レナード・スラットキン/フィルハーモニア管の太鼓連打
前記事が思い切りマイナーな曲だったので、今日は交響曲のアルバム。

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レナード・スラットキン(Leonard Slatkin)指揮のフィルハーモニア管弦楽団の演奏で、ハイドンの交響曲103番「太鼓連打」、96番「奇跡」、102番の3曲を収めたアルバム。収録は102番と「太鼓連打」が1994年10月、「奇跡」が1993年8月、何れもロンドンにあるアビー・ロード・スタジオのNo.1でのセッション録音。レーベルはRCA VICTOR RED SEAL。
スラットキンは1944年、ロサンゼルス生まれのユダヤ系アメリカ人指揮者。父は指揮者、ヴァイオリニストで、ハリウッド弦楽四重奏団を創設したフェリックス・スラットキン、母は同四重奏団チェリストのエレノア・アラーと音楽家の家庭で育った人です。インディアナ総合大学とロサンジェルス市立大学で学んだ後、ジュリアード音楽院にて指揮法を学び、1966年に指揮者としてのキャリアをスタート、1968年にセントルイス交響楽団の指揮者助手となります。1977年よりニューオーリンズ・フィルハーモニー管弦楽団(現ルイジアナ・フィルハーモニー管弦楽団)の指揮者、1979年にセントルイス交響楽団に音楽監督、1996年よりワシントンD.C.のナショナル交響楽団の指揮者、2000年~2001年シーズンからはBBC交響楽団首席指揮者などの経歴の持ち主です。近年は2008年~2009年のシーズンからデトロイト交響楽団の音楽監督、2011年~2012年シーズンからリヨン国立管弦楽団の音楽監督となっています。レパートリーは幅広く、とりわけ20世紀アメリカ合衆国の音楽を得意としています。最近確かN響にも客演していましたね。
スラットキンのハイドンはオーソドックスなスタイルながら、小気味好いキレの良さと、盛り上がりが楽しめるなかなかのもの。手元にはフィルハーモニア管弦楽団とのザロモンセットの録音がバラで4枚あり、このアルバムはそのVol.2にあたるものです。これまで取りあげたアルバムだとジェフリー・テイトの演奏に近いでしょうか。
今日はこの中から「太鼓連打」を取りあげましょう。
Hob.I:103 / Symphony No.103 "Mit dem Paukenwirbel" 「太鼓連打」 [E flat] (1795)
わりとはっきりとした遠雷タイプの太鼓連打から入ります。テンポは少し速めでしょうか。アビーロード・スタジオ特有のオンマイク気味ながらオケがマイルドに溶け合うなかなかいい録音。序奏はかなりゆったり展開する演奏も多い中、秩序をたもってキビキビしたやや速めの入り。主題に入るとオケにエネルギーが宿り、推進力が出てきます。非常にオーソドックスな演奏ながら、リズムのキレが良く、素晴らしい迫力。ご存知のとおり私の好きなタイプの演奏。スラットキンはこういったプレーンな曲をオーケストラをフルに鳴らしてコントロールすることに長けているよう。特に個性的なフレージングがある訳ではないのですが、紡ぎ出される音楽は濃厚。特に分厚いオケが小気味好くメロディを刻んでいくあたりが、ハイドンの真髄をつく表現でしょう。終盤リズムに溜めをつくって迫力を表現するあたりのバランス感覚は見事。このオーソドックスさと表現の充実ぶりの高度な融合は本当に見事。純粋無垢なハイドンの交響曲の理想的な演奏。
2楽章のアンダンテは速めのテンポで一気に進めます。スラットキンの意図はフレーズをじっくり描くのではなく、楽章としての構造を鮮明にしようとしたものでしょう。良く聴くと意図的にアクセントをきっちりつける事で速めでもフレーズの印象をしっかり残せるよう工夫しています。中間部のヴァイオリンソロが出てくるところでちょっとテンポを落として繊細さを表現。ヴァイオリンがちょっとリズム感が悪いところがあるのはご愛嬌。テンポの上でのメリハリはそこそこながら、音量と表情ではかなりきっちりメリハリをつけて盛り上げます。
メヌエットも基本的に速めの展開、同様音量と表情でかなりクッキリとした印象。拍子を早く打つ事で活き活きとした表情になってます。
冒頭のホルンとエコーのように重なるホルンのテクスチャーがなかなかの美しさ。序奏は音量の抑えが効いて、主題に入った際のエネルギーの注入が非常にうまく表現されています。スラットキンの得意とするスペクタクルな部分のキレは流石なもの。人によってはもう一段情感が乗った演奏もありますが、スラットキンは純音楽的に響きの快感を追求しているよう。折り重なるようにオケの各楽器の響きが混ざり合って音楽的エクスタシーを表現。フィナーレの盛り上がりも見事です。
レナード・スラットキンの指揮する「太鼓連打」は、交響曲としてのハイドン最盛期の傑作を純音楽的な魅力ある響きで再現。オーケストラコントロールの上手さを感じる堅実な手綱捌きを楽しめます。灰汁の強い部分はないので、曲を理解するためには非常にいい演奏でしょう。聴かせどころも心得ており、ハイドンの複雑な構成のフィナーレが大迫力で楽しめます。ハイドンをいろいろ聴いている人にこそ聴いていただきたい、職人指揮者の手腕と言ったところでしょう。評価は[++++]とします。
続く「奇跡」では、そうしたスラットキンのよさが、より素直に味わえる演奏。こちらはまた機会があれば取りあげましょう。

