クルト・ザンデルリンク/ベルリン交響楽団の王妃、86番

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クルト・ザンデルリンク(Kurt Sanderling)指揮のベルリン交響楽団の演奏で、ハイドンのパリセット6曲を収めたアルバムから、今日は交響曲85番「王妃」、86番を取りあげます。収録は1971年とだけ記載があります。レーベルはRCA RED SEAL。
クルト・ザンデルリンクのパリセットはまさに定番中の定番。ハイドンの名曲を安心して楽しめるアルバムとして、昔から愛聴してきました。これまでザンデルリンクのアルバムは何枚か取りあげてきたものの、大本命のこのアルバムまで至っていませんでした。基本的にマイナー盤が好きということが根本原因ですが、ハイドン啓蒙の一翼を担う当ブログとして、このままではいけないと思った次第。
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2010/06/18 : ハイドン–交響曲 : クルト・ザンデルリンクの86番
ザンデルリンクの紹介はスウェーデン放送交響楽団との39番ライヴの記事をご参照ください。
Hob.I:85 / Symphony No.85 "La Reine" 「王妃」 [B flat] (1785?)
本当は86番のみを取りあげようとして、このアルバムをかけたところ、85番の「王妃」が記憶の演奏よりも断然素晴らしいので、あらためて取りあげた次第。
冒頭からハイドンの交響曲の演奏の理想像と言っていい程の安定感。落ち着き払ったザンデルリンクの棒から繰り出される音楽は、堅実なテンポに乗って、適度以上の覇気と、適度のなメリハリ、そして揺るぎない古典の秩序を感じさせるもの。一音一音がこのタイミングで奏でられる説得力をともない、どう変化させてもバランスを失いかねない完璧なプロポーション。まさに完璧なプロポーションの肉体を描いたダ・ヴィンチのデッサンのようなリアリティがあるのに芸術的な雰囲気漂う演奏。この演奏で多くの人がハイドンの交響曲の素晴らしさを味わったことでしょう。2楽章以降も揺るぎない安定感と鮮度の高い響きは健在。ただ演奏されるだけで深い詩情が漂う秀演とはこの演奏の事でしょう。雄大な構えのメヌエットに、優雅なのに彫りの深いフィナーレと続き、まさに色気漂う端正な美人のような演奏。録音が少々古さを感じさせる以外にケチのつけようがありません。
Hob.I:86 / Symphony No.86 [D] (1786)
そして本命86番。前曲で言い尽くした感はありますが、全く曲想が異なり、1楽章はリズムとメロディーの遊戯のようなこの曲の真髄を突く演奏。前曲で感じた覇気はすこし鎮まり、オーソドックスな面が強い演奏に感じますが、この曲をこれだけ完璧なバランスでコントロールすることで生まれる感興は得難いもの。弦楽器の良く磨かれたメロディーラインが曲の美しさを引き立てるようです。おそらくハイドンにしては大きな編成のオーケストラが良く鳴り、まさに端正なリズムが踊る感じ。
2楽章のラルゴが若干イメージより速いテンポで爽快感を引き立てるのに対し、3楽章のメヌエットはアクセントの踏み込みのよさでしっかりとコントラストをつけ、フィナーレでは落ち着きながらもクライマックスをしっかりと描く演出。すべてほどよく適度な表情ゆえ、曲自体の面白さが浮かび上がるよう。演奏でよけいな事をしないだけ曲の構造がよくわかる玄人好みの面白さと言えばいいでしょうか。どこか飛び抜けたところもない代わりに絶妙のバランス感覚が光るということでしょう。
久しぶりに取り出して聴いたパリセットの定番、クルト・ザンデルリンクとベルリン交響楽団の名盤ですが、あらためてこのアルバムの良さを再認識した次第。パリセットにはマリナーやリボール・ペシェク、ヒュー・ウルフなど爽快な良さを持つ現代楽器の名盤がひしめいていますが、このザンデルリンク盤の定番の位置は揺るがないでしょう。もちろん評価は両曲とも[+++++]とします。派手さはありませんが、ハイドンをお好きな方には是非聴いていただきたい、燻し銀の名盤だと思います。
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