作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

クルト・マズア/イスラエル・フィルの88番ライヴ

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今日はちょっと苦手としている指揮者のハイドン。

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HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

クルト・マズア(Kurt Masur)指揮のイスラエル・フィルハーモニック管弦楽団の演奏による、ハイドンの交響曲88番、チャイコフスキーの交響曲6番「悲愴」の2曲を収めたアルバム。収録は2008年6月、テル=アヴィヴのマン・オーディトリウムでのライヴ収録。レーベルはイスラエル・フィルの自主制作レーベルのhelicon classics。

クルト・マズアは暗黒街のボスのようなドスのきいた顔つきの指揮者。顔が恐いから苦手と言うわけではなく、食わず嫌いで、これまでマズアのアルバムはほとんど聴かずにきました。ただ、一時ニューヨーク・フィルの音楽監督を務めるなど、暗黒街ではなくクラシック音楽界でもメジャーな存在であるのは間違いのないところ。そのマズアが珍しくハイドンを振ったアルバムが手元にありましたので、今日は怖いものみたさ半分で取りあげます。もちろん、マズアのアルバムを聴くのも滅多にないことゆえ、この人がどのような音楽を奏でるのかもあまり把握しておりません。いつものように新鮮な心境でマズアのハイドンに対峙します。

クルト・マズアは1927年に旧東独のブリーク(Brieg)、現在はポーランド領のブジェク(Brzeg)に生まれた指揮者。ライプツィヒでピアノ、作曲、指揮を学びました。1960年から64年にかけてベルリン・コーミッシェ・オーパー、1955年から58年と1967年から72年までドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団の指揮者を務めて腕を磨きました。1970年にはライプツィヒ市の楽長とライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の指揮者に就任し、この立場は1996年までつづきました。1991年から2002年までズビン・メータの後任としてニューヨーク・フィルの音楽監督を務めたました。最近では2000年から2007年までロンドン・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者、2002年から2008年までフランス国立管弦楽団の音楽監督と要職を歴任しています。まさに、世界の一流オケの音楽監督を務めている訳です。

このアルバムはマズアが客演指揮者を務めるイスラエル・フィルハーモニックの2008年のコンサートを収めたものゆえ、イスラエル・フィルにとっては録音をリリースする甲斐のあるコンサートだったという事でしょう。

Hob.I:88 / Symphony No.88 "Letter V" 「V字」 [G] (1787?)
思ったよりあっさりとした入り。ライヴの緊張感漲るかといえばそうでもなく、非常にリラックスしてまるでセッション録音のように入ります。オケの音色はヴィブラートは弱めと最近の流行に乗ったものですが、癖もなく程よいテンポでハイドンの曲を素直に演奏していきます。弦楽器の響きは木質系のもので、非常に素直で柔らかい響き。内声部の響きにも耳が向くような充実した響き。怖い顔とはまったく逆の純粋無垢な音楽ですね。オケのテクニックは十分で、88番の見本のようなオーソドックスな、なかなかいい演奏です。
ラルゴは少しごつい印象を残しながらの優しい音楽。細かい響きを磨き込むのではなく、荒削りな木炭デッサンのような風情で、これはこれで悪くありません。逆に音楽の骨格が浮かび上がり、ハイドンの曲の構造の面白さがが良く表現されています。朴訥な魅力。
予想通り、メヌエットはマズアのスタイルが一番ハマった演奏。細かいところに気をとられずに音楽をザクザク進めます。別段細かいところが粗い訳ではありません。要は音楽のつくりが全体の構造にフォーカスを当てた物であるという事です。そっと重ねられるティンパニが粋ですね。
フィナーレもマズアのスタイルが活きています。ザクザクと素朴な音楽を刻み、ここぞと言う時の盛り上げも素晴らしいもの。終始一貫してリズムを刻み、大きな音楽のうねりまで含めてざっくりと描いていくところは、個性の深さではだいぶ違いますが、クナッパーツブッシュの音楽に近いものを感じます。最後は観客の暖かい拍手にすぐに包まれて終わります。

マズアのハイドンは、最近多い、音自体を磨き抜いたり、デュナーミクの繊細な変化をコントロールする演奏とは異なり、音楽の骨格にフォーカスを当てた朴訥な音楽でした。漁師料理のような細かいところを気にしないスタンスながら、味は実に旨い鍋のような風情。これはこれで貴重な演奏だと思います。以前聴いた時にはもう少し突っ込んだ個性があればと思ったのですが、どっこいこれはなかなかの演奏だということがわかりました。このライヴをリリースした意図が見えた気がします。このあと収められた「悲愴」も良く聴くとハイドンで感じられたマズアらしさが感じられる演奏。ちょっとマズアの音楽に触れた気がします。評価は[++++]とします。

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