作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ディター・フルーリーによるフルート三重奏曲

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前記事に続きピアノ三重奏曲のアルバム。今日はフルート三重奏曲版です。

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HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

フルートがディーター・フルーリー(Dieter Flury)、チェロがローベルト・ノージュ(Robert Nagy)、ピアノがイェーヴェ・オシャ(Ieva Oša)の3名にによるハイドンのピアノ三重奏曲のヴァイオリンパートをフルートで吹いたアルバム。収録曲はHob.XV:15、XV:16、XV:17の3曲。収録は2008年6月23日、29日、ウィーンのスタジオ・バウムガルテンでのセッション録音。レーベルは日本のcamerataです。

ディーター・フルーリーはウィーンフィルの首席フルート奏者であり、ゼネラル・マネージャーでもあります。皆さんウィーンフィルのニューイヤーコンサート等の映像で必ず目にする長身の方。スイスのチューリッヒ生まれで、スイス連邦工科大学で数学の学位をもつなど珍しい経歴の持ち主。チューリッヒ・トーンハレのアンドレ・ジョネのもとフルートの指導を受けた後、オーレル・ニコレに師事。1977年からウィーン国立歌劇場管弦楽団に所属し、1981年からウィーンフィルの首席フルート奏者になったため、古くから映像ではおなじみの人という訳です。2005年からはウィーンフィルのゼネラル・マネージャーという事で経営サイドも務めているということになりますね。もちろんソリストとしても活躍しており、現代音楽などもレパートリーとのこと。
チェロのローベルト・ノージュもウィーンフィルのメンバー。名前からわかるとおり、1966年ハンガリー生まれ。ブダペストのフランツ・リスト音楽アカデミーに学び。ミクローシュ・ペレーニなどに師事。アバドの指揮するグスタフ・マーラー・ユーゲント・オーケストラやニーダーエステライヒ・トーンキュンストラー管弦楽団などを経て、ウィーン国立歌劇場管弦楽団、ウィーンフィルのメンバーとなりました。2005年からウィーンフィルの第1チェロ奏者を務めています。
ピアノのイェーヴァ・オシャはディーター・フルーリーと良く演奏をともにするピアニスト。ラトヴィアの首都リガ生まれ。主にラトヴィア国内で活躍する人。ラトヴィア交響楽団や新リガ室内管弦楽団などと共演しています。

フルーリーと気のおけない仲間によるハイドンのピアノ三重奏曲の演奏ということでしょう。ここに収められたピアノ三重奏曲3曲は、初版よりイギリスでのフルート人気もあり、フルート三重奏曲としても出版されたという経緯があり、フルートでの演奏も多い曲になってます。

Hob.XV:15 / Piano Trio (Nr.29/op.59-2) [G] (before 1790)
おっと、これは極上の録音です。ピアノの非常に澄んだ響きがスピーカーの奥に定位して、フルートとチェロも鮮明に溶け合います。スタジオ・バウムガルテンは確かPREISER RECORDSの本拠地。室内楽の理想的な録音でしょう。特にピアノの響きは見事。演奏は前記事で取りあげたクリストフォリ・トリオと同様、オーソドックスな演奏ながら、各奏者の音楽性の高いキレの良い演奏が緊張感溢れるアンサンブルを構成したもの。私の好きなタイプの演奏。奏者の格からいくとまずはフルーリーですが、曲をリードしているのはピアノのオシャ。フルーリーは美音を素直に生かし、また時折見せるキレのいいフレージングが特徴。力が良く抜けて、非常にくつろいだ演奏。チェロのノージュはかなりクリアな音色とフレーズコントロールが印象的。通常他の楽器のプレゼンスに埋もれがちなチェロですが録音の鮮明さも手伝って、なかなかの存在感。1楽章の後半は印象的な転調がニュアンス豊かな曲調をつくりますが、3人のアンサンブルは堅実な演奏で豊かな情感を支えます。
2楽章のアンダンテは素朴そのもの。メロディーラインがフルートで演奏されていることもあって、より素朴な印象が強くなっています。やはりピアノのオシャの落ち着いた演奏が印象的。つづくフィナーレに入ったところでちょっと床が鳴るような低音のノイズが何回かたまに入るようになります。演奏はもはやオシャの美しいピアノをベースにフルーリーのフルートとノージュのチェロが遊び回るよう。最後のフレーズに入るまでに十分音量とテンポを落として、メリハリをつけます。オーソドックスなアプローチながら見事な音楽でした。

Hob.XV:16 / Piano Trio (Nr.28/op.59-1) [D] (before 1790)
フルーリーを聴くべきアルバムでしたが、耳は完全にオシャのピアノに釘付けです。この曲はことさら1楽章のピアノの軽やかなメロディーラインが特徴な曲。ピアノのリズミカルな演奏にそってフルーリーが余裕たっぷりにフルートを重ねていきます。この曲も非常に高い完成度。ウィーンフィルのメンバーであるフルーリーとノージュは何事もなかったように音符を抑揚をつけて音楽を創っていきます。この何でもない演奏の完成度は流石なもの。
2楽章もリズミカルな構成。オシャのバランス感覚はかなりのもの。音楽的には完全にこのアルバムの主役という感じ。自然なタッチと右手のきらめき感、そこそこバランスのいいメリハリというようにハイドンの演奏に必要な要素が高次にバランス。フィナーレも同様。言うことなしです。

Hob.XV:17 / Piano Trio (Nr.30/op.59-3) [F] (before 1790)
最後の曲は2楽章構成。入りはやはりオシャのきらめくようなピアノの美音が絶品。なぜかこの曲に入るとフルーリーの演奏に力が漲ります。メリハリが生々しくなり、覇気も漲ります。オシャばかりにいいところを持っていかせるわけは行かないという意思表示でしょうか。1楽章はアレグロですが、終わりとなる2楽章はメヌエット。形式にも妥協なくいつも新たな試みを続けていたハイドンらしい構成でしょう。メヌエットはこれで終わりと言われればそう感じてしまう説得力があります。

ハイドンの没後200年となる2009年にリリースされたアルバム。流石ウィーンフィルメンバーを主体としたアンサンブルだけに、オーソドックスながら素晴らしく豊かな音楽。ただ、最も印象に残ったのはウィーンフィルメンバーではない伏兵のオシャのピアノです。おそらくフルーリーがお気に入りのピアニストなんでしょう。ハイドンのピアノ三重奏曲は地味ながら室内楽の楽しみの真髄をつくもの。このアルバムはハイドンの素晴らしい音楽を、最上の録音と最上のの演奏でまとめたもの。ハイドンのアニバーサリーに相応しい出来のアルバムでした。評価はもちろん3曲とも[+++++]としました。

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