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レナード・スラットキン(Leonard Slatkin)指揮のフィルハーモニア管弦楽団の演奏で、ハイドンの交響曲103番「太鼓連打」、96番「奇跡」、102番の3曲を収めたアルバム。収録は102番と「太鼓連打」が1994年10月、「奇跡」が1993年8月、何れもロンドンにあるアビー・ロード・スタジオのNo.1でのセッション録音。レーベルはRCA VICTOR RED SEAL。
スラットキンは1944年、ロサンゼルス生まれのユダヤ系アメリカ人指揮者。父は指揮者、ヴァイオリニストで、ハリウッド弦楽四重奏団を創設したフェリックス・スラットキン、母は同四重奏団チェリストのエレノア・アラーと音楽家の家庭で育った人です。インディアナ総合大学とロサンジェルス市立大学で学んだ後、ジュリアード音楽院にて指揮法を学び、1966年に指揮者としてのキャリアをスタート、1968年にセントルイス交響楽団の指揮者助手となります。1977年よりニューオーリンズ・フィルハーモニー管弦楽団(現ルイジアナ・フィルハーモニー管弦楽団)の指揮者、1979年にセントルイス交響楽団に音楽監督、1996年よりワシントンD.C.のナショナル交響楽団の指揮者、2000年~2001年シーズンからはBBC交響楽団首席指揮者などの経歴の持ち主です。近年は2008年~2009年のシーズンからデトロイト交響楽団の音楽監督、2011年~2012年シーズンからリヨン国立管弦楽団の音楽監督となっています。レパートリーは幅広く、とりわけ20世紀アメリカ合衆国の音楽を得意としています。最近確かN響にも客演していましたね。
スラットキンのハイドンはオーソドックスなスタイルながら、小気味好いキレの良さと、盛り上がりが楽しめるなかなかのもの。手元にはフィルハーモニア管弦楽団とのザロモンセットの録音がバラで4枚あり、このアルバムはそのVol.2にあたるものです。これまで取りあげたアルバムだとジェフリー・テイトの演奏に近いでしょうか。
今日はこの中から「太鼓連打」を取りあげましょう。
Hob.I:103 / Symphony No.103 "Mit dem Paukenwirbel" 「太鼓連打」 [E flat] (1795)
わりとはっきりとした遠雷タイプの太鼓連打から入ります。テンポは少し速めでしょうか。アビーロード・スタジオ特有のオンマイク気味ながらオケがマイルドに溶け合うなかなかいい録音。序奏はかなりゆったり展開する演奏も多い中、秩序をたもってキビキビしたやや速めの入り。主題に入るとオケにエネルギーが宿り、推進力が出てきます。非常にオーソドックスな演奏ながら、リズムのキレが良く、素晴らしい迫力。ご存知のとおり私の好きなタイプの演奏。スラットキンはこういったプレーンな曲をオーケストラをフルに鳴らしてコントロールすることに長けているよう。特に個性的なフレージングがある訳ではないのですが、紡ぎ出される音楽は濃厚。特に分厚いオケが小気味好くメロディを刻んでいくあたりが、ハイドンの真髄をつく表現でしょう。終盤リズムに溜めをつくって迫力を表現するあたりのバランス感覚は見事。このオーソドックスさと表現の充実ぶりの高度な融合は本当に見事。純粋無垢なハイドンの交響曲の理想的な演奏。
2楽章のアンダンテは速めのテンポで一気に進めます。スラットキンの意図はフレーズをじっくり描くのではなく、楽章としての構造を鮮明にしようとしたものでしょう。良く聴くと意図的にアクセントをきっちりつける事で速めでもフレーズの印象をしっかり残せるよう工夫しています。中間部のヴァイオリンソロが出てくるところでちょっとテンポを落として繊細さを表現。ヴァイオリンがちょっとリズム感が悪いところがあるのはご愛嬌。テンポの上でのメリハリはそこそこながら、音量と表情ではかなりきっちりメリハリをつけて盛り上げます。
メヌエットも基本的に速めの展開、同様音量と表情でかなりクッキリとした印象。拍子を早く打つ事で活き活きとした表情になってます。
冒頭のホルンとエコーのように重なるホルンのテクスチャーがなかなかの美しさ。序奏は音量の抑えが効いて、主題に入った際のエネルギーの注入が非常にうまく表現されています。スラットキンの得意とするスペクタクルな部分のキレは流石なもの。人によってはもう一段情感が乗った演奏もありますが、スラットキンは純音楽的に響きの快感を追求しているよう。折り重なるようにオケの各楽器の響きが混ざり合って音楽的エクスタシーを表現。フィナーレの盛り上がりも見事です。
レナード・スラットキンの指揮する「太鼓連打」は、交響曲としてのハイドン最盛期の傑作を純音楽的な魅力ある響きで再現。オーケストラコントロールの上手さを感じる堅実な手綱捌きを楽しめます。灰汁の強い部分はないので、曲を理解するためには非常にいい演奏でしょう。聴かせどころも心得ており、ハイドンの複雑な構成のフィナーレが大迫力で楽しめます。ハイドンをいろいろ聴いている人にこそ聴いていただきたい、職人指揮者の手腕と言ったところでしょう。評価は[++++]とします。
続く「奇跡」では、そうしたスラットキンのよさが、より素直に味わえる演奏。こちらはまた機会があれば取りあげましょう。
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