【新着】メータ/イスラエル・フィルの天地創造1986年ライヴ

最近発売されたアルバム。天地創造は久しぶりですね。

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HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORD

ズビン・メータ(Zubin Mehta)指揮のパリ管弦楽団合唱団、イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団の演奏でハイドンのオラトリオ「天地創造」。収録は1986年12月25日、イスラエルの首都テル=アヴィヴのマン・オーディトリウムでのライヴ。レーベルはイスラエルのhelicon classics。

このアルバムはHMV ONLINEの解説によれば、イスラエル・フィルの創立50周年記念コンサートとして開かれたコンサートの模様をライヴ収録したもの。

イスラエル・フィルは1936年、ヴァイオリニストのブロニスラフ・フーバーマンの呼びかけでヨーロッパ各地で政治的理由で解雇された若いユダヤ人演奏家が集まって設立されたオーケストラ。設立当初はパレスチナ管弦楽団と呼ばれていましたが、1948年にイスラエル・フィルハーモニー管弦楽団と改称されました。最初の演奏会は、1936年12月26日にテル=アヴィヴでトスカニーニの指揮によって行われました。1968年からはズビン・メータが終身音楽監督を務めており、メータとの録音が多いことでも知られています。またユダヤ系ということでレナード・バーンスタインとも多くの演奏があります。このイスラエル・フィルのアニヴァーサリーに際して、メータが天地創造を振るというのは頷けるところ。

メータの若い頃の演奏は学生時代にかなり聴きました。当時はLPがメインのソースの時代。ロサンジェルス・フィルで有名曲をずいぶん録音し、中でもマーラーの3番や惑星、シェエラザードなどはなじみのアルバム。曲をわかりやすくスペクタクルに聴かせるところがメータの真骨頂でした。LPで聴いたLondon/DECCAのオンマイク気味の録音のロサンジェルス・フィルの張りのある響きは、新しい時代を感じさせるようなワクワク感がありました。ロサンジェルス・フィルの低音弦と弾むように打たれるティンパニの響きはメータのコントロールならではのもの。また、当時重量盤でリリースされていたシェエラザードは音溝がもの凄い幅で刻まれ、終楽章ではウーファーが吹き飛ばんばかりの超優秀録音でした。
ただ、その鮮烈な印象は徐々に薄れ、最近ではウィーンフィルをたびたび振るなどメジャーな存在ながら、その演奏の印象は大人しく、地味なもに変わってきていました。日本での人気も昔程ではないように感じます。
メータを少し見直したのが、東日本大震災のチャリティとして企画されたN響の第九とミュンヘンで3つのオケを振った第九。何れもテレビで観ましたが、これまで地味に聴こえた最近のメータの演奏に、静かな魂の炎が見えるような素晴らしい演奏でした。これまでのメータの演奏には聴こえなかったのか、それともこちらに聴き取る耳がなかったのかはわかりませんが、メータの最近の演奏のツボがわかった気がしました。

今日取り上げる天地創造は先にも触れた通り、1986年と今から四半世紀以上前の演奏。メータの手兵イスラエル・フィルの創立50周年を記念するライヴという事で、メータの気合いも充実していたはず。突然リリースされたこのアルバムでしたが、個人的には期待の大きいアルバムです。

歌手陣はガブリエルとエヴァ、ラファエルとアダムを1人でこなす3人構成。歌手も一流どころが配されてます。
 
ガブリエル/エヴァ:バーバラ・ヘンドリックス(Barbara Hendrics)
ウリエル:クリス・メリット(Chris Merrit)
ラファエル/アダム:ホセ・ヴァン・ダム(José Van Dam)

メータの魂の炎が見えますでしょうか。

Hob.XXI:2 / "Die Schöpfung" 「天地創造」 (1796-1798)
第一部
メータは予想通りゆったりとしたオーソドックスな響きをつくっていきます。序奏は弱音のコントロールが緻密なため緊張感を保っています。録音は1986年としてはもう少し鮮明さと潤いが欲しいところ。響きはデッドで足音のような低音のゴトゴトした音が少し入りますが、咳払い等はほとんど聴こえません。オケの迫力、コーラスの厚みなど天地創造では聴き所になる部分で録音がもうすこし良ければと思わせてしまいます。歌手陣は少し奥に定位する感じ。ラファエルのホセ・ファン・ダムは安定感抜群の輝かしいバス。円熟の至芸。自分の声の響きを完全にコントロールしているよう。ガブリエルのバーバラ・ヘンドリクスは声の伸び、安定感、緻密なヴィブラートと流石の出来。独特コケティッシュさが魅力。ウリエルのクリス・メリットは他の2人に比べてちょっと地味ですが、リズムや安定感はわるくありません。第一部の聴き所、ガブリエルのアリアでのヘンドリクスは絶品。可憐な声色と素晴らしい高音の伸び、最後の部分のホール中に轟く声量と神憑っています。これほど表情豊かなガブリエルのアリアは滅多にありません。メータはいい意味で力が抜けて淡々と進め、要所でパワーを入れる感じ。もう少し気負ってくるかと思いましたが、流石に全体を見通したコントロール。第九を聴いてから、このさりげないコントロールも悪くないと思っています。第10曲から13曲までの第一部のクライマックスへは、淡々とした中かに、メータ独特の旋律をわかりやすく浮かび上がらせてまとめて聴かせるスタイルで、大河のようにというよりは、1曲1曲の特徴を明確に描き分けながら、クッキリ感を主体にしたような流れ。最後はやはり大迫力ですが、第一部だからでしょうか、大爆発ではなくきっちりコントロールされたクライマックス。

