作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ハルトムート・ヘンヒェン/C.P.E.バッハ室内管のラメンタチオーネ、受難、悲しみ

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今日はお気に入りのハルトムート・ヘンヒェンの名前つき交響曲集から。

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HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

ハルトムート・ヘンヒェン(Hartmut Haenchen)指揮のカール・フィリップ・エマヌエル・バッハ室内管弦楽団の演奏によるハイドンの名前つき交響曲集。全6枚に交響曲18曲、序曲1曲を収めたアルバム。今日はその中からCD1の交響曲26番「ラメンタチオーネ」、49番「受難」、44番「悲しみ」、歌劇「無人島」序曲(Hob.Ia:13)の4曲を取りあげます。収録は1987年11月と手元の記録にはありますが、ライナーノーツには記載されていません。レーベルはedel CLASSICS。

このアルバムからは以前「哲学者」を取りあげていますが、すばらしい演奏でした。演奏者などの情報はこちらの記事をご参照ください。

2011/01/26 : ハイドン–交響曲 : ハルトムート・ヘンヒェンの哲学者

なんとなく交響曲のいい演奏が聴きたくなり取り出したアルバム。今日はシュトルム・ウント・ドラング期の傑作交響曲を選びました。

Hob.I:26 / Symphony No.26 "Lamentatione" 「ラメンタチオーネ」 [d] (before 1770)
柔らかい音色のオーケストラが繊細なハープシコードの響きを伴って、この曲独特のほの暗い旋律を生気溢れる演奏で描いていきます。ヴァイオリンの軽さと低音弦の迫力、リズムのキレの良さが抜群。小編成オケでしょうが響きのまとまりは非常に良く、まさにこの曲独特の雰囲気を万全に表していきます。活き活きとしたメロディ、哀愁に満ちた響き、小気味好いキレ。必要十分というか完璧です。
2楽章のアダージョは爽快さを感じさせるほどの速めのテンポ。メロディーラインの描き方が上手く、速いながらも情感は十分。こなれた音響によるすばらしい感興。録音は鮮明さは最新のものに劣るものの鑑賞には十分。繊細なハープシコードの響きが雅さを加えています。オケは奏者全員が高い音楽性を身につけているよう。
フィナーレはこれ以上ないほどの生気が漲る演奏。インテンポで入るアタックのキレが素晴らしく、肩に力が入っていないのに踊り出すような音楽。中世のバシリカの窓から差し込む光が、重厚な石積みの立体感を活き活きと浮き彫りにしているよう。ラメンタチオーネにはニコラス・ウォードの中庸の美学を極めた名演盤がありますが、このヘンヒェンの演奏も速めのテンポによる、爽快なのに実に味わい深い名演と言えるでしょう。

Hob.I:49 / Symphony No.49 "La passione" 「受難」 [f] (before 1768)
深く沈み込むオーケストラの音色。大きく表情を浮き彫りにする素晴らしいフレージング。彫りの深い演奏はまるで部屋にパルテノン神殿が出現したよう。絶妙の呼吸とデュナーミク。暗黒の淵を覗くような深い情感。名演の予感です。冒頭から素晴らしい響き。ハープシコードもじつに効果的。1楽章は圧巻の出来です。ヘンヒェンのコントロールは情感と立体感をバランス良く表現。くどさもわざとらしさも感じさせず、見事という他ありません。
2楽章に入り速度はあまり上げませんが、やはりエネルギーが満ちてきます。高低に変化する旋律の対比がすばらしいですね。音階が音の連なりの糸を引くようなところがなく非常にキレのいいのが特徴。音色も柔らかくするところとカッチリするところメリハリが見事。なにより音楽が活き活きとしていて、ハイドンの見事な音楽がまさに生きているような進行。
メヌエットも安心して聴いていられる安定感。弦楽器に宿るうら悲しいエネルギーが顔を出すたびに、この曲がシュトルム・ウント・ドラング期の作品であることを思い起こさせます。
フィナーレは、予想していたのとは少し異なり、流すような流麗なもの。最後にこの力の抜き具合は見事です。1楽章の圧倒的な存在感がこの演奏のポイント。

Hob.I:44 / Symphony No.44 "Trauer" 「悲しみ」 [e] (before 1772)
名曲「悲しみ」。穏やかに入りますが、最初のテーマの速い音階にちょっと癖のある表情で変化をつけます。前2曲にくらべて、力が抜けた演奏と言えるでしょう。1楽章の聴き所であるヴァイオリンの音階はことさらキレを強調する事なく、音楽全体の流れを重視するようですが、音楽がすすむにつれて徐々にエネルギーが満ちていき、最後にクライマックスを持っていくあたりが流石。
メヌエットはハイドンのこの時期の交響曲のなかでも素晴らしい出来のもの。メヌエットなのに情感が溢れ出す素晴らしいもの。ヘンヒェンはこのメヌエットの魅力を余裕たっぷりに表情をつけ、じっくりと描いていきます。やはりフレージングの上手さが際立ち、さりげないのに表現の彫りの深さは素晴らしいですね。
アダージョも絶品。立ちのぼるシュトルム・ウント・ドラング期の香り。ハイドンの時代にタイムスリップしたよう。
フィナーレは弦楽器のキレが最高潮に。弦楽器のキレがメロディーを見事に浮き上がらせ、ザクザクとメロディーを刻んでいきます。最後に迫力を見せつけて終了です。

Hob.XXVIII:9 / "L'isola disabitata" 「無人島」 (1779) 序曲
最後はオペラの序曲。シュトルム・ウント・ドラング期のちょっと後の作曲。序奏から独特の劇性があり、じっくりと畳み掛ける主題、ほのかな明るさを感じさせる中間部と、なかなか聴き応えのある曲。ここでもヘンヒェンはじっくりとオペラの幕が上がる前のざわめき感を上手く聴かせて、このアルバムの素晴らしい演奏を締めくくります。

ハルトムート・ヘンヒェンとカール・フィリップ・エマヌエル・バッハ室内管弦楽団の演奏によるハイドンのシュトルム・ウント・ドラング期の傑作交響曲3曲の演奏。昔から好きなアルバムでしたが、あらためて取り出して聴くと、その素晴らしさはやはり図抜けています。やはり説得力がちがうというか、ハイドンの時代にタイムスリップしたような素晴らしい響きを聴かせてくれます。評価は序曲を含めて4曲全曲[+++++]です。

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