作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

アンスネス/ノルウェー室内管のピアノ協奏曲集

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今日も好きなアルバム。

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レイフ・オヴェ・アンスネス(Leif Ove Andsnes)のピアノとノルウェー室内管弦楽団(Norwegian Chamber Orhestra)によるハイドンのピアノ協奏曲3曲(Hob.XVIII:3、XVIII:4、XVIII:11)を収めたアルバム。アンスネスの弾き振りです。収録は1998年6月、ノルウェーの首都オスロのロメンダーレン教会でのセッション録音。レーベルは名門EMI CLASSICS。

アンスネスは1970年のノルウェーの南西端に近い街、カルモイ(Karmøy)生まれのピアニスト。ノルウェーのベルゲン音楽院で学び、1987年に地元オスロでデビューし、イギリスではその翌々年オスロフィルハーモニーとの共演でエジンバラ音楽祭に登場、そしてアメリカではネーメ・ヤルヴィの指揮によるクリーヴランド管弦楽団との共演でデビューするなど華々しい経歴の持ち主。

お国柄かグリークを得意としているようですが、この人の他のアルバムを聴いた事はありません。ノルウェーらしいかどうかわかりませんが、氷の結晶のような独特の透明感をもったピアノのが印象的な人。以前取りあげたベルグルンドのハイドン同様、北欧の澄んだ空気のような素晴らしい透明感を感じる演奏で、好んで聴いてきたアルバムです。

Hob.XVIII:3 / Concerto per il clavicembalo(l'organo) [F] (1765)
十分に彫りの深い現代楽器オケによる序奏。切れ味抜群の入りです。弾き振りならではのオケとソロが引き締まった響きを構成。ピアノはアンスネスらしい純度の高い氷の結晶のような響き。溜めはなくキビキビとした推進力に溢れた演奏です。ピアノのリズムの正確さはもとより、オケのコントロールも非常に緻密。オケ自体も俊敏な反応で、アバドの振るヨーロッパ室内管のような切れ味。特に低音弦群の引き締まった響きがオケのキレを一層タイトな印象にしています。きらめくピアノを鮮度の高いオケが支える理想的な演奏。
アダージョはゆったりしたというよりは純水のような純度の高さを感じさせる演奏。オケは抑え気味にしてピアノの響きの美しさに音楽を語らせるような展開。
フィナーレは期待どおり、クリアな響きによる爽快なもの。相変わらずのクッキリとしたメリハリと純度の高いピアノの響きが一気に吹き抜けるような楽章。1曲目からアンスネスらしさが非常に色濃く出た演奏です。

Hob.XVIII:4 / Concerto per il clavicembalo(l'fortepiano) [G] (c.1770)
曲の成熟にあわせてオケも鮮度重視から、すこししなやかさを増した印象。ピアノのクリアな響きは変わらず、おケも鮮度は相当な物。1998年の演奏ですが、オケの弦楽器はヴィブラートはかなり抑え気味なことが鮮度の高い響きにつながっているのでしょう。ノルウェー室内管、相当なテクニシャン揃いと見受けました。この曲ではピアノとオケの掛け合い的スリリングさも楽しめる演奏になってます。
2楽章のラルゴは詩情溢れる曲想ですが、アンスネスのコントロールは終始ピアノの淡々としたきらめきできかせようというもの。純音楽的な美しさで通します。決して緩まず、まさに透き通った氷の結晶のような音楽。2楽章の終わりは静けさに吸い込まれるように終わります。
フィナーレはその静けさを突き破るように切り込み、フルスロットルのオケとピアノの掛け合い。オケのプレゼンスはあくまでも引き締まったもの。ここまで緊張感をたもっているのはやはりアンスネスのコントロールが行き渡っているからでしょう。この曲も完璧。

Hob.XVIII:11 / Concerto per il clavicembalo(l'fortepiano) [D] (1784)
そして最後は名曲XVIII:11。どうしても過去の演奏の影響を感じさせてしまう演奏が多い中、アンスネスは純度の高いピアノの響きに加えてタイトなオーケストラをかなり禁欲的に引き締ることで、アンスネスの演奏という印象をきっちり作っています。ここでもオーケストレイションは見事。ピアノよりも指揮者としての腕前の方をほめたくなるくらいしっかりした伴奏。ピアノも清流のごときどこも引っかかりのない見事なタッチで流します。まさに音楽の純度を極めたような演奏。ハイドンの楽譜から磨き抜かれた音楽がクッキリと浮かび上がります。
緩徐楽章は抑制の美学の極み。どの音を抑えるかを巧みにコントロールして響きを削ぎ落しながらも、音楽は継続していきます。深みのあるフレージングではありませんが、磨き抜かれた響き自体に語らせるスタイル。美音に包まれる快感にどっぷり浸かる感じです。
フィナーレは言わずもがなです。自在に転がるピアノ美音と、コントロールが行き渡ったオーケストラによる澄み切った境地。決して勢いまかせにならないところが流石です。

レイフ・オヴェ・アンスネスとノルウェー室内管弦楽団によるハイドンのピアノ協奏曲はまるでダイヤモンドのような素晴らしい輝きのピアノと引き締まったオーケストラが渾然一体となった、極めて純度の高い演奏でした。ハイドンらしさ、古典らしさとはちょっと異なる印象。やはり北欧の澄んだ空気のようなものを感じさせるのが不思議なところです。我々の想像なのか、それともアンスネスの育った音楽環境の影響なのかはわかりませんが、この演奏には明らかに北欧を感じます。ハイドンのピアノ協奏曲の定番になりうるスタンダードなものではありませんが、ハイドンのピアノ協奏曲の演奏の一つの姿を極めた演奏である事に異論はありません。評価は3曲とも[+++++]とします。

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