作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

クーベリック/バイエルン放送響の99番1982年9月7日ライヴ

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昨日につづいてライヴCD-R。

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ラファエル・クーベリック(Rafael Kubelik)指揮のバイエルン放送交響楽団の演奏で、ヘンデルのコンチェルト・グロッソOp.6-6、ハイドンの交響曲99番、ドヴォルザークの交響曲8番の3曲を収めたアルバム。収録は1982年9月7日のライヴ。収録会場の表記はありませんが、コンサートプログラムをそのまま収録したものだと思われます。レーベルはこちらもCD-Rでは良く見かける米GNP。

ラファエル・クーベリックはおなじみかと思いますが、一応Wikipediaから略歴をさらっておきましょう。1914年チェコのビーホリー (Býchory) 生まれの指揮者、作曲家。1996年にスイスのルツェルンで亡くなっています。父は世界的なヴァイオリニスト、ヤン・クーベリック。プラハ音楽院でヴァイオリン、作曲、指揮を学び、1934年にチェコ・フィルハーモニー管弦楽団を指揮してデビュー。1936年にチェコ・フィルの常任指揮者、1939年にブルノの国立歌劇場の音楽監督に就任。そして1942年、指揮者ヴァーツラフ・ターリッヒがナチス政権に反抗して解任された後をうけ、チェコ・フィルの首席指揮者に就任。1948年にチェコスロバキアで共産党を中心とした政権が成立すると、チェコの共産化に反対し同年のエディンバラ音楽祭へ参加するために渡英し、そのままイギリスへと亡命しました。1950年から1953年までシカゴ交響楽団の音楽監督、1955年から58年までコヴェント・ガーデン王立歌劇場の音楽監督を務めました。1961年にはこのアルバムで演奏するバイエルン放送交響楽団の首席指揮者に就任し、この録音の直前の1979年までその任にありました。この間クーベリックと楽団は1965,75年の2回の来日公演を含む、全世界規模での海外ツアー、ドイツ・グラモフォン、アメリカCBSなどへの多くの録音を実現し同楽団を世界的水準のオーケストラとしました。クーベリックの録音はこの頃のものが多く残っているのでおなじみの方も多いでしょう。

当ブログではクーベリックの演奏を3度取りあげています。

2012/01/27 : ハイドン–声楽曲 : クーベリック/バイエルン放送響の「戦時のミサ」
2010/10/11 : ハイドン–協奏曲 : フルニエ/クーベリックのチェロ協奏曲2番
2010/05/24 : ハイドン–オラトリオ : クーベリックの天地創造

クーベリックのハイドンはまさに中庸の美学そのものの演奏。録音は多くないものの虚飾なし、誇張なし、充実した響きを伴ったタイトな演奏。この99番には同じバイエルン放送響を振った、1982年5月4日のライヴもあり、クーベリックが99番を得意としてたことが窺えます。

Hob.I:99 / Symphony No.99 [E flat] (1793)
CD-Rらしからぬ図太く実体感満点のオーケストラの序奏。まさにクーベリックらしいアポロン的中庸さを体現した演奏。内声部の響き合う美しさ、中庸なテンポの安心感、安定感抜群のオケの信頼感の塊のような演奏。適度な推進力と適度な抑揚、これ以上オーソドックスな演奏はあり得ないほどの揺るぎないバランス感覚。99番という燻し銀のような美しさをもった曲の演奏としては理想的なもの。ライヴである事を忘れてしまうほどの演奏の完成度。支えているのは磨き込まれた弦楽セクションを中心としたバイエルン放送響の手堅い演奏。良く聴くとヴァイオリンのキレの良さ、各楽器のクッキリと立体感溢れる演奏が素晴らしいですね。1楽章は鉄壁の出来。
この曲の白眉2楽章のアダージョ。いきなり息の長い木管楽器が息を飲むような美しさで迫ります。そして弦楽器群による大波がつぎつぎと襲ってくる部分。外洋の大きなうねりに浮かんで身を任せているような自然の迫力を重力と静かなうねりの中に感じるようなじわりとつたわる迫力。絶品。
アダージョの火照りを鎮めるようなさっぱりとしたメヌエット。ここでも感情はおさえつつ、音楽的なエネルギーの高まりをふつふつと感じさせる絶妙のコントロール。中間部の滑らかなメロディーが表現に変化を与えますが、ふたたびさっぱりとキレの良い舞曲に戻ります。この辺の表情の変化はまさに通好みのところでしょう。
フィナーレはこれまでの抑えた表現の中での音楽の展開から解き放たれるような位置づけ。じわりとつたわる良さを聞き続けてきた耳には、フィナーレの主題以降の展開は微妙ながらも吹っ切れたもの感じさせます。まさに表現のデリカシーを感じる部分。決して爆発したような吹っ切れ方ではないものの、フィナーレの、表現上の爆発ではなく音楽の爆発をじわりと聴かせる素晴らしい演出。まさに違いのわかる人にはたまらない演奏。最後は嵐のようなブラヴォーに迎えられます。

まさに99番の美点を完璧に表現した演奏。ライヴとしては完璧な演奏、録音。おそらくクーベリックの演奏するハイドンの曲ではこれまで聴いた中ではベスト盤と言っていいでしょう。このあとおかれたドヴォルザークの8番もライヴとしては神憑ったような素晴らしい演奏。CD-Rとはいえ、このアルバムはクーベリックの素晴らしさを伝える貴重なものでしょう。評価はもちろん[+++++]。これは痺れました。

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