作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ジャン=エフラム・バヴゼのピアノソナタ集Vol.3

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先日第1巻を取りあげたバヴゼのピアノソナタ集。第3巻が手に入りました。

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HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

ジャン=エフラム・バヴゼ(Jean-Efflam Bavouzet)のピアノによる、ハイドンのピアノソナタ第3集。XVI:45、XVI:20、XVI:27、XVI:14の4曲を収めたアルバム。収録は2011年5月16日から18日、第1巻と同様ロンドンの北東約100Kmの街サフォークにあるポットン・ホールでのセッション録音。

バヴゼの紹介は前記事をご覧ください。

2012/05/22 : ハイドン–ピアノソナタ : ジャン=エフラム・バヴゼのピアノソナタ集Vol.1

このアルバムは好きなXVI:20が含まれているので聴きたかったもの。YAMAHAピアノの実体感ある響きで聴くXVI:20のアンダンテがどう響くでしょうか。

Hob.XVI:45 / Piano Sonata No.29 [E flat] (1766)
前記事のアルバムを聴いた時にはYAMAHAピアノの独特の音色と実体感と、フランス人ピアニストらしい色気のようなものとドイツ系の質実さもを感じましたが、基本的に前回聴いた第1巻と同様な傾向の演奏ながら、このアルバムでは速めのテンポでの推進力を基本とした非常にオーソドックスで無骨ささえ感じる部分が印象に残ります。おそらく厚みのあるピアノの響きと、一貫したテンポの演奏によるものでしょう。録音は最新のものらしく鮮明で眼前近くにピアノがかなりのリアリティで定位するもの。じわりとくる演奏。こうゆう演奏が飽きのこない演奏なんだと思います。
2楽章のアンダンテも同様、地道な推進力が印象的。あえてデュナーミクをあまりつけずに淡々と進めることで、ハイドンの音楽をじっくりと表現しているよう。叙事詩のような演奏と言えばいいでしょうか。淡々とメロディーを弾き進めていく事で、じわりと音楽がつたわるような演奏。バヴゼに最初抱いていた印象とは少し異なりますが、おそらく第1巻を今聴くと同じ印象を感じるのではないかと思います。要は演奏の違いというより先入観の違いのような気もしてます。
フィナーレもあっさりした演奏。ただピアニズムというか現代ピアノの響きの魅力は十分に感じられ、ダイナミクスを過度に強調しないことで古典的な均整を保っている感じ。男性ピアニストらしい、左手の力強さに支えられた迫力が聴き所でしょう。フィナーレは徐々に左手の堂々とした低音の力感がもりあがり、曲の面白さが増していくのが手に取るようにわかります。最後が頂点。

Hob.XVI:20 / Piano Sonata No.33 [c] (1771)
好きなXVI:20。無骨なと感じたのはこの曲を最初に聴いたから。研ぎすまされた響きというよりはゴリッとした低音の迫力を感じる演奏。リズムが少し乱れたり朴訥だったりというのもそういった印象を強くしています。磨き込まない自然体のハイドン。
この曲で最も美しい2楽章。訥々と進むあたりは素朴な曲の魅力を上手く表しています。この曲では流石に音量を落として素朴な静けさを表しています。前記事でも書きましたが、少々音量を落として聴いた方が印象がいい不思議な録音。とぼとぼ歩くようなリズムとテンポは絶妙。この楽章の表現は流石聴かせどころを心得ており、波がひいては返す感じが幽玄とした印象をつくり、夕闇に瞬き始める星のようなこの曲の魅力を伝えています。
フィナーレは今度は上手く力がぬけて、力感ではなくリラックスで聴かせる演奏。バヴゼの演奏は力感よりも抜いた時のほうがしっくりする感じです。意外と楽譜を見ながら初見で弾いているような雰囲気もあり、さりげなさというか、一貫した素朴さがやはり印象にのこります。

Hob.XVI:27 / Piano Sonata No.42 [G] (1776 or before)
あと2曲は簡単に。だんだんさりげなさが魅力だと感じるように。ハイドンのソナタの演奏の一つのあり方かもしれません。この曲は音階の面白さが聴き所ですが、パヴゼはあくまでさらりと弾き進めるようなスタイルで、こだわりなくどんどん行きます。逆にそれが徹底されていておもしろ味が上がっています。初期のシンプルな曲想がバヴゼの演奏スタイルに合っている感じ。2楽章、3楽章も同様の印象。特に3楽章のあっさり感は見事。初期の曲とのほうが相性はいい感じ。この曲はドンピシャ。

Hob.XVI:14 / Piano Sonata No.16 [D] (early 1760)
最後はごく初期の曲。前曲同様相性の良さを感じさせます。複雑な曲ではないだけに、多少単調な要素はありますが、不思議と何の違和感もなく、逆に割り切りの良さが感じられむしろいい印象になります。この曲もドンピシャということでしょう。

ジャン=エフラム・パヴゼのピアノによるハイドンのピアノソナタ集の第3巻は結果的に初期のシンプルな曲の良さにスポットライトを当てる形になりました。第1巻とは印象がだいぶ変わります。評価はHob.XVI:45とHob.XVI:20は[++++]、残り2曲は[+++++]としました。ピアノ演奏の奥行きがわかるいいアルバムだと思います。

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