第二部
第一部で聴き所が迫力ではなく緻密なコントロールにあるとわかり、名曲の多い第二部が楽しみになります。徐々にライヴとは思えないほどのメータの緻密なコントロールのペースにハマります。それぞれの曲をクッキリと描きながら、情緒的になることなく、大曲をきっちり進めていく感じは悪くありません。曲の美しさに焦点を当てるためにあえてダイナミックレンジを抑えているようにも聴こえます。歌手ではヘンドリクスが図抜けた存在感。
CDを2枚目に換えた途端、鮮明さが上がったように聴こえます。唸る低音弦! 歌手もオケも徐々に調子が上がってきて、演奏に力が宿り始めました。 3曲目のラファエルの「いまや天は光に溢れて輝き」、5曲目のウリエルの「威厳と気高さを身につけ」と、歌手もオケもクッキリと浮かび上がり、迫力も一段アップ。第26曲から29曲にかけての第二部のクライマックスへの流れは、第一部よりが盛り上がりを意識したものですが、やはり理性的なコントロールの効いたものでした。

第三部
目玉はやはりアダムとエヴァのデュエット。前半はひじょうにゆっくりとしたメータのテンポに乗ってヘンドリクスとファン・ダムの至福の掛け合い。遅めのテンポが実にいい雰囲気。歌を存分に楽しめます。後半はメータは歌手を引き立てるように伴奏に徹して歌主体のメリハリ。最後はこの曲一番の盛り上がり。レチタティーヴォを挟んで、再びアダムとエヴァのデュエット。デュエットの面白さは最初のものと同様素晴らしいのですが、最後のオケの聴かせどころの演出の面白さがメータならでは。やはり引き締まった表情のなかでコミカルなメロディーを非常にうまく聴かせています。最後の第34曲はやはりここにクライマックスがあったかと思わせる渾身の一撃から入ります。これまでの理性的なコントロールを振り返って、最後の瞬間にむけて歌手もコーラスもオケも振り切れます。最後はホールにアーメンの残響が消え入ります。拍手はカットされています。

ズビン・メータ指揮のイスラエル・フィルによるイスラエル・フィル創立50周年の記念コンサートのライヴ。ライヴだけにもうすこし祝祭的な演奏かと思いましたが、なんと爆発しない、歌の美しさ、曲の美しさを引き出す引き締まった演奏。この記念すべき日に、勢いや情緒に流されない緻密な演奏。これもメータのスタイルでしょう。ソロではバーバラ・ヘンドリクスが図抜けた存在感。他の歌手やコーラスもなかなかの出来です。前半の録音の鮮明さが足りないのが惜しいところです。評価は[++++]とします。

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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : 天地創造

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No title

Daisyさん、こんばんは。このCDの存在は見逃しており、知りませんでした。イスラエルPOが現代のイスラエルを建国する前に発足していたのには感心します。メータは湾岸戦争の時もテルアビブで敢然と演奏していたのが思い出されます。80年代後半にメータがマーラーの第5を振った時の評に「まるで台風のよう」という揶揄するようなものも見られ、ついそんな先入観を持ってしまいますが、これはなかなか理性的なようですね。

Re: No title

ライムンドさん、こんばんは。
昔はよく聴いたメータですが、最近かなりご無沙汰しています。ちょっと気になったので古いLPを取り出して聴いてみようと思っています。ウィーンフィルのニューイヤーコンサートにもちょこちょこ出ているところをみると、ヨーロッパでの人気はそこそこあるんでしょう。最近のアルバムももう少し利いてみたくなりましたが、ハイドンはなかなかないようですね。

No title

私にとってのメータは、VPOとのマーラー「復活」がリリースされた頃は同年代の指揮者のなかでも一頭抜きんでた存在でしたが、以降の評価は、Daisyさんとまったくかぶります。やはり、NYPOという伏魔殿のようなポストに就いたあたりが躓きのはじまりだったのでしょうか・・・
ともあれ、気心のしれたIPOとの当盤には、結構そそられますね。ちなみに「復活」は、4tr19cmのオープンリールのミュージックテープで所有しており、内周歪みが無いのとダイナミック・レンジの広さでLPを圧倒していました。(それでいて、2LP5,000円より廉価でした。同様なのはマゼールのブルックナー5番など)その後SHM-CDで買いなおしましたが、今度出るSHM-SACDのシングルレイヤーも行ってしまいそうです。

Re: No title

だまてらさん、こんばんは。
メータの復活、懐かしいですね。たしかにメータの復活はいいですね。渾身のとはこのことでしょう。私はCDですがオープンリールとはうらやましい。安定感のある図太い音で聴くのもいいですね。
若かりしころのメータの演奏が懐かしくなったので、ラックの取り出しやすい位置にあったホルストの惑星のLPを聴いています。やはりLPのリアリティは別格、眼前でティンパニが炸裂です。昔のメータ、聴かせ上手でしたね。
プロフィール

Daisy


Author:Daisy

ハイドン(Franz Joseph Haydn)の膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。私はなぜハイドンにはまったのか?

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登録曲数:1,365
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(2019年3月31日)
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