作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

【新着】クリスチャン・ゲルハーヘルの歌曲集

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今日は久々の歌曲のアルバム。

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HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

クリスティアン・ゲルハーヘル(Christian Gerhaher)のバリトン、ゲロルト・フーバー(Gerold Huber)のピアノによるベートーヴェン、シェーンベルク、ハイドン、ベルクなどの歌曲を集めたアルバム。収録は2012年1月21日から24日、26日、ミュンヘンのバイエルン放送第2スタジオでのセッション録音。レーベルはSONY CLASSICAL。ハイドン以外の収録曲目はHMV ONLINEのリンクをご覧ください。

クリスティアン・ゲルハーヘルは1969年、ドイツミュンヘン北東のシュトラウビング生まれのバリトン。ミュンヘン国立音楽大学のオペラ科出身で、ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ、エリザベート・シュヴァルツコプフのマスタークラスで学んだ人。このアルバムで共演しているピアノのゲロルト・フーバーとは同年生まれで同窓。フーバーは現在はゲルハーヘルの専属ピアニストとのこと。

ゲルハーヘルはこれまでハイドンではアーノンクールのアルバムに多く登場しており天地創造のラファエル/アダム、四季のシモン、そして「騎士オルランド」のロドモンテ役などの録音がありますが、ハイドンの歌曲の録音はおそらくはじめて。HMV ONLINEを検索してみると49枚ものアルバムがリリースされており、バッハからマーラー、現代音楽まで幅広いレパートリーを誇ります。現代の名バリトンの一人ということでしょう。

このアルバムに収められているのは、ハイドンが49歳、1781年に書いたドイツ語による12曲の歌曲と52歳、1784年にその第2集として書いた12曲の歌曲の中からの3曲。いつも紐解く中野博詞さんの「ハイドン復活」によれば、この歌曲集は発表当時には大変な人気を博したとこのとでヨーロッパでは25社もの出版社から出版されたそうです。レビューは「ハイドン復活」による曲の解説もつけて記載しましょう。

Hob.XXVIa:9 / 12 Lieder No.9 "Trost unglücklicher Liebe" 「不幸な愛の慰め」 [f] (1781)
愛する女性をあきらめなければならない苦しみを神への祈りで癒そうとする男性の心境が描かれた曲。短調のピアノの伴奏にのって、ゲルハーヘルの透き通るようなバリトンが切々と歌います。声質はフィッシャー=ディースカウとちょっと似ていて、フィッシャー=ディースカウ独特のキリッとした部分が滑らかに磨かれてたような歌い方。録音は最新のものだけあって鮮明かつ非常に自然なもの。もうすこし奥行き感があるとさらにいいでしょう。リズム感も抑揚も適切で感情表現は抑え気味で淡々としたところが、かえって情感を増しているよう。私の好みからいうと好きなタイプの演奏です。ピアノのゲロルト・フーバーも適度な抑揚で歌を支えています。静かに心にしみる演奏。

Hob.XXVIa:17 / 12 Lieder No.5 "Geistliches Lied" 「宗教歌」 [g] (1784)
神に感謝の祈りを捧げる者の揺るぎない信仰が歌われた曲。意外と激しい曲調。録音的にはバリトンとピアノが重なって聴こえるところにちょっと違和感があります。ワンポイント的な録音ではこうは聴こえないでしょう。曲調の割にゲルハーヘルは抑えた歌唱でしょう。

Hob.XXVIa:21 / 12 Lieder No.9 "Das Leben ist ein Traum" 「人生は夢だ」 [E flat] (1784)
人生の儚さが描かれた曲。このピアノの伴奏のメロディーは何度聴いてもぐっと来ますね。名曲です。ハイドンならではな明るさとのうら悲しさが混じり合ったはかない美しさ。ゲロルト・フーバーはちょっと音を切り気味にして、情緒的になるのを抑えているよう。雄弁という感じではなく、抑制の美学。フーバーのピアノに乗ってゲルハーヘルは持ち前の美しい声で滑らかに歌い上げます。ピアノに主役を譲っているようなすこし抑え気味の歌唱。じつにしっとりした歌の余韻が残ります。

このアルバムのメインはもちろんシェーンベルクやベルクというウィーン学派の歌曲。ゲルハーヘルの歌も底に力点がおかれているのは明らか。それらの作品を挟むようにベートーヴェンとハイドンというウィーンで活躍した古典派の作品がおかれ、ウィーンという都市の歴史のパースペクティブの中で音楽を聴かせようという企画意図でしょう。シェーンベルクとベルクの作品に挟まれたハイドンの美しい歌曲3曲は、古典の古典らしさ、音楽の原点、歌曲の原点たる美しさ,儚さを象徴するようにおかれ、まさにウィーンのオリジンたる扱い。ゲルハーヘルは、ハイドンの作品をあえて抑揚をおさえて、歴史の証人のような端正さで扱っているように聴こえました。歌曲としてどう聴かせるかというよりも、ハイドンを座標の基点に据えようということでしょう。そういった意味でこの演奏は端正かつ、表現を抑えた魅力がにじみ出るいい歌唱です。評価は「宗教歌」が[++++]、その他が[+++++]としました。

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