ミヒャエル・ギーレン/バーデンバーデン・フライブルクSWR交響楽団の太鼓連打

ちょっと苦手な指揮者シリーズの続きです(笑)

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ミヒャエル・ギーレン(Michael Gielen)指揮のバーデンバーデン・フライブルクSWR交響楽団(SWR Sinfonieorchester Baden-Baden und Freiburg)の演奏による、ハイドンのネルソン・ミサと交響曲103番「太鼓連打」を収めたアルバム。今日はこの中から交響曲103番を取りあげます。収録は2004年3月4日、フライブルクのコンツェルト・ハウスでのセッション録音。レーベルはGLOR CLASSICS。

指揮者のミヒャエル・ギーレンも名前は知ってはいるものの、どのような音楽を奏でる人か把握していません。先日暗黒街のボスのような風体のクルト・マズアのアルバムを取りあげたばかりですが、このアルバムも上目遣いにこちらをにらむギーレンのアップのジャケット。ただし、マズアの迫力とは異なり、優しい落ち着いた眼差しを感じる普通の写真。むしろ優しい人に見えます。ギーレンもこれまで食わず嫌いのため、あまりそのアルバムを聴いていないということです。

ミヒャエル・ギーレンは1927年、旧東独のドレスデンに生まれた指揮者、作曲家。1940年に南米アルゼンチンのブエノスアイレスに移住し、哲学、ピアノ、音楽理論、作曲などを学びます。このころカルロス・クライバーに出会い、その後もともに音楽を学んだそう。手元にあるクライバーの伝記を確認してみると、ギーレンによるクライバーの話が随所に出てきて親密ぶりが窺えます。1950年にヨーロッパに戻り、ウィーン国立歌劇場の練習指揮者やコレペティトールとして働いた後、1960年よりストックホルム王立歌劇場音楽監督、1968年よりベルギー国立管弦楽団首席指揮者、1977年から87年までフランクフルト歌劇場芸術総監督、1978年から81年までBBC交響楽団首席客演指揮者、1980年から86年までシンシナティ交響楽団音楽監督などを歴任しました。このアルバムのオケである南西ドイツ放送交響楽団(現バーデンバーデン・フライブルクSWR交響楽団)は1986年から首席指揮者となり、現在は名誉指揮者となっています。

ギーレンのアルバムはHänssler CLASSICなどからバーデンバーデン・フライブルクSWR交響楽団(南西ドイツ放送交響楽団)やベルリン放送交響楽団などを振ったアルバムがかなりの枚数リリースされており、特にマーラーの交響曲を得意としているようです。ギーレンのマーラーはおそらく1枚も所有しておらず、ちょっとなじみがありませんが、現代曲やマーラーを得意とするということはオーケストラコントロールに秀でた人なのでしょう。

Hob.I:103 / Symphony No.103 "Mit dem Paukenwirbel" 「太鼓連打」 [E flat] (1795)
遠雷タイプのティンパニの入りと思いきや、ぐっとクレッシェンドしてドラムソロのような乱れ打ちを聴かせ、遠ざかっていきます。意表をつく太鼓連打の入り。最新の録音だけあって引き締まったティンパニとオケの響き。ヴィブラートを抑え気味にしたクリアな響き。主題に入ると透明感溢れるオケによる堂々とした響きに惹き付けられます。中庸なテンポでかなり純音楽的な構成。音楽の大きな構えをしっかり描いていきます。ところどころヴァイオリンパートで意図的にレガートをきかせてくるのがギーレン流の演出でしょう。大曲を得意とするギーレンのまさに王道を行くような堂々とした演奏。最後も太鼓連打は乱れ打ちで締めます。
つづくアンダンテは速めのテンポであっさりとした入り。叙情的なところは一切なく、フレーズをクッキリと刻みながらメロディーラインの面白さにスポットライトを当てた演奏。古楽器の演奏に近いニュアンスを帯びているのは最近のトレンドを踏まえたものでしょう。
メヌエットに入ると期待通りざっくりと迫力ある音響で、陰影の深い演奏。メヌエットが引き締まっていると曲が締まります。大オーケストラのコントロールを得意としているギーレンらしく、自然ながらここぞと言う時の盛り上がりは見事。おおらかな表情ながら立体感溢れる大理石の巨大な彫像のよう。
フィナーレは冷静さを保ちながら、郷愁溢れるメロディーをじわりと表現。オケに漲る迫力に耳を奪われます。良く聴くとフレーズごとにかなり緻密に表情をつけていますが、それでも基本的に自然さとあっさりとした感触を失わないのがギーレン流でしょうか。現代オケの最新のトレンドでの見本的な演奏。素晴らしい盛り上がりでフィニッシュ。

ミヒャエル・ギーレンの太鼓連打は、まさに現代オケでの見本的な好演。なるほどオーケストラコントロールは見事ですが、一番いいのは自然さを失っていない事。最初はもう一歩の踏み込みが欲しいと思う演奏と感じましたが、聴き進むうちにこの自然さとスケール感、あっさりとした感触がギーレンらしさなのだと感じるようになりました。ともに音楽を学んだカルロス・クライバーは血沸き肉踊るような圧倒的な陶酔感で人々を魅了しましたが、ギーレンは冷静な視点から俯瞰した音楽をスケール感豊かに描き、音楽の面白さをじわりと聴かせる玄人好みの音楽を奏でる人でした。太鼓連打の評価は[++++]とします。

このアルバムには太鼓連打のまえに名曲ネルソン・ミサが置かれ、こちらもギーレンらしさが良く出た演奏。また別の機会に取りあげたいと思います。

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