作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ラルキブデッリ、モッツァフィアートによるナポリ王のための8つのノットゥルノ

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今日は夜想曲を。

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マルテン・ルート(Marten Root)のフルート、ミカエル・ニーゼマン(Michael Niesemann)のオーボエ、モッツァフィアート(Mozzafiato)とラルキブデッリ(L'Archibudelli)の演奏で、ハイドンのリラ・オルガニザータのためのノットゥルノ集。通称「ナポリ王のための8つのノットゥルノ」。収録は1996年10月27日から30日、オランダ、ハールレムのルター教会でのセッション録音。レーベルはSONY CLASSICAL。

この曲は、もともとリラ・オルガニザータという楽器のために書かれた曲。この曲ははじめて取りあげますが、リラ・オルガニザータは協奏曲の方を3度取りあげています。楽器の解説等はウォルフガング・シュルツの記事をご参照ください。

2012/01/11 : ハイドン–協奏曲 : シュツットガルト・ソロイスツのリラ・オルガニザータ協奏曲、オルガン協奏曲
2011/09/02 : ハイドン–協奏曲 : 【新着】ウォルフガング・シュルツによるリラ・オルガニザータ協奏曲
2011/04/29 : ハイドン–交響曲 : ブリュッヘン/モーツァルテウムのリラ・オルガニザータ協奏曲、84番

前の記事え触れたように、ナポリの王フェルディナンド四世はリラ・オルガニザータという楽器をノルベルト・ハドラヴァという人に教わり、国王がハラドヴァと一緒に演奏できるように様々な作曲家に2台のリラ・オルガニザータのため協奏曲の作曲を委嘱しました。ハイドンのリラ・オルガニザータのための協奏曲5曲は、国王がハイドンに委嘱して作曲されたもの。この曲を作曲した後、国王からナポリの宮廷を訪問するよう招請されましたが、訪問は実現せず、その代わりに、今日取り上げる曲のうちの最初の6曲の作曲をされたもの。さらに3曲を作曲し、そのうち1曲は消失したとされており、その8曲が今日のアルバムの収録曲ということになります。

もともとリラ・オルガニザータのために作曲されたもの。ハイドンがロンドンを訪問した際に演奏しようとしましたが、ロンドンにはリラ・オルガニザータという珍しい楽器をを演奏できる奏者がおらず、ハイドン自身がリラ・オルガニザータの独奏パートをフルートとオーボエに書き換えて、ロンドン版が出来、以後このロンドン版によって演奏され続けています。

曲の概要を紹介しながら簡単にレビューしていきましょう。

Hob.II:25 / Notturno No.1 [C] (1789/90)
音楽の楽しさに溢れた曲の入り。ノットゥルノというよりディヴェルティメントです。6曲目までの編成はフルート、オーボエ、クラリネット2本、ホルン2本、ヴィオラ2本、チェロ、コントラバスという非常に変わったもの。行進曲-アレグロ-アダージョ-プレストの4楽章構成。ナポリ国王の演奏を意識してか明るく歯切れ良くウキウキするような曲想。もともとのリラ・オルガニザータが手回しオルガンのようなオモチャっぽい響きを聴かせるためか、曲もそれに合わせたもののようです。曲の造りはかなり手がこんでいて、各楽器間のスリリングなやり取りが緊密。非常に聴き応えがあります。

Hob.II:26 / Notturno No.2 [F] (1789/90)
つづいて3楽章構成の曲。アダージョの序奏をもつアレグロ・スピリトーソ-アレグロ・コン・ブリオ。1楽章は厳かな序奏ではじまり、主題以降は祝祭感が漂うもの。奏者は腕利きらしく、それぞれのパートを活き活きと奏でます。この曲はアダージョの美しさが印象的。フルートとオーボエが交互に奏でるメロディーが非常に美しい。フィナーレは成熟したハイドンの筆致が感じられる素晴らしい陶酔感。

Hob.II:32 / Notturno No.3 [C] (1790)
コミカルな曲想が印象的な3楽章の曲。アレグロ・モデラート-アンダンテ-モルト・ヴィヴァーチェ。いつも感心するのは、このような曲集に一つとして同じ曲想がなく、どれもそれぞれ独特の個性をもっていること。国王もこれは気に入るでしょう。

Hob.II:31 / Notturno No.4 [C] (*1790)
このアルバムの最初の6曲の中でも最も充実した曲。こちらも3楽章。アレグロ-アダージョ-フィナーレという構成。木管の音色の特色の真髄をついた素晴らしい曲。1楽章から痺れます。やまびこのようにメロディが重なる美しい曲。ナポリ国王からの注文による曲ですが、手抜きなし。フィナーレの充実ぶりも素晴らしいものがあります。

Hob.II.29 / Notturno No.5 [C] (1790)
アレグロ-アンダンテ-フィナーレの3楽章構成。1楽章は少し影のある曲想。アンダンテでぐっとテンションを落として静けさをを表現。そしてフィナーレはフーガ。どこかで聞き覚えのあるメロディーをキーとしたものですが、思い出せません。

Hob.II.30 / Notturno No.6 (fragment) [G] (1790)
6曲セットの最後は断片ということで、2楽章構成。プレスト-アンダンテでフィナーレが消失しているとのこと。ここまでのなかでも、木管が目立つ曲。ちょっとモーツァルトのグラン・パルティータを思い起こさせます。

Hob.II:28 / Notturno No.7 [F] (1790)
この曲と次の曲は楽器構成が変わります。フルート、オーボエのソロは変わらずですが、クラリネット2本がなくなり代わりにヴァイオリン2本。ヴァイオリンはヴェラ・ベスとルーシー・ファン・ダールという名手。ヴァイオリンが加わることでアンサンブルの華やかさが一段と強調されますね。前の6曲が木管アンサンブルに近い響きだったのと明確に響きが変わります。アレグロ・モデラート-アダージョ-フィナーレという3楽章構成。曲調も落ち着いた方向に成熟しているよう。また曲も少し長くなってます。前6曲が祝祭感に溢れた音楽だったのに対して、この曲は本来の夜想曲に近いニュアンスをもっています。夜演奏して楽しむのに相応しい静寂感を持っています。アダージョは不思議な恍惚感があります。

Hob.II:27 / Notturno No.8 [G] (*1790)
ラルゴの序奏からアレグロ-アダージョ-フィナーレの3楽章。やはり最後の曲だけあって曲の充実ぶりが際立ちます。ハイドンは交響曲や弦楽四重奏曲などが有名ですが、こうした小品も良く聴くと素晴らしい充実ぶり。特に2台のヴァイオリンが交互にメロディーを掛け合うとところが秀逸。ヴァイオリンがさざめくような感じも繊細でいいですね。曲のスケールも大きく大きくなり、ナポリ王のほくそ笑む姿が目に浮かぶようです。

モッツァフィアートとラルキブデッリという古楽器の名手たちによるハイドンのノットゥルノ集。演奏は流石に名手ぞろいなので言うことなし。キレのいいリズムと鮮度の高い響きがハイドンの隠れた名曲の素晴らしさを見事に表現しています。こうした小曲集も良く聴くとハイドン特有の美しいメロディーと構成感があり、うなされるものがあります。評価は全曲[+++++]とします。

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