作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ゴットフリート・フォン・デア・ゴルツ/フライブルク・バロック・オーケストラの「受難」等

0
0
今日は古楽器のアルバム。

Goltz80.jpg
HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

ゴットフリート・フォン・デア・ゴルツ(Gottfried von der Goltz)指揮のフライブルク・バロック・オーケストラの演奏によるハイドンの交響曲80番、ヴァイオリン協奏曲(Hob.VIIa:1)、交響曲49番「受難」の3曲を収めたアルバム。収録は2008年8月、ドイツ、フライブルクのパウルス教会(多目的ホール)でのセッション録音。レーベルは名門仏harmonia mundi。

ゴットフリート・フォン・デア・ゴルツは1964年、ドイツのヴュルツブルク生まれのチェロ奏者、指揮者。ドイツ人の父とノルウェー人の母から最初に音楽を学びました。ハノーヴァー、ニューヨークのジュリアード音楽院、フライブルク音楽院などで音楽教育を受け、フライブルクでは元ベルリンフィルのコンサートマスターのライナー・クスマウルの指導を受けたとのこと。21歳で北ドイツ放送交響楽団に入ったものの2年で退団し、室内楽、独奏、指揮等に活動を移しました。現在はこのアルバムのオケであるフライブルク・バロック・オーケストラの音楽監督を務めています。またフライブルク音楽院でヴァイオリン、バロック・ヴァイオリンを教えているとのこと。

手元にはゴルツの伴奏によるシュタイアーのピアノ協奏曲集などがあり、以前にレビューしています。

2010/09/05 : ハイドン–協奏曲 : シュタイアーのピアノ協奏曲

ゴルツの伴奏は鮮明な古楽器の音色を生かしたカッチリとしたものでした。少し固さを感じるほど鮮明な響きがゴルツのコントロールの特徴。今日取り上げるアルバムではどうでしょうか。

Hob.I:80 / Symphony No.80 [d] (before 1784)
短調の緊張感溢れる入り。期待通りゴリッとした感触のある古楽器のダイレクトな音色で迫力満点の入り。ノンヴィブラートのストレートなオケの音色が耳に刺さります。程よく刺激的で荒々しい感じが迫力につながっているよう。逆に滑らかさにちょっと欠けるよう聴こえ、それが直裁な印象も与えてしまうギリギリのところという感じです。
アダージョ楽章は緩む感じはせず、1楽章と同様のテンションのまま入ります。音色の一貫性からそうゆう印象につながるのでしょう。特にヴァイオリンのキリッと引き締まった張りのある音色の印象が大きいですね。徐々にリズム感がつよくなり、曲の起伏を表現していきます。意外と休符を長くとり、曲の大きな流れをしっかり描いていき、構えの大きな演奏としています。
メヌエットは弦楽器群の強い響きと、柔らかなホルンの音色の対比を意図しているよう。直裁なアクセントが耳に残ります。
フィナーレは静かにかけ声を掛けるような不思議なメロディーから入りますが、その後おもちゃ箱をひっくり返したような散乱する響きの魅力で聴かせるもの。音響的快感と音楽的熟成とでいうと前者を主体とした演奏。アーノンクール、トーマス・ファイほどの節回しに灰汁の強さはないんですが、不思議と音楽が固く、少し単調さをはらんでしまってます。

Hob.VIIa:1 / Violin Concerto [C] (c.1765)
続いてヴァイオリン協奏曲。古楽器では先日カルミニョーラの超名演が印象深いところ。この曲でもオケの直裁さは変わらす、演奏の基調にあるものの、ゴルツ自身によるヴァイオリンは比較的穏やかな弓さばき。音色は渋めで演奏も適度なメリハリでじっくりとしたもの。オケの指揮の時の表現とは明らかに異なる音楽を奏でていきます。録音もソロが意外と控えめで、オケの迫力と厚みを優先しているよう。カデンツァは納豆が糸をひくような粘りのあるフレージングの長いもの。ずいぶん穏やか。
アダージョに入るとヴァイオリンがピチカートのオケに乗ってくっきりと浮かび上がる美しい曲。ゴルツのヴァイオリンは明らかに1楽章よりも張りがあって、メロディーラインの美しさも向上しています。軽く推移する音階も見事。最後はヴァイオリンの存在感が際立つ圧倒的な音楽に。調子が出てきました。
フィナーレは、明らかにこれまでで一番音楽が豊かに流れる楽章。固さがとれ、音楽が起伏と流れの両面で緊張感溢れる展開。低音弦の迫力あるうなりも効果的。素晴らしい感興。

Hob.I:49 / Symphony No.49 "La passione" 「受難」 [f] (before 1768)
名曲「受難」を最後にもってきました。明らかに冒頭の80番よりも響きの密度が上がりました。古楽器の演奏としては意外に劇画タッチ。規律溢れる鋭敏な響きではなく、じっくり攻める現代楽器風の演奏と聴こえます。もちろん古楽器オケのままです。短調の序奏から、徐々に光が差してくるようになる様子を描写したような1楽章前半。この曲では1楽章がアダージョになります。じっくりとした進行がかえっていい感じ。
2楽章は鮮烈なアレグロ。オケは明らかに起伏を増し、素晴らしい推進力でグイグイ引っ張ります。こうゆう時は、力を抜いた部分をしっかり落とす事で緊張感をたもてますが、文字通り、フレーズごとにきっちりメリハリをつけます。素晴らしい迫力。
メヌエットはシュトルム・ウント・ドラング期ならではうら悲しい響き。前楽章の響宴のような響きに対し、落ち着いた流れを重視した演奏。
そしてフィナーレはオケの秩序が乱れる寸前まで髪を振り乱した演奏。奏者一人一人にゴルツの意思が宿ったような抜群の生気。技よりエネルギーという演奏。ライヴできいたらさぞかし盛り上がるでしょう。

ゴットフリート・フォン・デア・ゴルツの指揮によるフライブルク・バロック・オーケストラの演奏。古楽器の演奏としては力感を重視した演奏です。ただファイのような機知を感じるところはなく、正攻法の力漲る演奏。力の入れ過ぎというか、力感に頼る部分では単調さをはらんでしまう部分もあります。曲ごとに出来に差があるのも正直なところ。最初の80番は[+++]、ヴァイオリン協奏曲と「受難」は[++++]としました。もう少し歳を重ねることで円熟味が加わるとこなれて、よりいい演奏になると思います。

にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ
関連記事

0 Comments

There are no comments yet.