作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

コダーイ四重奏団のOp.20のNo.4からNo.6

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まだまだ弦楽四重奏曲がつづきます。

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コダーイ四重奏団(Kodály Quartet)の演奏でハイドンの弦楽四重奏曲Op.20のNo.4、No.5、No.6の3曲を収めたアルバム。収録は1992年6月26日から29日、ブダペストにあるユニタリアン教会でのセッション録音。レーベルは廉価盤中興の祖NAXOS。

今手に入れるなら、このアルバムを含むハイドンの弦楽四重奏曲全集の方でしょうか。

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皆様良くご存知の廉価盤レーベルNAXOSのハイドンの弦楽四重奏曲全集を担当するコダーイ四重奏団。廉価盤レーベルだから、そこそこの演奏のものだろうという風に思われがちですが、このコダーイ四重奏団の演奏するハイドンの弦楽四重奏曲、これがかなりいい演奏なんですね。安定した表現力と鮮明な響きは滅多に聴かれないレベルの演奏です。コダーイ四重奏団の演奏は以前に一度だけ取りあげたことがあります。演奏者の紹介などはこちらをご覧ください。

2011/10/23 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : コダーイ四重奏団のOp.74

このところいろいろ弦楽四重奏曲を聴いてきて、原点に戻るためにオーソドックスな演奏を聴きたくなって取り出したアルバム。やはりコダーイのハイドンは安心して身を任せられる定番の演奏です。

Hob.III:34 / String Quartet Op.20 No.4 [D] (1772)
ゆったりとしたテンポながら、クッキリとメリハリのついた安定感抜群の入り。録音も適度な残響と適度な距離感のバランスの良いもの。コダーイ四重奏団の特徴は4人の音色とフレージングがピタリと合った一体感。4人とも良く磨かれた美しい音色。ことさらアクセントを強調することなどなく、ハイドンの書いた楽譜に忠実に音をおいていくような演奏。演奏からじわりとにじみ出る音楽。
2楽章に入ると、シュトルム・ウント・ドラング期特有の憂いに満ちたメロディを切々と奏でていきます。ただただハイドンの書いた音楽をしっとりと奏でていくことで立ちのぼる情感。ゆったりとした語り口が音楽の表情を深くしていきます。ゆったりゆったり美しいメロディを引き継いでいきます。奏者全員が神憑ったような表現領域に入ってます。この楽章の美しさは言葉にすることができないほど。
3楽章はジプシー風メヌエット。前楽章の祈りのような深みを断ち切るように、明るいフレーズをリズミカルに刻みます。
フィナーレは力む事なく、軽々と転がるようにメロディーを流します。迫力を増す方向ではなく、そよ風が吹き抜けるような爽やかを残すような表現。4人のテクニックが確かだからこそできるこの軽さの表現でしょう。1曲目から記憶に残る演奏を遥かに上回るすばらしさ。こちらの耳が肥えたのでしょうか。

Hob.III:35 / String Quartet Op.20 No.5 [f] (1772)
短調の入りは、流麗そのもの。前曲が比較的遅めのテンポでじっくり聴かせたのに対して、この曲ではテンポは標準的ですが、力が抜けた流麗な弓さばきと枯淡の境地ともいえる、さっぱり爽やかな印象はコダーイならでは。各楽器が奏でるメロディーの織りなす綾の色彩感が素晴らしいですね。絹の織物が光を浴びて様々に輝く様子を見るよう。しなやかな光沢と絶妙な手触り、そして洗練された感じ。老練というより大人の演奏という印象。もとから行書体のような演奏ですが、徐々に書体が崩れ最後は草書体のような音楽。
2楽章のメヌエットは大きな流れの単位で音楽をつくっているよう。前曲のようにリズムを強調するのではなく、短調の切々とした感じをベースに、コダーイ流のあっさりとした流麗な響き。
つづくアダージョは、しっとりと心に響く演奏。ゆったりと力をぬいたフレーズから慈しみ深い音楽がにじみ出てくるよう。コダーイ四重奏団の表現力に今更ながら打たれます。
フィナーレは切々としたフーガ。ここまでしなやかにかつあっさりとしながらも、4人の弦からは豊かな表情の音楽が沸き上がる素晴らしい演奏。最後のフーガも一体感ある力の抜けた完璧なアンサンブルで締めくくります。

Hob.III:36 / String Quartet Op.20 No.6 [A] (1772)
コミカルなメロディーから入るこの曲も、それぞれの奏者がかわるがわる主導権をとりながら音楽をつくっていきます。こうした曲調の曲では絶妙の軽さとしなやかさでハイドンのユーモラスな創意を引き立てます。コダーイ四重奏団の奏でる旋律は自然と音楽が滲み出すように、弾くフレーズそれぞれが実に自然なもの。力みという言葉の当てはまるところは皆無。
この曲のアダージョは実に楽しげなメロディーに溢れています。ヴァイオリンの抜けるような高音の美しさも、非常に力が抜けて、演奏を楽しんでいるよう。非常に美しい音色ですが、意図した美音というより、自然に磨かれた表情と言った方がいいかもしれません。このアルバムのアダージョ楽章はどれもほれぼれするよう出来。この境地を何と例えたらいいでしょうか。
メヌエットはリズムを強調するタイプ。メヌエットも曲に合わせてかなり演奏スタイルを変えてきていますが、曲の流れのなかにある意図を汲んでの事でしょう。ここでは珍しくクッキリととエッジを立ててシャープな表情。
そして最後のフーガは入りからメロディーの交錯を予想させるようにきっちりとコントロールされたアンサンブル。これまでとスタイルを変えて、フーガの複雑な響きをクッキリ表現するために、敢えてクッキリした表情付けをするあたり、かなりのセンスですね。最後は4人がピタリと合わせて終わります。

久々に取り出して聴いたコダーイ四重奏団のハイドン。あらためてこのアルバムの出来はコダーイ四重奏団の音楽性の高さを物語る素晴らしさです。4人それぞれがざっくりと音楽を創っているのに、アンサンブルはピタリとあって、実に慈しみ深い音楽が湧き出てきます。長年ハイドンの弦楽四重奏曲を弾いているからこその円熟の音楽と言っていいでしょう。やはりコダーイ四重奏団のハイドンは素晴らしかったと再認識。1曲1曲聴かせどころがちゃんとあり、弦楽器の美しい響きを堪能できる素晴らしい録音。オススメです。評価はもちろん3曲とも[+++++]とします。

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2 Comments

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michael

No title

こんばんは
コダーイSQのハイドンは数枚もっていますが、耳心地のよい音づくりで、モダンSQでは最も気に行っています。全集を狙うならベストですかね。
今、ちょっと脱線して、ボッケリーニの室内楽にはまっていますが、ハイドンSQもそろそろと考えています。

Daisy

Re: No title

michaelさん、おはようございます。
確かに現代楽器の全集としてはベストかもしれません。以前は割と均質な演奏と聴こえる部分もありましたが、あらためてレビューで取りあげて聴いてみると、素晴らしい深みももっていることがわかりました。
michaelさんのブログも興味深く拝見させていただいております。ハイドンの集中レビューもさることながら、最近のLPの記事も面白いですね。LPはいいんですよね。

  • 2013/02/24 (Sun) 10:03
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