ティルシャル兄弟/コシュラー/プラハ室内管の2つのホルンのための協奏曲

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ズデニェク・ティルシャル(Zdeněk Tylšar)、ベドジフ・ティルシャル(Bedřich Tylšar)のホルン、ズデニェク・コシュラー(Zdeněk Košler)指揮のプラハ室内管弦楽団の演奏で、ハイドン作曲とされる2つのホルンのための協奏曲(Hob.VIId:2)、ヴィヴァルディの2つのホルンのための協奏曲へ長調、テレマンの2つのホルンのための協奏曲変ホ長調の3曲を収めたアルバム。収録年はPマークが1972年という手がかりのみで詳細はわかりません。レーベルはチェコのsupraphonの録音をDENONが起こしたもの。
この曲については過去に2度取りあげています。
2011/10/05 : ハイドン–交響曲 : ヘルムート・ミュラー=ブリュール/ケルン室内管弦楽団の交響曲72番等
2010/10/16 : ハイドン–協奏曲 : ヘルマン・バウマンのホルン協奏曲集
曲の解説などはバウマンの方の記事をご参照ください。
ホルンのズデニェク・ティルシャルとベドジフ・ティルシャルは兄弟で兄がベドジフ。2人ともチェコ・フィルのホルン奏者として活躍した人とのことですが、弟のズデニェクは2006年に急逝したそうです。兄ベドジフは1939年生まれ、ブルノ音楽院とヤナーチェク音楽アカデミーで学び、ミュンヘン・フィルハーモニーに2年間所属の後、プラハ交響楽団の首席ホルン奏者となり、このアルバムの録音当時はチェコ・フィルハーモニー管弦楽団のメンバーでした。弟のズデニェクは兄と同じブルノ音楽院、ヤナーチェク音楽アカデミーで学んだ後、ミュンヘン国際音楽コンクール、プラハの春国際音楽コンクールで入賞し、同様チェコ・フィルハーモニー管弦楽団でホルン奏者として活躍しています。
指揮者のズデニェク・コシュラーは日本ではおなじみの人。1928年プラハ生まれ指揮者。日本では東京都交響楽団の客演指揮者としてたびたび来日していました。最近名前を聞かないとおもっていたら1995年に亡くなっていたんですね。私自身は印象に残る演奏がある訳ではないのですが、堅実な演奏をする人とのイメージです。
Hob.VIId:2 / Concerto per 2 cors et Orchestre [E flat] (1762)
この曲の直近のイメージはバウマン盤。朗々と吹き鳴らすへルマン・バウマンとティモシー・ブラウンのホルンに対し、アイオナ・ブラウンの指揮するアカデミー室内管弦楽団が愉悦感溢れる伴奏で支えていました。主にオケの表情豊かな演奏が印象に残っています。このアルバムはそれに対し、朴訥ともいえるプラハ室内管弦楽団の伴奏が逆に曲の素朴さを浮き彫りにするような入り。バウマン盤がかなり豊かな表情づけだったと今更ながらわからせるような演奏。伴奏のリズムと生気は悪くありません。コシュラー流石の伴奏。SUPRAPHONEの録音も悪くありません。オケのエネルギーがダイレクトに伝わるいい録音。正攻法のオケの生気、すばらしいですね。ティルシャル兄弟のホルンはオケに混じってオーソドックス、表情づけは控えめながら存在感は十分、ホルンという楽器の音色を存分に楽しめる演奏。堅実な印象が強い演奏ですが、基本的なメリハリやリズム感、キレがいいので聴き応えは十分。逆にリズムの正確さが際立ち、ホルンという難しい楽器のソロと感じさせないすばらしい安定感。アルペンホルンのような深々とした音色で交互に掛け合うホルンのメロディーがうら悲しさを誘います。1楽章の終盤はオケも勢いに乗って素晴らしいプレゼンス。迸るエネルギー。
2楽章のロマンツァは説明調になるような気がする演奏が多いのですが、コシュラーのコントロールはこの楽章独特の表情をうまく引き出し、起伏に富んだ素晴らしいサポート。ティルシャル兄弟のホルンは遠くから響くような音色が最高。この2楽章は出色の出来。
3楽章はタラタッタッタッターのリズムが印象に残る曲。ハイドンの作曲であれば、より有機的に絡み合う構成感溢れる曲だったのでしょうが、少し単調さが顔をのぞかせる曲。ただ演奏の方は、ホルンの妙技と直裁なオケの響きが素晴らしく、純粋無垢な魅力を発散する演奏。やはりオケのキレがいいので聴き応え十分ですね。
チェコの名手がそろった、珍しいハイドンの2つのホルンのための協奏曲を収めたアルバム。演奏者の個性や表現を抑えて、曲を正攻法で表現した堅実な演奏。それだけに曲自体の魅力というか、優しい曲調と響きの面白さを素直に表した演奏と言えるでしょう。バウマン盤との優劣は、演奏自体の完成度はバウマン盤ですが、曲自体を楽しむならこちらのティルシャル盤という事でしょう。評価は[++++]ということとします。


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