました。

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HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

アウリン四重奏団(Auryn Quartet)の演奏による、ハイドンの弦楽四重奏曲Op.76の6曲を収めたアルバム。収録は2009年、ドイツ、ケルンの東20kmほどにある街ホンラートにあるホンラート教会でのセッション録音。レーベルはドイツのTACET。

アウリン四重奏団の弾くハイドンの弦楽四重奏曲は非常に気に入っているのですが、アルバムはすべてバラで、レギュラープライスということで、全14巻のうち手元にあるのはまだ6巻。すこしずつ買い集めていては楽しんでいます。これまで2度取りあげていますので、いつものように記事へのリンクを貼っておきましょう。

2012/08/03 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : アウリン四重奏団のOp.77
2012/01/07 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : アウリン四重奏団のOp.74

演奏者の紹介などはOp.74の記事の方をご参照ください。

TACETのこのシリーズはアウリン四重奏団の伸び伸びとした透明感のある演奏を極上の録音で録られた非常に完成度の高いシリーズ。アウリン四重奏団は一貫して安定感のある演奏ですが、曲ごとに微妙に演奏スタイルを変えてくることもあり、今日とりあげるキラ星のごときハイドンの最高傑作がどう響くか、コンサートの開演前のような気持ちにさせられます。Op.76という全曲名曲揃いの作品ですが、今日は中でも皆さんにおなじみのNo.2の「五度」とNo.3の「皇帝」を取りあげましょう。

Hob.III:76 / String Quartet Op.76 No.2 "Quintenquartetett" 「五度」 [d] (1797)
やはり録音の素晴らしさが際立ちます。いきなり広い空間にクッキリと4人が定位する見事なもの。非常にキレのいいクァルテットの響きが部屋に出現します。演奏の方も一人一人の奏者がクッキリとメロディーラインを描き、特に第1ヴァイオリンのマティアス・リンゲンフェルダーの糸を引くような伸びのあるクリアな音色がアンサンブルの響きを華やかにしています。短調の入りはクリアに畳み掛けるようにグイグイ入ってきますが、洗練された印象を与えるのがアウリンの特徴でしょう。4人の演奏がそれぞれ分離して聴こえるのに見事にアンサンブルがそろっていて、お互いに響きを確認しあっているのがわかるような素晴らしい掛け合い。
2楽章のアンダンテはそれぞれの奏者が抑えた表現ながら、さらに響きが深くなります。ピチカートが教会内に響く余韻の美しいこと。途中のアクセント以外の部分はかなり抑えて、自身の演奏の余韻を楽しんでいるような余裕のある演奏。
非常に強い印象の残るハイドンとしては珍しいメヌエット。アウリン四重奏団は強さばかりではなくかなり大胆な音量変化をつけて繊細さも聴かせところとばかりに音量を落とすところしっかり落とす事でクッキリとしたメリハリをつけていきます。
フィナーレは鋭く疾走するような演奏。ヴァイオリンの細身ではありながらもクッキリとした音色が全体の響きに隈取りをつけて、鮮明さを保ちながら、劇的に畳み掛けるので、激しさばかりではなく、どこか都会的な洗練を感じさせます。最後にすこし溜めて曲の終わりを演出します。

Hob.III:77 / String Quartet Op.76 No.3 "Kaiserquartetett" 「皇帝」 [C] (1797)
入りの前の呼吸が鮮明に録られてまるでライヴのような緊張感。前曲より演奏自体がリラックスしているのか、活き活きとした、ノリのよい演奏に聴こえます。奏者も脂が乗って弓さばきに勢いがあります。録音前にワインでも引っ掛けたのでしょうか(笑) もともとクッキリしているヴァイオリンに対し、ヴィオラとチェロが前曲以上のプレゼンスで音を乗せていってます。録音は基本的に前曲とそろっていますが、演奏のノリが良いのでよりライヴに近いバランスに聴こえます。具体的には残響が少し増えて、華やいだ感じが強まってます。この楽章、弦楽四重奏の表現としては力感に溢れ、強い響きと精妙な響きの間を繰り返し往復しながら感興が渦巻いて高まるような名演です。
ドイツ国歌のメロディーとして知られる2楽章は、前楽章の興奮を鎮めるように、抑えてはじまりますが、いつものクリアな感じより少し叙情的な面が強くなっています。変奏は各楽器が雄弁になり、鳴きも少し入ります。ガラス細工のような光り輝く繊細さと、叙情的なフレージングが相俟ってえも言われぬ美しさ。
メヌエットは再びアウリン四重奏団特有の洗練されたクリアさが戻ります。静寂を切り裂くように入る鋭さ、鮮明なリズム、各楽器の自在な表現とまさにアウリンならではの響き。
フィナーレはここぞとばかりに切り込むようにはじまります。凄まじい集中力と響きの凝縮力。ともすると単調さをはらみそうなフィナーレの強奏ですが、フレーズごとの表情付けがうまく、また快速の音階と強音のバランスが良いせいか、非常に変化と緊張感の富んだ素晴らしいフィナーレになっています。最後は凄まじいエネルギーを放出して終了。

お気に入りのアウリン四重奏団の「五度」と「皇帝」は、やはり期待した以上の素晴らしい演奏でした。鋭さ、強さにしなやかさ、繊細さを兼ね備えた演奏。そしてまるでライヴかと思わせるすばらしい緊張感。ハイドンの弦楽四重奏曲を聴く楽しみ、悦びを満喫できる名演奏と言うべきでしょう。そして極上の録音もこのアルバムの価値を高めています。もしかしたらそのうちセットで発売されるかもしれませんが、それまで収集を思いとどまることはできませんので、継続して収集いたします。もちろん評価は[+++++]とします。

このアルバム、出だしのOp.76のNo.1もアウリンらしい名演。もしかしたら録音面ではNo.1が弦楽四重奏曲の面白さが伝わるかもしれません。各楽器が次々にメロディーを重ねていく部分など、絶品の録音です。

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2 Comments

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小鳥遊

アウリンのハイドンは苦手だったのですが、作品50を聴いて、大分、イメージが変わりました。

作品76も、曲が立派だから聴かせますよね。

CPOに録れたシューベルトの質感がどうしても忘れられないのですが、TACETの優秀録音にも、やっと慣れたという感じです。

Daisy

Re: タイトルなし

小鳥遊さん、こんばんは。
アウリンの作品50はまだ未聴ですが、聴いた他の曲の出来からすると良い演奏だとは想像がつきます。シューベルトの方はCPOとTACETの両方のレーベルに録音があるのですね。そのコメントからするとCPOの新盤の方が自然な録音と言う感触でしょうか。ちょっと気になります(笑)

  • 2013/02/25 (Mon) 21:43
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