作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

フィルハーモニア・クァルテット・ベルリンの十字架上のキリストの最後の七つの言葉

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今日は弦楽四重奏曲。

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フィルハーモニア・クァルテット・ベルリン(Philharmonia Quartett Berlin)の演奏によるハイドンの弦楽四重奏版の「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」。収録は1999年10月31日、ベルリンフィルハーモニーの室内楽ホールでのライヴ。レーベルはIPPNW CONCERTSという珍しいレーベル。

フィルハーモニア・クァルテット・ベルリンはベルリンフィルの主要な奏者がメンバーとなっている四重奏団。オフィシャルサイトがありましたのでリンクを張っておきましょう。

Philharmonia Quartett Berlin(独英文)

設立は1984年。当時のベルリンフィルのコンサートマスターと弦楽セクションのリーダーというベルリンフィルの一線級のソリストによる四重奏団。カラヤンが亡くなったのが1989年ですから、その5年前に設立されたことになります。メンバーは下記のとおり。

第1ヴァイオリン:ダニエル・シュターブラヴァ(Daniel Stabrawa)
第2ヴァイオリン:クリスチャン・シュターデルマン(Christian Stadelmann)
ヴィオラ:ナイハルト・レーザ(Neithard Resa)
チェロ:ヤン・ディーゼルホルスト(Jan Diesselhorst)

だだ、チェロのディーゼルホルストは2009年2月に急逝したため、現在はチェロはディートマール・シュワルケ(Dietmar Schwalke)に替わっています。

このアルバム、聴き始めると曲間にドイツ語の語りを挟んだもの。アルバムは核戦争防止国際医師会議(IPPNW:International Physicians for the Prevention of Nuclear War)が主催するコンサートのようで、同じ企画では以前にモーシェ・アツモン指揮のワールド・シンフォニー・オーケストラの天地創造アッシジライヴを取りあげました。

2011/09/27 : ハイドン–オラトリオ : モーシェ・アツモン/ワールド・シンフォニー・オーケストラの天地創造アッシジライヴ-2
2011/09/26 : ハイドン–オラトリオ : モーシェ・アツモン/ワールド・シンフォニー・オーケストラの天地創造アッシジライヴ

こちらもコンサートマスターがベルリンフィルの安永徹さんですので、ベルリンフィルとIPPNWは関係が深いのでしょうか。

Hob.III:50-56 / String Quartet Op.51 No.1-7 "Musica instrumentare sopra le 7 ultime parole del nostro Redentore in croce" 「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」 (1787)
ライヴとは思えない鮮明な録音で、メロディーラインがクッキリと浮かび上がる演奏。序章はいつもの聴き慣れたメロディーですが、非常に冷静、冷徹とも言える演奏。一人一人の音は鮮明で浸透力のある音色で、アンサンブルは精緻で良くそろっています。リズムもテンポも揺るぎなく、小細工は一切無し。何となくベルリンフィルらしい演奏と言えばお分かりでしょうか。演奏の方もライヴとは思えない質の高いもの。孤高の険しさを感じます。心に切々とメロディーが刺さります。
ドイツ語でのおそらく関連する聖書の一節の朗読を挟んで、第1ソナタから第7ソナタが次々と演奏されます。
ソナタごとの演奏の変化というよりは、序章のスタイルを保ったまま一貫した演奏が続きます。じっくり一貫した演奏からに情感がにじみ出てくる感じ。この曲は表情を大きくつけた演奏よりも、こうした曲自体に語らせる演奏のほうが深い情感を表せるような気がします。この曲の究極の姿を表現しているようです。さすがベルリンフィルの一線級のメンバー。ちょうどひとつずつ異なった山景をもつ7峰からなる山脈を4×5のカメラで鮮明に捉えた山岳写真のよう。夕日に輝く峰々の美しさを遠くから眺めて慈しみます。1峰1峰の起伏はそれぞれ異なるものの峰の連なりが克明にわかり、硬調のネガを柔らかい調子の印画紙に丁寧に焼きこんだアンセル・アダムスの風景写真のごとき詩情を放ちます。
聴き所のひとつ、第5ソナタのピチカート主体の部分はチェレスタの様な不思議な響きの成分を感じさせる独特のもの。ただヴァイオリンの突き刺さるようなメロディーが被さり、恐ろしい迫力を帯ています。
また最後の地震は弦楽器の金属的な響きが怪しい妖気を放つなど、弦楽器の表現を極めた演奏。最後は拍手につつまれるものと思ったら、拍手はカットされていました。

ベルリンフィルの主要メンバーで構成されたフィルハーモニア・クァルテット・ベルリンによる、ハイドンの名曲「十字架上のキリストの最後の七つの言葉」は青白く光る日本刀の名刀を眺めるような洗練と静かな妖気につつまれた絶品の演奏でした。ライヴならではの一発の緊張感をはらみながらも、演奏の完成度は究極の出来。単にテクニックだけではない、長年の演奏経験、普段オケで共演しているものだからこそもつ一体感、そして冷徹なまでの芸術性の表現方向の一致。素晴らしいの一言です。ハイドンの音楽のもつ険しさを非常に上手くあらわした秀演でしょう。評価はもちろん[+++++]とします。

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4 Comments

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maro_chronicon

IPPNW CONCERTS ?

ハイドンの中でもとりわけ好きな曲ですけど、これはまた手に入れにくそうですね。

  • 2012/06/29 (Fri) 00:58
  • REPLY

Daisy

Re: IPPNW CONCERTS ?

maro_chroniconさん、おはようございます。
私が手に入れたのはディスクユニオンです。このレーベルはネットショップでもあまり見かけませんので、手に入れにくいかもしれませんね。中古屋さんを丹念に探すしかないのかもしれません。
こうゆうアルバムこそリリースされ続ける必要があるかと思います。

  • 2012/06/29 (Fri) 06:21
  • REPLY

Haydn2009

No title

「青白く光る日本刀の名刀を眺めるような洗練と静かな妖気につつまれた」 いやぁー、すばらしい名言ですね。Daisyさんにこのように言わしめる演奏とは、いったいどのような演奏なんでしょうね。この曲は、私にとっては、「天地創造」と同じぐらい好きな曲です。本CDを入手する機会があったら、是非聴いてみたいです。

  • 2012/06/30 (Sat) 07:49
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Daisy

Re: No title

Haydn2009さん、おはようございます。
遅い楽章が切々とつづくこの曲は得意不得意があるようですが、私も最近かなりハマっています。ただ演奏の善し悪しをかなり鮮明に感じさせる厳しい曲でもあり、心に迫る演奏は難しいのではと思います。このベルリンフィルの名手による演奏、触れたように日本刀の名刀のような凛とした美しさがある演奏ですが最初に聴いた時は、非常に静的でメリハリの少ない演奏にも聴こえました。ただ聴き進むうちに、この曲の究極の洗練を表すようにも聴こえ始め、先のような言葉となりました。CD時代なので問題はありませんが、個人的には語りがない方がこの演奏の魅力が増すように思います。この曲にもまだまだ名演奏があるのではないかと思いますので、発掘を続けます(笑)

  • 2012/06/30 (Sat) 11:02
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