作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ヤナーチェク弦楽四重奏団の「冗談」(ハイドン)

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久々のOp.33。

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TOWER RECORDS

ヤナーチェク四重奏団(Janáček String Quartet)の演奏にによるハイドンの弦楽四重奏曲Op.33のNo.2「冗談」、ヤナーチェクの四重奏曲1番、ドヴォルザークの弦楽四重奏曲Op.96「アメリカ」の3曲を収めたアルバム。収録は2000年1月、チェコでもウィーンに近いブルノ・ザーブルドヴィツェの前プレモントレ修道会の食堂でのセッション録音。レーベルはTop Moravia Artというはじめて手に入れるレーベル。

演奏を担当するヤナーチェク四重奏団は1947年にチェコのブルノ音楽院の学生によって結成されたクァルテット。オフィシャルウェブサイトがありましたので紹介しておきましょう。

Janacek Quartet

設立当時はJAMU四重奏団と言う名前でヤナーチェクの類いまれな演奏、録音により1949年ブルノ出身の偉大な作曲家ヤナーチェクの名を冠するクァルテットとなりました。メンバーはそれぞれ何度かかわったものの現在でも現役のクァルテット。この演奏当時のメンバーは下記のとおり。

第1ヴァイオリン:ミローシュ・ヴァチェク (Miloš Vacek)
第2ヴァイオリン:ヴィテズスラフ・ザバディリク(Vítězslav Zavadilík)
ヴィオラ:ラディスラフ・キセラーク(Ladislav Kyselák)
チェロ:ブレティスラフ・ブイビラル (Břetislav Vybíral)

ヴィオラ以外は現在のメンバーと同一メンバーのようです。オフィシャルウェブサイトにはこのアルバムに収められたヤナーチェクの弦楽四重奏曲の音源がアップされている他、他のアルバムも紹介されており、ハイドンでは十字架上のキリストの最後の七つの言葉の録音もあるようです。これは手に入れなくてはなりませんね。

ハイドンの弦楽四重奏曲Op.33は1781年の作曲。シュトルム・ウント・ドラング期の傑作四重奏曲Op.20から9年後の作品。このOp.33はロシア四重奏曲集と言われていますが、前作が緊密な構成感とほの暗い独特の表情で知られるのに対し、単純明快で長調の美しい旋律に満ちた曲集。いつも紐解く中野博詞さんの「ハイドン復活」ではこの時期、以前ヌリア・リアルのオペラ挿入アリア集の記事で触れた、ルイジア・ポルツェリという美しい歌手との恋がこのロシア四重奏曲の磨かれた美しさに影響があるとしています。ヌリア・リアルの記事は以下のとおり。

2010/11/06 : ハイドン–オペラ : ヌリア・リアルのオペラ挿入アリア集

Hob.III:38 / String Quartet Op.33 No.2 "The Joke" 「冗談」 [E flat] (1781)
冒頭から揺るぎない素晴らしい充実した響き。ずば抜けた安定感。堅実な演奏から音楽が吹き出してくるよう。すこし残響が多めの録音ですが、過度ではないためゆったり音楽を楽しめます。磨き抜かれた各楽器。引き締まっていながら美しく磨かれた響き。完璧なプロポーションのギリシャ彫刻のような完成度。大理石の透き通るような白の美しさに満ちています。テンポは落ち着いていますが、各楽器が攻め込むように交互に掛け合い、リズムのキレも抜群。ヤナーチェク弦楽四重奏団、恐ろしいほどのテクニックと音楽性です。ヴァイオリンのヴァチェクの伸び伸びとした美しい音色が素晴らしいですね。
2楽章はスケルツォ。有り余るテクニックを誇示せず音楽をゆったりと表現するような余裕たっぷりの演奏。ここでも素晴らしい音楽の立体感。
3楽章のラルゴは完璧なアンサンブルで、独特の美しいフレーズを静かに奏でていきます。心に楔を打つような激しいアクセントを交えて、磨き抜かれた美しい弦を響き渡らせます。ヴァイオリンの伸びのある音色はここでも素晴らしいですが、チェロの控えめながらしっとりした音色も印象的。あまりのアンサンブルの精度に息を飲むような緊張感。
フィナーレの入りは素晴らしい軽さ。徐々に楽器が重なっていき響きが厚くなっていく様子は見事の一言。コミカルな表情のこの曲を、絶妙の間を挟みながら、抜群の機知を感じさせます。

ヤナーチェク四重奏団ははじめて聴きますが、あまりの素晴らしさに腰を抜かしたほど。なるほどヤナーチェクの弦楽四重奏曲の類いまれな演奏を出来るということが有り余るテクニックを示していますね。この[冗談」は抜群の出来。ヤナーチェクのスペシャリストであると同時にハイドンのスペシャリストと言っても過言ではありません。ヤナーチェク独特の情感を存分に表す力をもって、ハイドンの晴朗な四重奏曲を碧々と突き抜けんばかり青空のもとに表現しており、見事の一言。評価はもちろん[+++++]。このあとのヤナーチェク、ドヴォルザークも渾身の演奏。このアルバムあまり売り場でもネットでも見かけませんでしたが、弦楽四重奏好きの皆様にはぜひお薦めしたい名盤です。

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2 Comments

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だまてら

No title

暑中お見舞い申し上げます。
おお!普段見かけない盤で今度探してみます。また「冗談」では、同じヤナーチェクSQでも(全員では無いと思いますが)創立メンバーによるデッカへの1963年録音が絶品です。
http://tenant.depart.livedoor.com/t/eterna-trading/item7785885.html
個人的な選択は、作品33の6曲セットなら、同じくデッカのウェラーですが「冗談」1曲ならやはりトラブニーチェク率いるこの旧盤になります。DGから出た7枚組CD(現在廃盤か?)にも収録されており、Cdにしては好感のもてるリマスターで、1楽章の途中ではスタジオの屋外を通る自動車の音がはっきりと聞き取れます。

  • 2012/07/29 (Sun) 07:39
  • REPLY

Daisy

Re: No title

だまてらさん、おはようございます。
暑中お見舞い申し上げます。
こちらは、お持ちでなかったんですね。ウェラーはなぜかまだ未入手です。ちなみにヤナーチェク四重奏団に旧盤があるのですね。この新盤を聴いたら旧盤は手に入れたくなります。メンバーは新盤とは違うと思いますがかなり期待できそうですね。ウェラーも手に入れなくては、、、

  • 2012/07/29 (Sun) 08:01
  • REPLY