作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

トーマス・ファイ/ハイデルベルク交響楽団の90番、オックスフォード

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しばらく更新が滞っていました。嫁さんが入院したので、病院と実家を行き来していて音楽をゆっくり聴く時間がとれませんでした。幸い嫁さんの方の経過は順調で、先程自宅に戻りようやく落ち着きました。ここはハイドン啓蒙の志の高さを疑われてはいけませんので、疲れた体にむち打って記事を書いておきます。というか、ハイドンの音楽を聴く事で私自身も癒されたいという心境です。

本当は整理中のBrilliantのスコットランド歌曲集を取りあげようと思ったのですが、もう少し整理に時間がかかりそうですので、今日は未聴盤ボックスからこのアルバム。

Fey9092.jpg
HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

トーマス・ファイ(Thomas Fey)指揮のハイデルベルク交響楽団の演奏でハイドンの交響曲90番、92番「オックスフォード」の2曲を収めたアルバム。ファイのハイドンの交響曲全集の第16巻に当たるもの。収録は2011年5月25日、26日、ドイツ、ハイデルベルク西方のバート・デュルクハイムのナチュラル・ホルン・アカデミーでのセッション録音。レーベルはhänssler CLASSIC。

ファイは何度もこのブログで取りあげていますので今更紹介の必要はないでしょう。過去の記事はこちら。

2012/06/11 : ハイドン–交響曲 : トーマス・ファイ/ハイデルベルグ交響楽団のマリア・テレジア、56番
2012/05/03 : ハイドン–交響曲 : トーマス・ファイ/シュリアバッハ室内管の「時の移ろい」「告別」
2011/07/06 : ハイドン–交響曲 : 【新着】トーマス・ファイの「帝国」、54番
010/12/26 : ハイドン–協奏曲 : 【新着】トーマス・ファイのホルン協奏曲、ホルン信号
2010/08/01 : ハイドン–交響曲 : トーマス・ファイの69番、86番、87番

ファイの交響曲集は順調にリリースされ、リリースされるごとにこれまでの垢を落とすような快心の演奏で、我々を楽しませてくれます。このアルバムはこれまで未入手だったものをHMV ONLINEに注文していたもの。ポイントは名曲オックスフォードをファイがどう料理するかでしょう。

Hob.I:90 / Symphony No.90 [C] (1788)
今まで聴いたファイの演奏と近い響きですが、若干音の厚さが増しているような録音。冒頭からテンポをかなり積極的に動かしてスリリングなはじまり。途中で突然早いテンポへの鮮烈なギアチェンジが何度かあり、ファイの表現意欲が漲っているのがわかります。ティンパニがかなり踏み込んで、強打をかまします。メロディーの流れよりもリズム感と炸裂感を主体とした演奏。1楽章の大迫力のフィニッシュにファイの創意が集約されます。ティンパニが恐ろしいまでにクレッシェンドして皮を突き破るような爆発。
アンダンテは、いつもながらの上手い場面転換で抑えた素朴な表情から入ります。今後爆発するとわかってはいますが、この穏やかな入りが音楽には必要ですね。中間部は止まりそうなほどテンポを落として表情を引き締めます。それぞれの場面の性格に応じた描写の使い分けが巧みですね。フルートと弦楽器のみによる間奏部分や、いくつかの部分でかなりテンポを落とした表現は孤高さが際立ちます。美しいアンダンテ。
メヌエットはファイのいつも通りの展開。大胆さのなかに変化を織り交ぜた高度な表現。意外とソロ等の細部の出来も緻密さを感じさせたり、メロディーラインの美しさを感じさせる流麗さも織り込まれています。
フィナーレはメロディーラインの面白さと祝祭感炸裂の演奏。オーケストラが爆発のしどころ心得ており素晴らしい吹き上がり。この曲はラトルが終わりそうで終わらない演出で観客をなごませる演奏を得意としているもの。ファイは終わりそうで終わらないというところコミカルにではなく、かなりタイトに攻めて、怒濤のようなクライマックスの波が繰り返し襲ってくるような迫真の演技で会場を凍り付かせるような演奏。ここでもティンパニが荒れ狂ったような激しさで炸裂。リズムと炸裂感の激しさが印象に残りました。

Hob.I:92 / Symphony No.92 "Oxford" 「オックスフォード」 [G] (1789)
つづいてオックスフォード。冒頭の優しい序奏のチェロの音色の生々しさにちょっとビックリ。ちょっとしたところにファイの仕掛けが仕組まれています。主題は凡庸にならないよう、速めのテンポにかなりゴツゴツした表情でグイグイ進めます。もはやティンパニは雷鳴に近いものになっています。カルロス・クライバーがアンコールで振ったヨハン・シュトラウスの「電光と雷鳴」の地響きのようなティンパニを思い起こさせます。1楽章はこれまでの演奏の垢を強引に落としにいくような力みがちょっとありますでしょうか。変化とアクセントは今までのファイ通りなんですが、ちょっと力が入りすぎていなくもありません。力感の嵐のような演奏。
続いて美しいメロディーラインが有名な2楽章。冒頭はやはり表現を抑えて入り、流麗さすら感じさせるもの。そして中間部にはいると、鋭い楔を何本も打つような激しい表現に顔をのぞかせます。ここはファイの真骨頂でしょう。再び穏やかな表現に戻って曲全体のバランスを撮るような棒さばき。
メヌエットも前曲と同様の傾向の演奏ですが、表情の変化の幅が大きくなくなり、古楽器の音色を生かした純粋な演奏で、テンポも遅めのところが多いもの。
期待のフィナーレは、やはり速いですね。先日取りあげたルネ・ヤーコプスの演奏よりも荒々しさを感じるもの。有名なメロディーラインが完全にファイ節に変容。どんどんスピードがあがり、オケがついていけるか心配になるほどのテンポですが、これが見事にオケがついていき、速いパッセージのキレも見事。ヴァイオリン、金管とティンパニのキレは尋常ではありません。狂乱のようなフィナーレ。ここでも繰り返しを巧く使って、終わりそうで終わらない演出を意図しているよう。最後は古楽器のダイレクトな音色もあって耳に刺さるようなダイレクトな大爆発で終わります。

トーマス・ファイ指揮のハイデルベルク交響楽団の演奏によるハイドンのザロモンセット前夜の傑作交響曲2曲。アーノンクールの弟子らしい灰汁の強さと、鍛え上げられたオケに寄る吹き上がるような高揚感、荒れ狂うリズムとクレッシェンドが堪能できる演奏。期待に違わぬ演奏でした。やはり今後が楽しみなシリーズです。評価は両曲とも[+++++]としました。

ファイのシリーズは現在最新が17巻。是非完成までこぎ着けてほしいものです。

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