作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

マルク・ミンコフスキ/ルーブル宮音楽隊によるチェチーリア・ミサ

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今日も最近手に入れたアルバム。

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HMV ONLINEicon / amazon / TOWER RECORDS

マルク・ミンコフスキ(Marc Mincowski)指揮のルーブル宮音楽隊、同合唱団の演奏で、パーセルの聖セシリアの祝日のためのオード「万歳、輝かしいセシリア」、ヘンデルの聖セシリアの祝日のための頌歌、ハイドンの「チェチーリア・ミサ」の3曲を収めたアルバム。収録は2009年1月、グルノーブルの総合芸術施設MC2でのセッション録音。ルーブル宮音楽隊の本拠地のようです。レーベルはnaïve。

ミンコフスキのハイドンはこのブログの初期の頃にザロモンセットを取りあげています。

2010/05/15 : ハイドン–交響曲 : 流石だったぜ、ミンコフスキ
2010/05/15 : ハイドン–交響曲 : 古楽器新世代、弾む機知
2010/05/14 : ハイドン–交響曲 : ミンコフスキのザロモンセット到着

ミンコフスキはハイドン没後200年の2009年に来日し、その素晴らしい演奏が話題になりました。また、上で取りあげたハイドンのザロモンセットのライヴ盤ですが、独特の遊び心溢れるダイナミックな演奏がハイドンの交響曲の新境地を示した演奏でした。

今日取り上げるアルバムは、その存在は知っていたものの、丁寧なつくりのアルバム故か非常に値段が高く、HMV ONLINEで在庫ありだったにもかかわらず、長らく入手していなかったもの。先日たまったポイントを利用して、ようやく手に入れました。

ソリストは次のとおり。

ソプラノ:ルーシー・クロウ(Lucy Crowe)
コントラルト:ナタリー・シュトゥッツマン(Nathalie Stutzmann)
テノール:リチャード・クロフト(Richard Croft)
バス:ルカ・ティットート(Luca Tittoto)

アルバムの企画はHMV ONLINEの解説によると、音楽の守護神である聖セシリアにちなんだ作品を集めたもの。

3曲目におかれたハイドンのチェチーリアミサは1766年と、傑作の多いシュトルム・ウント・ドラング期の作品。この年ハイドンはエステルハージ家の楽長に昇進した年。それまでは前楽長が宗教音楽の作曲を担当しており、副楽長だったハイドンには作曲の機会を与えられていなかったため、ミサ曲に対するハイドンの創作意欲が一気に爆発したような曲です。

Hob.XXII:5 / Missa Cellenisis in honorem Beatissimate Virginis Mariae "Caecilienmesse" 「チェチーリアミサ」 (1766)
冒頭のキリエは非常に純度の高い磨き抜かれたコーラスから入ります。すぐにミンコフスキらしいダイナミックに弾む音楽がはじまります。中間部に登場するテノールのリチャード・クロフトは小気味好いテンポ感と古楽器に合う独特の輝きのある声。絡み合うオケとコーラスの純度の高さが透明感溢れる演奏につながっています。重厚というよりは小気味好く弾む演奏。キリエの後半はメロディーが織物の縦糸と横糸のように絡み合うことで表現される音楽の面白さをクッキリと描きます。
グロリアに入るとぐっとテンポを上げ、エネルギー感も上がります。オケの分離が良いので、クッキリした表情は崩しません。ヴァイオリンのメロディーラインは古楽器特有の爽やかな音色で鮮烈なリズムを刻んでゆくので、吹き抜けるそよ風のよう。ソプラノのルーシー・クロウも光沢感のある比較的厚みのある声。声質に癖はありますが声量が素晴らしく、存在感のある歌を聴かせます。ソプラノの歌が終わると今日は荘重な曲調に変わりますが、ミンコフスキのコントロールは一貫して速めのテンポでクッキリとメロディーを描いていくので、重くなる事はなく逆に華美な印象すら与えて、純粋にハイドンのメロディーメーカーとしての才能を浮かび上がらせているよう。
続くドミネ・ディウスはコントラルト、テノール、バスの三重唱。コントラルトのナタリー・シュトゥッツマンも非常特徴的な響きの声を持つ人。豊かな低音域の響きでこちらも素晴らしい声量。ここまで歌手は声質が非常ににそろっています。ミンコフスキの好みか清透な感じの人ではなく、豊かに響く声の人をそろえていますね。中ではバスのルカ・ティットートが比較的素直な声質。
クイ・トリスに至り、クッキリさから神々しさを感じさせるようになり、徐々にミサ曲らしい雰囲気が出てきました。特に音量を抑えた部分で印象的な表現が見られるようになり、表現の起伏が大きくなってきます。この曲は音量を抑えた部分の出来が秀逸。ぞくっとする瞬間がそこここにあります。
次のトラック(15)は一転してダイナミックに。チェチーリア・ミサの中でもわかりやすいメロディーなので特徴的に聴こえる部分です。祝祭的な雰囲気が盛り上がります。クロウのソプラノが華を添えます。
グロリアの終結にむかうフーガに入ると、ミンコフスキはクッキリとコントロールしながらも荘重さを加えていき引き締めにかかります。フーガの最後をあえて軽目に終わるところがなかなかのセンス。
最後のクレドはテノール、コントラルト、バスによってじっくり歌い継がれる静かな歌が印象的。これまでの曲が軽さとキレを主体とした表現だったのに対し、ここにきてしっかりと沈み込むじっくりとした表現。そして終曲の祝祭感溢れる喜びの爆発に入る鮮やかな展開。この曲でもっともエネルギーに満ちた表現。この展開の鮮やかさは見事。弾むリズム、吹き上がるオケのエネルギー、コーラスの大波。最後は大迫力の響きの洪水で終わります。

ミンコフスキによるチェチーリアミサ。ハイドンのミサ曲に込められた創意をミンコフスキが見事に引き出し、これまでのどの演奏とも異なる姿を描いています。現代楽器によるオーソドックスな演奏もいいですが、こうした斬新な視点による古楽器演奏もいいですね。ミンコフスキ、トーマス・ファイ、ギィ・ヴァン・ワースなど新世代の古楽器による演奏によってハイドンの新たな魅力が表現されつづけています。ハイドンが亡くなってから200年以上たちますが、時代が変わっても生気を吹き込む価値があるという事でしょう。評価はもちろん[+++++]とします。

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