作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

カレル・アンチェル/オランダ放送フィルの「ロンドン」ライヴ

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Twitterで気になるつぶやきをみつけて、アンチェルのアルバムを久しぶりに取り出しました。

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カレル・アンチェル(Karel Ančerl)指揮のオランダ放送フィルハーモニー管弦楽団(Netherlands Radio Philharmonic Orchestra)の演奏で、ハイドンの交響曲104番「ロンドン」などを収めたアルバム。ハイドンの収録は、1970年7月6日、アムステルダム・コンセルトヘボウでのライヴ。レーベルは仏TAHRA。

気になるつぶやきとは、宇都宮のAujancoolさんが、THARAのアンチェルのロンドンの演奏について「まるでりんごをガブリッと齧ったときの新鮮さと沸き立つ香りの嵐」との書き込み。私のアカウントでリツイートしていますので、ご確認ください。

そもそも当ブログでは同じくTAHRAのカレル・アンチェルの93番を以前に取りあげ、その鋼のような引き締まりまくった音楽にいたく感銘した覚えがあります。

2010/06/13 : ハイドン–交響曲 : 剛演、アンチェルの93番

そのアンチェルのロンドンの演奏からりんごを齧った時の新鮮な香りが感じるとの鋭い感覚、確かめてみたくなるというものです。

このアルバム、Karel ANCERL "Encores"というタイトルで、ライナーノーツによればアンチェルの未発表録音集としてTAHRAのカレル・アンチェルシリーズの7番目のリリースとのこと。2枚組CDで、他に1969年アムステルダム・コンセルトヘボウとのブラームスの2番、1959年チェコフィルとのスメタナ「わが祖国」から3曲と「売られた花嫁」序曲、1966年チェコフィルとのヴォジーシェクの交響曲など、何れも未発表のライヴばかりが収められた貴重なもの。中古以外での入手は難しそうです。

カレル・アンチェルは、1908年チェコ南部、南ボヘミアののトゥチャピ(Tučapy)と言う街に生まれた指揮者。プラハ音楽院に入り作曲を学びましたが、学生時代にワルターと出会い、才能を認められて指揮者を志すように。その後、ヘルマン・シェルヘンのアシスタントを経て、プラハ解放劇場の伴奏指揮者となり、またチェコフィルを振っていたヴァーツラフ・ターリヒのマスタークラスを受講して腕を磨きました。1933年にはプラハ交響楽団の音楽監督に就任しますが、父がユダヤ人だったアンチェルは1939年チェコがナチス・ドイツの支配下となるとプラハ交響楽団の音楽監督の地位を奪われ、また家族共々収容所に送られ、アンチェル以外の家族は虐殺されてしまったとのこと。
戦後になって楽壇に復帰すると、1945年からプラハ歌劇場の指揮者、1947年からチェコ放送交響楽団の指揮者、1950年にはクーベリックの後任としてチェコ・フィルハーモニー管弦楽団の常任指揮者に就任します。低迷していたチェコフィルを見事立て直してターリヒ時代の栄光をとりもどしたと伝えられています。1959年にチェコフィルと来日、また1969年にアメリカへの演奏旅行中にチェコ事件がおこり、そのまま亡命、翌1969年から小沢征爾の後任としてカナダのトロント交響楽団の常任指揮者となるも、4年後の1973年に65歳で亡くなったという事です。

この前取りあげたゲオルク・ティントナー同様、数奇な運命に翻弄された人ですね。今日とりあげるロンドンの演奏は1970年の収録ゆえ、亡命直後で、亡くなる3年前の録音という事です。

Hob.I:104 / Symphony No.104 "London" 「ロンドン」 [D] (1795)
拍手から始まります。かなり賑やかな会場ノイズが臨場感たっぷり。ロンドンの有名な序奏の入りは険しく彫刻的、マッシヴなもの。場内のざわめきがサーっと引いて、アンチェルの奏でる音楽に集中します。主題に入るとかなりテンポ良く、爽やかなフレージング。グイグイすすめていくのが痛快。かなりの早さで煽っているようで、オケがついていき損ないそうになる場面もありますが、かまわずグイグイ行きます。素晴らしい推進力と高揚感。1楽章からエネルギー炸裂。豪速球投手が1回から全力投球している感じ。津田か小松の快投を見るよう(古いか)
アンダンテは一転、抑えて冷静な表現の演奏。上手く対比をつけて楽章間のメリハリがクッキリつきます。中間部の盛り上がりも、すこし余力を残して落ち着いた表現。細かいところにあまりこだわりはなさそうで、オケも気持ちよく鳴らしている感じです。
つづくメヌエットはちょっと予想と異なり、かなり溜めたフレージング。楽章間の変化が実に効果的。特にこのメヌエットはかなりじっくりと落ち着き、1楽章の入りの火照りを鎮めているように感じます。
フィナーレは期待通り、冒頭から少し経つとギアチェンジして1楽章同様、グイグイすすむように煽りが入ります。唸る低音弦とキレまくるヴァイオリン、そして全楽器がおくれてはなるまいという事で団員が髪を振り乱してついてくるようすが見えるよう。最後まで熱い演奏でした。

悲劇の人、カレル・アンチェルがコンセルトヘボウでオランダ放送フィルを振った「ロンドン」のライヴ、ハイドンの最後の交響曲に込められたエネルギーを見事に音楽に乗せた演奏でした。録音はちょっと鮮明度に難ありですが、それほど悪くありません。Aujancoolさんの「まるでりんごをガブリッと齧ったときの新鮮さと沸き立つ香りの嵐」とは、アンチェルが醸し出す、細かいところではなく音楽の鮮度を引き出すような直裁な表現をりんごを齧ったときのサクッとした感触と、新鮮な歯ごたえに例えたものと理解できました。丁寧に磨き込んだ音楽ではなく、素材そのものの良さを引き出すアンチェルの技をうまく言い当てたものでしょう。評価は[+++++]と行きたいところですが、以前取りあげた93番の恐ろしいまでにキレた演奏と比較すると、ちょい落としてということになり、[++++]としたいと思います。

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2 Comments

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小鳥遊

アンチェルにロンドンの録音があるんですね。

いつも、その情報網と収集量には脱帽しています。

私は、ここしかマークしてないから(笑)

Daisy

Re: タイトルなし

小鳥遊さん、こんばんは。
情報網というより、ハイドンに分野を絞って地道にコツコツやっているだけです。大いなる主観のもと、かなり勝手にやっておりますので、どうか過信なさらぬよう。視点が異なれば評価も変わります。
>私は、ここしかマークしてないから(笑)
殺し文句として受け取っておきます(笑) 末永くよろしくお願いいたします。

  • 2013/02/14 (Thu) 23:26
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