作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ボロディン三重奏団のXV:27

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やはりマイナー盤を取りあげるときは胸が高鳴ります(笑)

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ボロディン・トリオ(Borodin Trio)によるハイドンのピアノ三重奏曲(Hob.XV:27)、モーツァルトのクラリネット、ヴィオラ、ピアノのための三重奏曲(K.498)、ベートーヴェンのクラリネット、チェロ、ピアノのための三重奏曲(Op.11)の3曲を収めたアルバム。収録は1987年6月8日から10日、イギリス、エセックスのレイヤー・マーニー教会でのセッション録音。レーベルは英CHANDOS。いい録音の多いレーベルです。

少し前に手に入れていたアルバムですが、未聴盤ボックスに寝ていたもの。

ボロディン四重奏団ではなく、ボロディン三重奏団。メンバーは次のとおり。

ピアノ:リューバ・エドリーナ(Luba Edlina)
ヴァイオリン:ロスティラフ・ドゥビンスキー(Rostislav Dubinsky)
チェロ:ユーリ・トゥロフスキー(Yuri Turovsky)

もしやとは思いましたが、ヴァイオリンのロスティラフ・ドゥビンスキーはボロディン四重奏団の第1ヴァイオリンを長年務めた人。初代の第1ヴァイオリンで1945年から1976年まで務めました。1923年ウクライナのキエフ生まれで、調べたところ1997年に亡くなられています。ピアノのリューバ・エドリーナはドゥビンスキーの奥さんとのこと。2人はモスクワ音楽院の学生のとき知り合い、エドリーナはボロディン四重奏団とも良く共演していたとの事。チェロのユーリ・トゥロフスキーもモスクワ音楽院の出身者。驚いたのは、このアルバムのレーベルであるCHANDOSから、モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームス、ドボルザーク、メンデルスゾーン、ラヴェル、シューベルト、スメタナ、ショスタコーヴィチ、チャイコフスキー、ラフマニノフなど有名どころのピアノ三重奏曲をリリースしていること。ほぼ総なめといった状況です。レーベルの信頼厚い存在ですね。

ボロディン四重奏団の方は新旧2枚のアルバムをこれまで取りあげていますが、旧盤の方も第1ヴァイオリンはドゥビンスキーの後任に替わったあとのもの。

2011/08/21 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : 【新着】ボロディン四重奏団のロシア四重奏曲
2011/08/06 : ハイドン–弦楽四重奏曲 : ボロディン弦楽四重奏団の十字架上のキリストの最後の七つの言葉ライヴ

ボロディン四重奏団と言えば鋼のような険しい表情の演奏。このトリオもボロディン四重奏団のようなタイトな魅力を放つのでしょうか。

Hob.XV:27 / Piano Trio (Nr.43/op.75-1) [C] (1796)
CHANDOSらしい空気感に富んだ素晴らしい録音によって鮮烈な響きが部屋に広がります。この曲らしいエネルギー感溢れる入り。素晴らしいのはエディナのピアノのインテンポで畳み掛ける迫力。ピアノも音像がクッキリ定位する名録音で美しさの限りを尽くした音色。ピアノトリオのスリリングな魅力炸裂です。ピアノが完全に主導権を握る展開です。ヴァイオリンとチェロはピアノをやさしく引き立てるような演奏。1楽章はこの曲の魅力を万全に表した名演奏。アルバム冒頭から、素晴らしい演奏にやられます。弾むリズム、掛け合いの妙、響き渡る美音、完璧です。
意外にもアンダンテはかなり遅めの入り。ピアノの美音が録音会場に響き渡るのを楽しむように、ゆったりとメロディーを奏でていきますが、聴き慣れたこの曲より明らかに遅めで、ちょっと違和感を感じる寸前。ゆったりしたピアノに対し、ヴァイオリンとチェロはそれにもたれかかるような演奏。後半さらにテンポをおとして、音楽が各楽器それぞれに分解されるような印象。際立つのは各楽器の音色の存在感。楽章間の対比というよりは、踏み込んだ間の表現という感じ。えも言われぬ感興。不思議な余韻。
フィナーレはテンポを戻して転がるように滑らかなピアノ音階を中心に、ヴァイオリンとチェロが素晴らしい掛け合いを演じます。前楽章で耳に残った各楽器の美音がここで効果を挙げます。早いパッセージなのにそれぞれの楽器の音色の美しさにしっかり耳がついていきます。徐々にテンポを上げ、この曲独特の波のようにぶり返すエネルギー感満点の終結部を経てクッキリフィニッシュ。

ボロディン三重奏団の演奏によるハイドンのピアノ三重奏曲の名曲XV:27。鮮烈な両端楽章と、深い間を感じさせる2楽章による個性的な演奏。演奏はボロディン四重奏団の鋼のような険しさとは全く異なり、音楽は自然なもの。
このアルバムの魅力を高めているのはCHANDOSレーベルの空気感溢れる素晴らしい録音。部屋の中にトリオがやってきたような素晴らしい臨場感。このあとつづくモーツァルトもベートーヴェンも素晴らしい録音によって音楽が活き活きと映えます。評価は2楽章の特殊さをどう評価するかによるでしょう。私は素晴らしい両端楽章の出来からすると、オーソドックスな2楽章の演奏のほうが聴き映えがしたような気がするので、[++++]としました。何れにせよ、室内楽好きの方にはオススメのアルバム。アルバム全体からにじみ出る音楽は素晴らしいものがあります。

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2 Comments

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だまてら

No title

ごぶさたしています。細かいつっこみですが、ドゥビンスキー夫人はエドリーナ(Edlina)ですね。
夫君率いるボロディンSQとの共演で、ショスタコーヴィチのピアノ五重奏曲の名盤をメロディアに録音しています。旧ボロディンSQは、ショスタコーヴィチの存命中に当時出版されていた弦楽四重奏曲11番までをまず全集としてリリースし、その後出版された12・13番を追いかけて録音しましたが残念ながら14・15番は未録音のままドゥビンスキーが亡命してしまいました。
その後ボロディンSQは第一ヴァイオリンがコペルマンに代わってほぼ一気に15番まで、さらにリヒテルとの五重奏曲も録音したので全集としては新盤がファーストチョイスにはなりますが、個人的には現在CHANDOSから出ている13番までの旧盤を採りたいです。

  • 2012/07/05 (Thu) 22:58
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Daisy

Re: No title

だまてらさん、的確な突っ込みありがとうございます。
今日は実家に来ているので、手元にアルバムもなく確認できませんが、ネットを見たところご指摘通りですね。早速記事の情報を修正させていただきました。最近CDのライナーノーツなどはかなり見づらくなってきました。年には勝てませんね(笑) いつもは名前の読み仮名などネットで一応確認するのですが、抜けていたようです。気をつけなくてはなりませんね。

  • 2012/07/05 (Thu) 23:22
  • REPLY