作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

【新着】クイケン/ラ・プティット・バンドの「朝」、「昼」、「晩」

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久々の新着アルバム。引越し後はじめてHMV ONLINEからの荷物到着。

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HMV ONLINE

シギスヴァルト・クイケン(Sigiswald Kuijken)指揮のラ・プティット・バンド(La Petite Bande)の演奏による、ハイドンの交響曲6番「朝」、7番「昼」、8番「晩」の3曲を収めた最新のアルバム。収録は2012年1月9日から12日にかけて、ベルギー北部のオランダ国境に近い街モル(Mol)にあるギャラクシースタジオでのセッション録音。レーベルはベルギーのACCENT。

クイケンはハイドンの交響曲をかなり録音しており、手兵、ラ・プティット・バンドとザロモンセットや初期交響曲、エイジ・オブ・エンライトメント管弦楽団とパリセット等があります。クイケンの特徴はしなやかなオーソドックスな演奏で曲自体に語らせるというスタイル。聴き進めるうちにじわりと曲の魅力を感じる演奏です。いつもどおり、これまで取りあげたクイケンの演奏のリンクを張っておきましょう。

2011/11/23 : ハイドン–室内楽曲 : クイケン・アンサンブルによる「ロンドン・トリオ」
2011/09/14 : ハイドン–声楽曲 : シギスヴァルト・クイケン/ラ・プティット・バンドのテ・デウム
2011/07/04 : ハイドン–オラトリオ : クイケン/ラ・プティット・バンド1982年の天地創造ライヴ
2011/07/02 : コンサートレポート : シギスヴァルト・クイケン/ラ・プティット・バンドのブランデンブルク協奏曲
2010/03/22 : ハイドン–交響曲 : クイケンのザロモンセット
2010/03/21 : ハイドン–交響曲 : クイケンのパリ交響曲集

クイケンとラ・プティット・バンドの演奏は昨年、東京オペラシティでブランデンブルク協奏曲を聴いていますが、アルバムから感じる緻密な響きよりも、音楽の演奏を楽しむような余裕ある演奏姿勢に打たれました。コンサートという緊張感はなく、まさに練習場で音楽を演奏する事を自分が楽しむような風情でした。

このアルバムはこれまでのクイケンのハイドンの交響曲の録音のカタログにはなかったものですが、ちょっと聴くとその演奏にはコンサートの時の余裕まで録られてました。

Hob.I:6 / Symphony No.6 "Le matin" 「朝」 [D] (1761?)
どちらかというと遅めのテンポで入ります。ライナーノーツによると第1、第2ヴァイオリン、フルート、オーボエ、ホルンが2台、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、バスーンが1台という小編成オーケストラ。キレとかメリハリとかをことさら感じさせるのではなく、淡々としなやかに曲をこなしていくまさに大人の演奏。最新の録音らしく響きの余韻が美しい非常に鮮明な録音。特にすこし強調されたホルンの音色に耳が奪われます。曲を完全に掌握して、小細工等は一切なくまさに淡々と進みます。
アダージョは弦楽器の繊細な響きの織りなす綾の美しさに打たれます。やはり完璧にリラックスしたような各奏者が繰り広げる音楽はクイケンの最小限のコントロールにより極めて自然な音楽。最後の静寂に響きが消えていく様子は息を飲むほど。
メヌエットはコントラバスが大活躍。ここでも自然な音楽。ことさらメリハリを強調することなくしっとりと染み入るようなメロディーラインを各奏者が重ねて行くことで豊穣な音楽が生まれています。
フィナーレはちょっと驚くほどテンポを落とした入り。クイケンにしては踏み込んだ解釈でしょう。フィナーレの本来は快活な響きをスローモーションで聴くような独特な印象。曲を振り返って味わい尽くすという意図でしょうか。遅いだけに各楽器のメロディーの美しさとその引き継ぎなどが克明に聴こえ、曲を分解してみたような不思議な感覚。

Hob.I:7 / Symphony No.7 "Le midi" 「昼」 [C] (1761?)
響きも解釈も前曲とかなり一致するツブのそろった演奏。以降のレビューは簡単に。やはり曲を演奏者が楽しむような、ゆったりとしたテンポにのったのどかな演奏。5楽章構成のこの曲は朝ほどの仕掛けはなく、どの楽章ものびのびとした自然なもの。心なしかメリハリもキリッとして、曲自体を存分に楽しめます。

Hob.I:8 / Symphony No.8 "Le soir" 「晩」 [G] (1761?)
このアルバムの中で最もオーソドックスな演奏。1楽章には覇気と生気が漲り、2楽章のアンダンテは静けさを感じる精妙なヴァイオリンの音色にうっとり。メヌエットもフィナーレも期待通りのしなやかなソノリティを感じさせる演奏。このオーソドックスさは貴重ですね。

シギスヴァルト・クイケンと手兵ラ・プティット・バンドによるハイドンの「朝」、「昼」、「晩」はクイケンの最近の演奏の特徴を踏まえた、程よく力の抜けた演奏ですが、根底には非常にリラックスして弾いているラ・プティット・バンドの高い技術があり、また色づけを感じさせないと言うようり、非常に透明度、純度の高い音楽になっています。まさに期待通りの演奏です。強いてあげれば朝の終楽章が、この曲としては異例の遅いテンポをとっているのが目立ちます。クイケンの意図かと思いますが、私の印象は普通のテンポだった方がしっくりくる感じでした。評価は朝が[++++]、その他は[+++++]とします。

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4 Comments

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michael

No title

こんばんは、私もこのCD注文したばかりです。また思ったままに書いてみようと思います。

プティット・バンドのブランデンブルクが聴けたのは羨ましいですね。第2番のナチュラルtpは一度生で聴きたいのですが地方にいると機会がありません。ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラも興味あります。

ライムンド

No title

Daisyさん、こんばんは。クイケンとラ・プティット・バンドのバッハ・カンタータ集が遅れがちで、資金不足のため活動困難という話も読んだことがありましたが、今年録音のハイドンが出てきたということは一安心です。クイケンのハイドンは、結構好きなのでパリ・セットとザロモンまでは聴いていました。バッハでは編成を変えているので当然演奏も変わりましたが、ハイドンもかつてのものとは大分変わっているようですね。

  • 2012/11/20 (Tue) 00:15
  • REPLY

Daisy

Re: No title

michaelさん、おはようございます。
コメントありがとうございます。最近のクイケンの録音は本当にリラックスして演奏している様子がわかるいいアルバムが多いですね。レーベルがACCENTというのもいいです。ACCENTはブログの初期の記事に書いた代々木のジュピターレコードのご主人が当時いろいろ紹介してくれた思い出のレーベルです。CD時代になっても独自の雅な雰囲気があっていいですね。このアルバムのmichaelさんの記事も楽しみにしております。

  • 2012/11/20 (Tue) 07:26
  • REPLY

Daisy

Re: No title

ライムンドさん、おはようございます。
いつもコメントありがとうございます。
クイケンのハイドン、変わったとも言えますし、変わってない部分もあります。おそらく歳をとったことで、無我自在の心境に入ってきたのだと思ってます。
資金難とはちょっと心配な情報ですね。できれば今の演奏で純度の高い天地創造を再録音して欲しいところです。天地創造の旧盤は30年前、四季でも22年前の録音ですのでそろそろ再録音をしても良さそうなタイミングですね。

  • 2012/11/20 (Tue) 07:40
  • REPLY