作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

デュトワ/モントリオール・シンフォニエッタの87番

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メジャー盤ながら、デュトワのパリ交響曲集のアルバムはまだ取りあげていませんでした。

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おなじみ、シャルル・デュトワ(Charles Dutoit)指揮のモントリオール・シンフォニエッタ(Sinfonietta de Montréal)の演奏による、ハイドンのパリ交響曲6曲を収めた2枚組のアルバム。今日はこのなかから交響曲87番を取りあげます。87番の収録は1991年5月、カナダ、モントリオールのサン=テュスタシュ(St Eustache)でのセッション録音。レーベルは英DECCAのLONDONレーベル。

シャルル・デュトワは日本ではおなじみの人でしょう。N響の音楽監督を務めていたので実演に触れた事もある方が多いのではないでしょうか。かく言う私もその一人で、ちょうど1年前、昨年の12月にNHKホールで、なんとマーラーの8番「一千人の交響曲」の実演を聴いています。

2011/12/04 : コンサートレポート : デュトワ/NHK交響楽団のマーラー「一千人の交響曲」

この時の素晴らしい演奏の事は前の記事に譲るとして、デュトワはハイドンを振る人との印象はあまりありません。フランスものや現代もののスペシャリストというのが大方の人の印象。ハイドンを振ったアルバムはおそらくこれ1組のみ。ただ、このアルバムもハイドンの「パリ」交響曲集であり、これも広義のフランスものというのでしょうか(笑)

デュトワの事をきちんと調べた事がなかったので、この機会に調べておきましょう。1936年、スイス、ローザンヌ生まれの指揮者。若い頃はアンセルメと交流があったそう。ジュネーブの音楽院でヴァイオリンやヴィオラ、打楽器、指揮等を学び、その後タングルウッド音楽祭で、シャルル・ミュンシュ、ルツェルン音楽祭ではカラヤンに奏者として教えを受けていました。学生の頃からヴィオラ奏者として各地のオーケストラに在籍して経験を重ね、1959年にローザンヌ放送所属のオーケストラで指揮者デビュー。スイス・ロマンド管弦楽団やローザンヌ室内管弦楽団の客演指揮者を務めて腕を磨き、1964年にカラヤンの招きでウィーン国立歌劇場でバレエの指揮を担当。その後様々なオケを経て、1977年にモントリオール交響楽団の音楽監督に就任、同楽団を世界有数のオーケストラに育て上げました。モントリオール交響楽団は「フランスのオーケストラよりもフランス的」と言われるほど色彩感豊かな演奏が印象に残っています。日本でも同楽団とのアルバムがDECCAレーベルから数多くリリースされたため、以降はおなじみという方が多いと思います。

このアルバムの演奏を担当するモントリオール・シンフォニエッタはデュトワの手兵モントリオール交響楽団とどのような関係にあるのか、情報があまりないのでわかりません。モントリオール・シンフォニエッタの名で録音されているアルバムはこのアルバムを含めてごくわずかなので、モントリオール交響楽団の縮小編成のオケかもしれませんね。

さて、このアルバム、デュトワらしい華やかな響きのオーケストラがインテンポでグイグイ推していく演奏なのですが、このアルバムでことさら素晴らしいのがアルバムの最後に置かれた87番。作曲順では6曲中最初に書かれている曲ですが、パリセットの中では地味な曲。ただ、このアルバムではこの87番がダントツに素晴らしいので取りあげた次第です。

Hob.I:87 / Symphony No.87 [A] (1785)
冒頭から気合い入りまくりのもの凄い勢いで入ります。弦楽器は弓が飛び交うようなキレ方。87番は86番に次いで好きな曲ですが、この冒頭のエネルギーは滅多に聴ける音楽ではありません。良く聴くとデュトワの特徴であるクッキリと華やかなオケの明晰な響きが聴かれますが、速めのテンポによる暴風のような勢いが支配しており、音色を楽しむなどというのどかな事は言ってられません。1楽章は冒頭の勢いを保ったまま駆け抜けるように終了。
つづくアダージョはデュトワらしいしっかりした骨格設計のもと、表情をおさえてゆったりした曲をかっちり描いていくもの。冷静に引き締まった美しさを表現していきます。このあたりはデュトワの真骨頂でしょう。絃楽器の懐の深い音色も見事な物。
メヌエットは再びギアを戻して、ざっくりした表情で漲る力感をすこし抑えて入ります。デュトワの指揮は不思議と曲の構造の巨大さを感じさせるもの。淡々と部分を描いていく事で、何か非常に大きな物を感じさせるところがあります。このメヌエットもその淡々とした印象が不気味な迫力を帯びています。
フィナーレは郷愁を感じさせるメロディーラインから入りますが、徐々にオケに力が宿り、最後にフォーカスを絞って、盛り上がっていきます。ヴァイオリンの美しいメロディーが絶妙の力の抜け具合。最後に向けて変奏がクッキリと華やかになり、陶酔の彼方へ。素晴らしいフィナーレ。

やはり、デュトワはオーケストラコントロールの達人だと唸らされる演奏。1楽章のエネルギー、2楽章の静謐ですらある磨かれた美しさ、3楽章の力感の表現、そしてフィナーレの華やかな陶酔。曲の聴き所のツボを押さえて、オーストリアのハイドンというよりやはりフランス風のハイドンと聴こえるように料理してくるのは流石です。このアルバム、どの曲もいいのですが、やはりこの87番は別格。もちろん評価は[+++++]をつけます。

デュトアは大曲を得意としているだけに、天地創造など振る機会はありますでしょうか。マーラーの8番がすばらしかっただけに、天地創造もさぞかし素晴らしいことでしょう。N響の中の人、よろしくお願いします!

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