ドロルツ四重奏団のOp.77のNo.2
今日は久々の弦楽四重奏曲のヒストリカルもの。

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ドロルツ四重奏団(Drolc Quartet)の演奏によるハイドンの弦楽四重奏曲Op.77のNo.2、モーツァルトの弦楽四重奏曲17番K.458「狩」の2曲を収めたアルバム。収録は1950年代としか記載されておりません。レーベルはEINZÄTZ RECORDSという日本の板起こし専門のレーベルで、このレーベルのアルバムは以前、クリュイタンスの告別と奇跡を取りあげました。
2010/06/21 : ハイドン–交響曲 : クリュイタンスの告別、奇跡
まずはEINZÄTZ RECORDSのサイトを紹介しておきましょう。
EINZÄTZ RECORDS アインザッツレコード
このレーベルは大阪のサンデンオーディオシステムの山田さんという方が装置に拘ってLP音源をCDにしているレーベルで、商品ラインナップには20枚のアルバムが掲載されており、その中でハイドンの作品は、このアルバムとクリュイタンスの告別、奇跡を収めたアルバムの2枚のみ。ということはこのレーベルでリリースされたハイドンの作品のすべてを所有している事になります。こうゆうつまらんところに喜びを感じるのが趣味の趣味たる所以です(笑)
さて、ドロルツ四重奏団はライナーノーツによると、カラヤン時代のベルリンフィルの主要メンバーによって1950年台に結成されたクァルテット。この録音に参加しているチェロのギュンター・リーバウ以外のメンバーは1957年のベルリンフィルの初来日にも参加しているとの事。私はカラヤンは嫌いではありませんが、評価するのは古い録音の方が多く、特に1950年代と言えば、ベルリンフィルに類いまれな覇気とダンディズムが漂う黄金期であり、その中核メンバーによるハイドンの弦楽四重奏曲の録音とあらば、さぞかしと思うところです。
メンバーは以下のとおり。
第1ヴァイオリン:エドゥアルド・ドロルツ(Eduard Drolc)
第2ヴァイオリン:ハインツ・ベトガー(Heinz Böttger)
ヴィオラ:ジークベルト・ユーバーシェール(Siegbert Ueberschaer)
チェロ:ギュンター・リーバウ(Günter Liebau)
Hob.III:82 / String Quartet Op.77 No.2 [F] (1799)
もちろんモノラルですが、ゆったりと安定感のあるサウンド。無理にノイズを除去せず、まるで自宅でLPを聴いているような音。スクラッチノイズも聴こえますが、安定感のある音ゆえ、全く気になりません。完全にリラックスして各奏者がハイドンの音楽を慈しむように弾いていきます。先日聴いたエルサレム四重奏団による溌剌としたハイドンとは対極にある、ゆったりと余裕たっぷりのハイドン。ヴァイオリンの胴鳴りの余韻を奏者自身が楽しんでいるよう。すべて音に美しい輝きがあり、アンサンブルは完璧ですが、そうした技術的な事を感じさせないピタリと息があった音楽だけがそこにある感じ。ハイドン晩年の成熟した音楽を、成熟した演奏で聴く悦び。最上級のカマスの干物を燗酒で楽しむがごとき極楽。わかる人にしかわからない悦びです(笑) 聴き進めるうちに、ぐっと没入していきます。ほぼ60年前の演奏当時を思い浮かべながら弦の響きに聴き入ります。
2楽章のメヌエットに入ってもドロルツ四重奏団のスタンスは微動だにせず。テンポを落とす場面の繊細なコントロールは絶妙。いい意味で高域に金属っぽい余韻が乗っているのが時代を感じさせますが、録音は十分に鮮明であり、LPというメディアのキャパシティを存分に生かしたもの。中間部の後半にも力を抜く場面がありますが、これも絶品。昔の演奏の素晴らしさを実感できます。
この曲の白眉、3楽章のアダージョは、期待通り、無欲の境地。それぞれの楽器が淡々としていながら、豊かな表情を重ねて行きます。多少ノイズが目立ちますが、ここまでくるとスクラッチノイズも音楽の要素のように聴こえます。後半にすすむにつれて音楽が絡み合って独特の境地に至るあたりの流れ、まさにハイドンならではの暖かさ、身近さ、日常の場面から祈りを感じる素朴さと崇高さの混じり合った境地。絶妙です。
フィナーレはこの演奏の総決算的な音楽ですが、最後に自在な弓使いで音楽の楽しさを残していくよう。メンバーの信頼関係に裏付けられたじつに暖かい掛け合い。火花は散らず、バトンを渡しながら戯れるようなやり取り。この暖かいアンサンブルは一朝一夕のものではなく、ベルリンフィルの中核奏者同士だからこそなし得るアンサンブルなのでしょう。
もちろんドロルツ四重奏団のハイドンははじめて聴きましたが、時代を超えてその素晴らしい演奏がぐっと心に刺さりました。ベルリンフィルの奏者によるクァルテットは他にも聴いていますが、この時代のベルリンフィルはまさに全盛期であり、メンバーもまさに一流どころだったことでしょう。カラヤン時代も晩年の耽美的なまでのレガートを多用した演奏ではなく、帝王カラヤンの全盛期ゆえ、オケも圧倒的な破壊力を持っていた頃。そうした演奏の延長でハードなハイドンかと想像していましたが、さにあらず、心に染み入る素晴らしい演奏でした。まさにハイドンの音楽に安心して身を委ねられる素晴らしい演奏でした。評価はもちろん[+++++]をつけます。
この後収められたモーツァルトの「狩」も絶品ゆえ、室内楽好きの方には絶対のオススメ盤です。

