レイモン・レッパード/イギリス室内管のラメンタチオーネ

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ネヴィル・マリナー(Sir Neville Marriner)指揮のアカデミー室内管(Academy of St Martin in the Fields)によるハイドンの名前つき交響曲集。そのなかの26番ラメンタチオーネと47番の2曲だけがレイモン・レッパード(Laymond Leppard)指揮のイギリス室内管弦楽団(English Chamber Orchestra)の演奏です。今日はその中からCD2の1曲目に収録されている26番ラメンタチオーネを取りあげます。ラメンタチオーネの収録は1970年5月となっています。
レイモン・レッパードの演奏は過去に取りあげていますが、昔の記事なのでちゃんとレビューしていません(笑)
2010/06/05 : ハイドン–交響曲 : レイモン・レッパードのハイドン
レイモン・レッパードは1927年ロンドンに生まれ、イングランド西部のバース(Bath)で育った指揮者、ハープシコード奏者。ケンブリッジのトリニティ・カレッジでハープシコードとヴィオラを習い、最初は合唱指揮者、そしてケンブリッジ・フィルハーモニー協会の音楽監督になりました。1960年代に入るとバロックオペラの復興にともない、演奏に力を入れるようになり、そして、バロックオペラを指揮する著名な指揮者に名を連ねました。後にバロック音楽に留まらず幅広いレパートリーを演奏するようになりました。1960年代から1970年代にはこの演奏のオケであるイギリス室内管弦楽団に頻繁に客演するようになりました。1973年から1980年までBBCノーザン管弦楽団(現BBCフィルハーモニック)の首席指揮者、その後アメリカ渡りインディアナポリス交響楽団の音楽監督となり、現在同楽団の名誉指揮者の地位にあります。
Hob.I:26 / Symphony No.26 "Lamentatione" 「ラメンタチオーネ」 [d] (before 1770)
このアルバムに収められたマリナーの演奏が、キビキビ感と透明感を主体とした演奏であるのと比べると、ちょっとざらついたオケの響きと、じっくり慈しみ深い演奏が特徴。シュトルム・ウント・ドラング期の傑作交響曲ラメンタチオーネの1楽章はキビキビとした中にもほの暗さと、強い情感を持った曲。リズムがほんの少し練るような重いようなトーンではありますが、力強い推進力があるせいで、あまり鈍い感じはしません。非常に生真面目に太い筆でじっくり描く書を観るような心境。
有名なアダージョはじわりと来るじっくりした演奏。ただ演奏するだけで情感がにじみ出る曲ですが、ほんとうにただ楽譜通りに、ちょっと単調な演奏。ただ、この単調さというか無骨さが貴重なんでしょう。テンポもデュナーミクも変化は最小限。なぜかあまり悪い印象を与えず、むしろ無骨の美学のように聴こえるのが不思議なところ。切々と演奏され、ちょっと心に刺さります。
終楽章はメヌエット。この楽章は逆に無骨さがちょっと裏目にでています。流麗ではない墨のあとが残る書のような趣ですが、全体の印象がちょっと固く、もう少しの洗練が欲しいと思わせてしまいます。オケの線もちょっとそろわず、演奏の記録としても、もうひと超え欲しいところです。2楽章では朴訥さがいい方向に働きましたが、フィナーレでは単調さにつながってしまいました。
マリナーの影に隠れた存在であるレイモン・レッパードの交響曲26番「ラメンタチオーネ」。朴訥なタッチによって描かれるシュトルム・ウント・ドラング期の名曲ですが、他の名演盤と比べると、音楽的な熟成には差があるのが正直なところ。ただ朴訥な演奏はメインの2楽章ではいい方に働きます。楽章間の対比はほどほどで、一貫した調子であることで、曲の変化の幅もちょっと限られる感じです。評価は[+++]としたいと思います。
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