カール・リステンパルトの驚愕、軍隊、時計(ハイドン)

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カール・リステンパルト(Karl Ristenpart)指揮のザール室内管弦楽団(Orchestre de Chambre de la Sarre)の演奏によるハイドンの交響曲94番「驚愕」、100番「軍隊」、101番「時計」の有名曲3曲を収めたアルバム。収録は1966年9月23日から26日、現ドイツのザールブリュッケンの北西、ザールイ(Saarlouis)の近くのフラウラウターン(Fraulautern)でのセッション録音。レーベルは仏ACCORD。
これは秘蔵のアルバム故、再発盤ももちろん手元にあります。

同じ演奏をUNIVERSAL傘下になったACCORDからリステンパルトの一連の録音がシリーズで再発売されたときのもの。残念ながら両者ともに現役盤ではない模様。HMV ONLINEでもamazonでもTOWER RECORDSでも検索に引っかかりません。
癒されるハイドンの交響曲の演奏とはリステンパルトの演奏のこと。まろやかなオーケストラの音色と完璧なまでに穏やかにコントロールされた演奏。古くさい感じは微塵もなく、完璧なリズムとバランス感覚に溢れた珠玉の演奏です。
いままでちゃんと調べていなかったのでリステンパルトの略歴を紹介しておきましょう。情報はいつもながら素晴らしい情報量のBach Cantatas Website。
リステンパルトは1900年、ドイツのキール(Kiel)に生まれた指揮者。1950年代から60年代にかけての、今日取り上げるアルバムのオケであるザール室内管弦楽団を振ったバッハ、モーツァルトの素晴らしい録音で有名な人とのこと。年配の方にはなじみがあるのでしょうが、私はハイドンの演奏からリステンパルトを知ったため、他の演奏はあまり知りません。ベルリンとウィーンの音楽院で音楽を学び、1932年に女性中心のカール・リステンパルト室内アンサンブルを設立しました。
戦後は政治的にクリーンだったため、RIAS放送合唱団、RIAS放送室内管弦楽団、RIAS放送交響楽団なとどを指揮してRIAS放送のために管弦楽曲の録音を行う機会に恵まれ、また1947年から52年まで彼のカール・リステンパルト室内管弦楽団とフィッシャー=ディースカウなどのソリストとともに感動的なバッハのコンサートシリーズを開催し続けました。1950年代に入りベルリンの経済状況が悪化してきたのを機に、1953年にザール放送のための室内管弦楽団創設のため、ベルリンを離れました。
ザール室内管弦楽団はジャン=ピエール・ランパルをはじめとするフランスの一流奏者によって構成されていたため、設立当初から非常に高い評価をうけていたとのこと。ザール室内管弦楽団とはバロックから現代音楽まで、50人以上の作曲家の作品からおよそ170枚のアルバムを録音し、世界中に販売されたということです。
リステンパルトのバッハとモーツァルト演奏の大家としての印象が強いですが、実際は数多の録音の約半数が現代音楽であるということでもわかるとおり、現代音楽も得意としていたようです。これは放送局のためのオケであるということが影響しているようです。
リステンパルトは1967年、ポルトガルの演奏旅行中に心筋梗塞で亡くなったとの事。その後アントニオ・ヤニグロに率いられることになりましたが、ヤニグロ体制になって4年後の1973年、ザール室内管弦楽団はザールブリュッケン放送交響楽団と合併したという事です。
どおりでオケが上手いはずです。やはり情報は大切ですね。
Hob.I:94 / Symphony No.94 "Mit dem Paukenschlagk" 「驚愕」 [G] (1791)
実にゆったりと非常に柔らかい音でまとめられた1楽章。腕利き揃いといわれれば、やはりその通り。オケの一体感が素晴らしく、ベルリンフィルのように奏者どうしがしのぎを削って自己主張し合うのとは対極にある演奏。自然で朗らかで、気品にあふれ、おまけに録音も1966年としては非常に良いもの。ハイドンの書いた楽譜から、じつに完璧なプロポーションの響きが立ちのぼります。もはや言葉で説明するのもはばかられるほどにうっとり。
2楽章のビックリは、そもそもビックリさせようというより、ビックリさせようとする音符を書いたハイドンの曲を如何に流麗かつ彫刻的に聴かせようかと考えての演奏のよう。美しすぎるアクセント。ゆったりと演奏しながら、ダイナミックな響きをリステンパルト自身が楽しんでいるよう。ジェントルな指揮から立ちのぼる色気。
メヌエットは、最高の舞曲。聴いているこちらが踊り出してしまいそうなほどに、優雅な雰囲気です。優雅、典雅、高雅。われわれ日本人に、これほどまでに気品にあふれた音楽を生み出す事はできるのでしょうか。
フィナーレもオケが十分鳴っているにもかかわらず、癒しと慈しみに溢れています。クリーミーな泡につつまれた香り高いトラピストビールをゆったりと楽しむがごとき至福の時間。おとぎの国のような驚愕の「驚愕」でした。
Hob.I:100 / Symphony No.100 "Military" 「軍隊」 [G] (1793/4)
残りの2曲をレビューするのはやめましょう。出だしからリステンパルトの至福の世界。軍隊もおとぎの国。決して子供じみているということではなく、大人のおとぎの国。ゆったりと盛り上がる、海のうねりのような音楽のうねりに身を任せます。最高。
Hob.I:101 / Symphony No.101 "Clock" 「時計」 [D] (1793/4)
時計もおとぎの国の時計。2楽章リズムは熟練職人の手による研ぎすまされた機械音を楽しむがごとき楽しさ。フィナーレに至っては名残惜しさに満ちあふれます。
久々に取り出して聴いたリステンパルトのハイドン。私のハイドンの交響曲の中でも溺愛する一枚。上の写真のジャケットのものは、1997年にパリに行った時にレアールのFnacで手に入れたもの。想い出のアルバムです。このアルバムでハイドンの交響曲の新たな魅力を知った次第。今でも色あせぬ素晴らしい感動。いやいやレビューになってませんね。評価はもちろん全曲[++++++]、おっとつけすぎました。[+++++]です。
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