作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

ジャン=エフラム・バヴゼのピアノソナタ集Vol.1

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今日はピアノソナタ集。しかも飛び切り音色の美しいもの。

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HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

ジャン=エフラム・バヴゼ(Jean-Efflam Bavouzet)の弾くハイドンのピアノソナタ集の第1巻。収録曲はHob.XVI:24、XVI:32、XVI:46、XVI:36の4曲。収録は2009年10月6日~8日、ロンドンの北東約100Kmの街サフォークにあるポットン・ホールでのセッション録音。レベールはなにげにいい演奏の多い英CHANDOS。

ジャン=エフラム・バヴゼは、1962年、フランスのドイツ国境近くの街メス生まれのピアニスト。メス音楽院を経て、パリ音楽院に学び、バドゥラ=スコダやニキタ・マガロフらに師事しました。1986年ケルンの国際ベートーヴェン・ピアノ・コンクールで第1位、1989年のヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクールの室内楽部門でも入賞し国際的に活躍するようになった人。フランス人らしくCHANDOSレーベルで全5巻となるドビュッシーのピアノ作品全集を完成させています。本人のサイトがありましたので、いつものように紹介しておきましょう。

Jean-Efflam Bavouzet - Official Website

このアルバムがパヴゼのハイドンのピアノソナタ集の第1巻にあたるもの。現在までに3巻までリリースされていますが、有名曲がその3枚の中に網羅されている訳ではないので、全集を目指すのでしょう。また、今回のアルバムジャケットの裏面にはYAMAHA PREMIUM PIANOSというロゴが配されています。YAMAHAのピアノでの録音のようです。非常に芯のしっかりした響きの美しいピアノの音色はYAMAHAの楽器だったわけですね。どことなくグールド晩年のゴールドベルク変奏曲の録音のピアノの音に似ていなくもありません。

Hob.XVI:24 / Piano Sonata No.39 [D] (1773)
非常に粒立ちのいいピアノの音色からはじまります。ほんの少し奥に定位するような印象の録音ですが、鮮明さは十分。引き締まったピアノの音色の魅力が十分堪能できます。言われてみるとSteinwayとは少々異なる響き。強音の押し出し感と存在感が特徴でしょうか。あと高音が綺麗に響く音域がすこし低めの音域にシフトしている感じ。バヴゼはこのYAMAHAのピアノの特徴を上手く生かして、右手の小気味好い音階と左手の弾むようなタッチが印象的な演奏。なぜか音量を落として聴いた方が美しく聴こえます。1楽章は軽快なテンポにのったキレのいい演奏。
2楽章は美しい音楽の流れが印象的な曲。高音域のさざめきのようなメロディーの合間に実に柔らかい和音が一瞬挟まりはっとさせられます。この辺の流れを実に上手く表現して、ピアノの美しい音色を印象づけます。
休む事なくフィナーレに入り、小気味好くアクセントを効かせたメロディーを刻んでいきます。テクニックの正確さは速いパッセージのキレからもよくわかります。力も抜けているのですが、弱音域をもう少し効果的に使う事で表現の幅がさらに広がるような気がします。

Hob.XVI:32 / Piano Sonata No.47 [b] (1776 or before)
YAMAHAの音色とバヴゼのタッチがより生きる曲調の曲。高音の美しさと低音域のアタックの鮮烈さが必要な曲ですが、バヴゼは左手のバランス感覚がよく、この変化に富んだ曲をうまく表現できています。強弱の起伏も十分。力感の変化と曲の推進力がうまく折り合ったいい演奏。
2楽章はあえて淡々と進めます。もう少し豊かに情感を表現する演奏もありますが、この淡々さがハイドンの曲調に合っているかもしてません。聴き進めるうちにバヴゼの狙いがだんだんわかってきました。ピアノ音質には実はあまりこだわりはなく、ハイドンの素朴な側面に少しシフトすることで、あえてハイドンらしさを表現しようとしているように感じられます。
フィナーレは速めのテンポで美しいピアノの音色を生かしながらも素朴な力感を表現。リヒテルのしなやかで雄大な力感、ブレンデルの磨き込まれた変化に富んだ力感、オルベルツの古典の均衡の範囲での力感とは少しずつ異なるものの、これもハイドンのソナタの真髄に近い表現と何となく納得する次第です。

今日は時間の都合で2曲のみ。

フランス人ピアニストながら、ドイツに近い地域の生まれのためか、フランスっぽいという面もあり、ドイツ的な側面もあるジャン=エフラム・バヴゼのハイドンのソナタ集。YAMAHAピアノの特徴を生かし、実体感のある美しい響きをもつソナタの演奏でした。美しい音色のなかに素朴な表現もあり、それがハイドンのソナタの演奏としてはなかなかいい味わいを持っている演奏です。評価はこの2曲とも[++++]としました。手元には第2巻もありますが、まだ手を付けていません。未入手の第3巻には好きなXVI:20が含まれており、聴いてみたくなりました。ハイドンのピアノソナタ全集としても注目すべき全集となると思います。

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