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ドロルツ四重奏団(Drolc Quartet)の演奏によるハイドンの弦楽四重奏曲Op.77のNo.2、モーツァルトの弦楽四重奏曲17番K.458「狩」の2曲を収めたアルバム。収録は1950年代としか記載されておりません。レーベルはEINZÄTZ RECORDSという日本の板起こし専門のレーベルで、このレーベルのアルバムは以前、クリュイタンスの告別と奇跡を取りあげました。
2010/06/21 : ハイドン–交響曲 : クリュイタンスの告別、奇跡
まずはEINZÄTZ RECORDSのサイトを紹介しておきましょう。
EINZÄTZ RECORDS アインザッツレコード
このレーベルは大阪のサンデンオーディオシステムの山田さんという方が装置に拘ってLP音源をCDにしているレーベルで、商品ラインナップには20枚のアルバムが掲載されており、その中でハイドンの作品は、このアルバムとクリュイタンスの告別、奇跡を収めたアルバムの2枚のみ。ということはこのレーベルでリリースされたハイドンの作品のすべてを所有している事になります。こうゆうつまらんところに喜びを感じるのが趣味の趣味たる所以です(笑)
さて、ドロルツ四重奏団はライナーノーツによると、カラヤン時代のベルリンフィルの主要メンバーによって1950年台に結成されたクァルテット。この録音に参加しているチェロのギュンター・リーバウ以外のメンバーは1957年のベルリンフィルの初来日にも参加しているとの事。私はカラヤンは嫌いではありませんが、評価するのは古い録音の方が多く、特に1950年代と言えば、ベルリンフィルに類いまれな覇気とダンディズムが漂う黄金期であり、その中核メンバーによるハイドンの弦楽四重奏曲の録音とあらば、さぞかしと思うところです。
メンバーは以下のとおり。
第1ヴァイオリン:エドゥアルド・ドロルツ(Eduard Drolc)
第2ヴァイオリン:ハインツ・ベトガー(Heinz Böttger)
ヴィオラ:ジークベルト・ユーバーシェール(Siegbert Ueberschaer)
チェロ:ギュンター・リーバウ(Günter Liebau)
Hob.III:82 / String Quartet Op.77 No.2 [F] (1799)
もちろんモノラルですが、ゆったりと安定感のあるサウンド。無理にノイズを除去せず、まるで自宅でLPを聴いているような音。スクラッチノイズも聴こえますが、安定感のある音ゆえ、全く気になりません。完全にリラックスして各奏者がハイドンの音楽を慈しむように弾いていきます。先日聴いたエルサレム四重奏団による溌剌としたハイドンとは対極にある、ゆったりと余裕たっぷりのハイドン。ヴァイオリンの胴鳴りの余韻を奏者自身が楽しんでいるよう。すべて音に美しい輝きがあり、アンサンブルは完璧ですが、そうした技術的な事を感じさせないピタリと息があった音楽だけがそこにある感じ。ハイドン晩年の成熟した音楽を、成熟した演奏で聴く悦び。最上級のカマスの干物を燗酒で楽しむがごとき極楽。わかる人にしかわからない悦びです(笑) 聴き進めるうちに、ぐっと没入していきます。ほぼ60年前の演奏当時を思い浮かべながら弦の響きに聴き入ります。
2楽章のメヌエットに入ってもドロルツ四重奏団のスタンスは微動だにせず。テンポを落とす場面の繊細なコントロールは絶妙。いい意味で高域に金属っぽい余韻が乗っているのが時代を感じさせますが、録音は十分に鮮明であり、LPというメディアのキャパシティを存分に生かしたもの。中間部の後半にも力を抜く場面がありますが、これも絶品。昔の演奏の素晴らしさを実感できます。
この曲の白眉、3楽章のアダージョは、期待通り、無欲の境地。それぞれの楽器が淡々としていながら、豊かな表情を重ねて行きます。多少ノイズが目立ちますが、ここまでくるとスクラッチノイズも音楽の要素のように聴こえます。後半にすすむにつれて音楽が絡み合って独特の境地に至るあたりの流れ、まさにハイドンならではの暖かさ、身近さ、日常の場面から祈りを感じる素朴さと崇高さの混じり合った境地。絶妙です。
フィナーレはこの演奏の総決算的な音楽ですが、最後に自在な弓使いで音楽の楽しさを残していくよう。メンバーの信頼関係に裏付けられたじつに暖かい掛け合い。火花は散らず、バトンを渡しながら戯れるようなやり取り。この暖かいアンサンブルは一朝一夕のものではなく、ベルリンフィルの中核奏者同士だからこそなし得るアンサンブルなのでしょう。
もちろんドロルツ四重奏団のハイドンははじめて聴きましたが、時代を超えてその素晴らしい演奏がぐっと心に刺さりました。ベルリンフィルの奏者によるクァルテットは他にも聴いていますが、この時代のベルリンフィルはまさに全盛期であり、メンバーもまさに一流どころだったことでしょう。カラヤン時代も晩年の耽美的なまでのレガートを多用した演奏ではなく、帝王カラヤンの全盛期ゆえ、オケも圧倒的な破壊力を持っていた頃。そうした演奏の延長でハードなハイドンかと想像していましたが、さにあらず、心に染み入る素晴らしい演奏でした。まさにハイドンの音楽に安心して身を委ねられる素晴らしい演奏でした。評価はもちろん[+++++]をつけます。
この後収められたモーツァルトの「狩」も絶品ゆえ、室内楽好きの方には絶対のオススメ盤です。
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