作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

イオス四重奏団の「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」

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最近お気に入りの弦楽四重奏版の「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」。

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イオス四重奏団(Eos-Quartett)によるハイドンの弦楽四重奏曲版の「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」を収めたアルバム。収録は1998年4月2日から4日、ウィーンのCasino Zögernitzでのセッション録音。レーベルはORF(オーストリア放送協会)。

「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」は最近、フィルハーモニア・クァルテット・ベルリンの素晴らしい演奏を聴いたばかり。弦楽四重奏曲の深遠な魅力をつたえる名盤でした。

2012/06/28 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : フィルハーモニア・クァルテット・ベルリンの十字架上のキリストの最後の七つの言葉

フィルハーモニア・クァルテット・ベルリンの演奏の素晴らしさは、おそらくオーケストラを母体とする四重奏団であることが大きなポイントでしょう。オケの演奏のように淡々と語っていく語り口がこの曲に合っているのだというのが私の見方です。ということで手持ちのアルバムからオーケストラを母体としたクァルテットを探して取りあげたのが正直なところ。

イオス四重奏団は1992年、ウィーン交響楽団の4人の奏者によって設立されたクァルテット。レパートリーはウィーンの古典派からシェーンベルク、コダーイ、ショスタコーヴィチなどの現代音楽まで。メンバーは下記のとおり。

第1ヴァイオリン:グイレルモ・ビュクラー(Guillermo Büchler)
第2ヴァイオリン:クリスチャン・ブラスル(Christian Blasl)
ヴィオラ:ローナン・ベルンハルト(Roman Bernhart)
チェロ:アンドレアス・ポコーニー(Andreas Pokorny)

このアルバム、もう一つフィルハーモニア・クァルテット・ベルリンのアルバムと共通点があります。曲間にドイツ語の語りが入るところ。独墺圏ではこのような演奏形態が好まれるのでしょうか。ただ、このアルバムの素晴らしいところは、語り付きの演奏が1枚目に収められ、そしてタイミングを見ると同演奏だと思いますが、語りなしの演奏が2枚目に収められた2枚組であること。なかなかデラックスな企画です。今日は語りなしのCD2をレビューしましょう。

切れ味抜群のベルリンフィルに対して穏やかな音色のウィーン交響楽団ですが、その長所を引き継ぐごとはできるでしょうか。

Hob.III:50-56 / String Quartet Op.51 No.1-7 "Musica instrumentare sopra le 7 ultime parole del nostro Redentore in croce" 「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」 (1787)
なんと予感的中。まさに母体とするオーケストラのキャラクターの違いが演奏に現れています。穏やかな音色のながら、一体感のあるアンサンブル。またメリハリは適度で、まさに淡々と音楽を進めていきます。演奏から青白い妖気がたちのぼるかというと、そうではなく、まさにウィーンの色気がうっすらと乗った素朴な響き。極上の弦楽器の柔らかい音色を主体に、淡々と音楽を進めていく、私が最近好むタイプの演奏。
序章はテンポはゆったりで、過度に劇的にならないよう、音楽自身に語らせるように情感がにじみ出るようような演奏。音楽が自律的に進んでいくよう。まさにウィーン響の演奏のようです。
つづく7つのソナタも、テンポやメリハリに意図的な変化はなく、じっくり淡々と演奏していくうちに、弦楽四重奏曲の楽しみを満喫できるようになって行きます。短調の演奏によっては劇的な曲を、穏やかに演奏していく事で浮かび上がる、素朴な曲の美しさ。一聴して地味な演奏ではありますが、ツボを押さえているので非常に情感豊かに聴こえます。通例は第1ヴァイオリンが主導権を握るところですが、聴く限り4丁の楽器はほぼ対等のバランス。録音もほどよくマイルドながら鮮明さもあり、弦楽器がわりと近くに定位するタイプ。この演奏の魅力を高めています。
印象的なのはピチカート主体の第5ソナタ。すこし速めのテンポであっさり入り、進むにつれてメロディーラインの絡まり合うアンサンブルの妙技を楽しめます。そして弱音器をつけた第7ソナタ。ふくよかな音色から醸し出されるしっとりとした情感。
そして終曲の地震は、ここにクライマックスを持ってきているのが明らかな、これまでの演奏とは異次元の突き抜けた表現。ちょっと驚くほどの吹っ切れ方。

最後に驚かされはしましたが、穏やかな表情で淡々と弾き進めるというフィルハーモニア・クァルテット・ベルリンと非常に近い角度の演奏。ただ、ベルリンフィルとウィーン響の音色の違いを明確に表すように、それぞれの音色が異なり、冷徹な中に怪しい妖気をはらむベルリンに対し、うっすらと色気を纏った素朴なウィーンの響きという対比が成り立ちます。どちらの演奏も情感を抑えながら淡々と演奏するという、オーケストラを母体としたクァルテットの魅力に溢れています。地味な演奏ながら、私は気に入ったため、評価は[+++++]としました。

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