トーマス・ビーチャム/ロイヤル・フィルの四季

しばらくぶりの声楽曲。なぜか今まで一度も取りあげていないビーチャムです。

BeechamSeasons.jpg
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サー・トーマス・ビーチャム(Sir Thomas Beecham)指揮のビーチャム合唱協会、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の演奏でハイドンの最後のオラトリオ「四季」。収録は1956年から58年にかけてロンドンのアビーロードスタジオでのセッション録音。もともとEMIの録音かと思いますがSomm Recordingsというイギリスのレーベル。

ソロは下記の通り。

ハンネ:エルシー・モリソン(Elise Morison)
ルーカス:アレクサンダー・ヤング(Alexander Young)
サイモン:マイケル・ラングドン(Michael Langdon)

このアルバム、気になるのはジャケットに"Premier CD Release"との表記があること。演奏者と録音年代表記が同じCDがEMIからもリリースされていますが、こちらの方がリリースが早かったのでしょうか。このアルバムは2003年、EMIの四季の現行2枚組盤が2004年とありますので、やはりこちらが先だったということかもしれません。版権など詳しいことはわかりませんが、このアルバムは解説や歌詞などアルバムの造りもしっかりしており、"Premier CD Release"という気概に溢れた表示も納得です。

ビーチャムはイギリスの古き良き時代の指揮者と言うイメージもあります。ハイドンではザロモンセットの録音があり、そのザロモンセットも骨格のしっかりした十分にコントロールされユーモアと驚きもある素晴らしいもの。このアルバムのライナーノーツによると、ビーチャムはコンサートのプログラムに常にハイドンの曲を入れていたとのこと。1905年6月5日のベヒシュタイン・ホール(現在のウィグモア・ホール)でクィーンズ・ホール管弦楽団との太鼓連打の演奏から、1960年5月7日のポーツマスのギルドホールでの彼の最後のコンサートでの軍隊の演奏まで、ハイドンの曲が欠けた事がないとのこと。

サー・トマス・ビーチャムはWikipediaなどによれば、1879年イギリスのイングランド北西部にあるランカシャー州セント・ヘレンズ生まれの指揮者。なんとビーチャム製薬というグラクソ・スミスクライン製薬の前身の製薬会社の御曹司という恵まれた立場。音楽はいろいろな機会に学んだものの専門教育は受けていないという事です。アマチュア・オーケストラの指揮者として経験を積んだあと、1899年に代役でハレ管弦楽団を指揮する機会を得てプロの指揮者としてデビューしました。その後、私財を投じて巡業オペラ団や自前のオーケストラを創設します。1910年からはロイヤル・オペラ・ハウスを借り切って自身で選んだオペラを上演、1915年にはイギリス・オペラ・カンパニーを創設し、しばらくはオペラ指揮者として活動しました。つづいて1932年にロンドン・フィルハーモニー管弦楽団を創設。また同年にロイヤル・オペラ・ハウスの音楽監督に就任し、再び自分の望みどおりのオペラ上演に専念できるようになりました。この頃からイギリス国外での指揮活動も始め、ニューヨーク・フィルやザルツブルク音楽祭(1931年)のにも出演するようになりました。大戦中はアメリカとオーストラリアで活動を行い、メトロポリタン歌劇場にしばしば出演するようになります。アメリカでの活動が多くなることでロンドン・フィルを手放す結果となったため、1946年には新たにロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団を創設するなど生涯にわたりイギリス音楽界に多大なる貢献をしたとのことです。そして1960年、ロイヤル・フィルの次期首席指揮者にルドルフ・ケンペを指名して、現役を事実上引退し、翌1961年に亡くなりました。

ということでこの四季は亡くなる数年前のビーチャム最晩年の録音ということになります。

Hob.XXI:3 / "Die Jahreszeiten" 「四季」 (1799-1801)
冒頭からかなり遅いテンポで入ります。じっくりじっくり噛み締めていくような演奏。アビーロードスタジオの録音に共通した、直接音重視の迫力ある響き。録音はステレオで、1950年代の録音としては悪くありません。
歌詞はドイツ語ではなく英語翻訳版を使っています。コーラスが入ると絢爛豪華な感じが一層増します。ソロはルーカスのアレクサンダー・ヤングが浸透力あるテノール、ハンネのエルシー・モリソンは可憐でコケティッシュなソプラノ、サイモンのマイケル・ラングドンは鋼のようなバスと盤石の布陣。春のクライマックスに至る盛り上がりもじっくりした陶酔感。あらかじめ緻密な設計があったことを思わせる明解な骨格設計が聴き所です。全体の骨格を明確にするために、ディティールもキレの良い演奏。夏の穏やかな表情、秋のじわりと盛り上がる表情と地響きをともなうホルンの号砲、冬の険しい表情と最後に見せる祝祭感の見事さなど、あらかじめ演奏設計がきちんとしていることを窺わせる渾身のコントロールです。

短いレビューでしたが、ビーチャムのハイドンはやはり安心して聴いていられる抜群の安定感が特徴と言えるでしょう。演奏をとおしてきっちりした骨格と、ディティールではそこここに歯切れの良さを聴かせ、また入り込みすぎないバランスの良いコントロールとハイドンの演奏に必要なすべての要素がちりばめられています。ハイドンをことさら愛したビーチャムならではの演奏と言うことができるでしょう。これは四季の基本的名演として多くの人にお勧めしたいアルバム。交響曲のドラティ盤と同様のハイドン演奏史に残る演奏と言えるでしょう。評価はあらためて[+++++]とします。

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ハイドン(Franz Joseph Haydn)の膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。私はなぜハイドンにはまったのか?

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(2019年3月31日)
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