作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ルートヴィヒ・ギュトラー/ヴィルトゥオージ・サクソニアのトランペット協奏曲

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またまた、ジャケットから霊感を得たアルバム。

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HMV ONLINEicon(別装丁盤) / amazon

ルートヴィヒ・ギュトラー(Ludwig Güttler)のトランペットと指揮、ヴィルトゥオージ・サクソニア(Virtuosi Saxoniae)の演奏によるハイドンのトランペット協奏曲他、有名作曲家のトランペット協奏曲を収めたアルバム。収録は1992年3月9日から10日にかけて、ドレスデンのルーカス教会スタジオ。レーベルはBERLIN Classics。

このアルバムもちょっと怪しい妖気が出ています。アインシュタインというか、マリオというか、愛嬌のありそうなトランペット奏者がはにかんでポーズきめている写真をあしらったジャケット。前記事のマルク・デストリュベのアルバム同様、ちょっといい演奏の予感がするということで手に入れたアルバム。

まずは演奏者の情報を確認してみました。ルートヴィヒ・ギュトラーは1943年、旧東ドイツドレスデンの西に位置するソーサ(Sosa)生まれのトランペット奏者、指揮者。バロック・トランペット、ピッコロ・トランペット、コルノ・ダ・カッチャ(フレンチホルンの先祖)などを得意としているよう。ライプツィヒ音楽大学を卒業後、ヘンデル・フェスティバル管弦楽団の首席トランペット奏者を4年、ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団の首席トランペット奏者を11年にわたり務めました。その後ドレスデンのカール・マリア・フォン・ウェーバー音楽学校の教授職に1990年までありました。教える立場としてはワイマールで開催された国際音楽セミナーの客員教授をつとめたり、国際コンクールの審査員についたり、日本やオーストリアなどでも教えたことがあるようです。
トランペット奏者としてはもちろん、コルノ・ダ・カッチャの奏者としても世界的に評価が高く、またライプツィヒ・バッハ・コレギウムの音楽監督しても活躍しました。1986年、このアルバムの演奏を担当するヴィルトゥオージ・サクソニアを設立し、レパートリーは18世紀のドレスデンの輝かしい時代の音楽にフォーカスしています。

このアルバム、じつは3枚のアルバムを紙ケースに入れたセットものでした。今日紹介するアルバムはもちろんハイドンのトランペット協奏曲が入っているからに他なりませんが、他にはテレマン、レオポルド・モーツァルト、ヴィヴァルディ、ヘンデルなどの曲が収められており、特にピッコロトランペットが活躍する曲が多いよう。聴くと抜群の安定感による超絶技巧が聴かれます。

もちろん、レビューはハイドンのみです(笑)

Hob.VIIe:1 / Concerto per il clarino [E flat] (1796)
若干速めのテンポで入ります。オケの響きは鮮明で、この祝祭感溢れる曲の高揚した雰囲気を上手く伝えています。録音は自然で非常にいいです。ギュトラーのトランペットは滑らかそのもの。速めのテンポでコロコロ転がるように吹き抜いていきます。インテンポでどんどん攻めていく感じ。ピッコロトランペットの超絶技巧の曲がいくつか入っているのでその延長のような雰囲気が漂います。オケもかなりの腕利き揃いとみました。ヴァイオリンの刻む音階のキレの良さは素晴らしいものがあります。ハイドンのトランペット協奏曲の1楽章としては最も爽やかな演奏でしょう。カデンツァは有り余るテクニックでさらりと難しい音階を披露。とくに高音の伸びは天上に届きそうなほどの上昇感。ヘンデルやテレマンなどの時代の曲のような雰囲気もあります。
2楽章のアンダンテは、流石にゆったりしたテンポに変わります。ギュトラーのトランペットの安定感は変わらず。輝かしいくまた柔らかさもある音色で、しっとりとしたこの楽章の美しいメロディーを奏でていきます。デリケートなニュアンスもあり、非常に味わい深い演奏。
予想通りフィナーレも速いテンポで入ります。トランペットもオケも速いパッセージの対応力は抜群、かなり速い音階をこともなげに吹いていきます。途中でかなりアクロバティックな装飾音をはさみ、テクニックを見せつけます。なぜかまったく嫌みな感じはせず、純粋に素晴らしいテクニックに酔いしれます。この爽快感はちょっと普通の演奏では味わえません。最後も疾風のように吹き抜けます。

ルートヴィヒ・ギュトラーという旧東独圏のトランペット奏者のハイドンのトランペット協奏曲は、まさに有り余るテクニックでさらりとハイドンの曲をこなした疾風のような演奏でした。テクニックではモーリス・アンドレやアドルフ・ハーセスを超えるのではないかと思います。この音階のキレと安定感は次元の異なるもの。この演奏がハイドンのトランペット協奏曲の理想的なものかと問われれば、そうではないと答えざるをえませんが、この演奏がハイドンのトランペット協奏曲の魅力的な演奏である事は間違いありません。おそらく奏者はハイドンの曲の真髄に迫ろうということよりも、ハイドンの曲をどう美しく聴かせようかと考えての演奏のように聴こえます。祝祭感溢れるハイドンの名曲の最も素朴な魅力かもしれませんね。評価は[+++++]とします。

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