作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

【新着】マルカンドレ・アムランのピアノソナタ集3

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先日HMV ONLINEから届いたばかりの新着アルバム。

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HMV ONLINEicon / TOWER RECORDS

マルカンドレ・アムラン(Marc-André Hamelin)の弾くハイドンのピアノソナタ集第3巻。収録順にHob.XIV:6、XIV:1、XIV:2、XIV:47bis、XIV:44、XIV:25、XIV:20、XIV:36、XIV:22、XIV:29、XIV:51の11曲を収めたCD2枚組。収録は2011年8月27日から29日まで、ロンドンのヘンリーウッド・ホールでのセッション録音。レーベルは英hyperion。

アムランは豪腕で知られた人。これまでハイドンのピアノソナタは2枚組が2巻リリースされていますが、当ブログでははじめて取りあげます。1961年カナダのモントリオール生まれのピアニスト。私と同世代ですね。5歳でピアノを弾き始め、9歳でカナダ音楽コンクールで首席となるなど早くから才能が開花。モントリオールのヴァンサン・ダンディ音楽院、フィラデルフィアのテンプル大学などで学び、1985年のカーネギー・ホール国際アメリカ音楽コンクールで優勝しました。20世紀の比較的マイナーな作曲家の作品を取り上げ、音楽性豊かな演奏をする事で知られるようになり、またレオポルド・ゴドフスキーやシャルル=ヴァランタン・アルカンのような19世紀の作曲家の演奏困難な作品を、標準的なレパートリーと同じように楽々と弾きこなすなど、テクニシャンとして知られ、コアなファンがいる人ですね。

こうしてこともなげに難曲を弾きこなす人がハイドンのソナタに興味をもち3巻も録音しているというのが興味深いところ。おそらくハイドンのシンプルな楽譜の中に深遠な音楽の淵が見えるのでしょうね。

今日は好きなXVI:20が入っているCD2から聴いてみました。

Hob.XVI:20 / Piano Sonata No.33 [c] (1771)
遠くの宇宙の星のまたたきのような音楽。まるで超大曲の出だしの音楽のよう。滔々と流れる川のように一貫した演奏。ピアノを軽々と弾き進めながらも、自身の思う大きな音楽の流れの一部を弾いているような音楽。何か巨大な意思のもと、手先が淡々と音楽を弾き進めていくような不思議な感覚。なんでしょう、この不思議な感覚は。力みはなく、非常に自然体。テクニックを誇示するでも、音のキレを追求するでもなく、自然に起伏をこなしていく感じ。1楽章はそこそこメリハリのある音楽なんですが、曲の起伏より大きなアムランの一貫した音楽にのまれているようですね。録音は流石ヘンリーウッド・ホール。美しい残響を伴いながらも実体感あるピアノの存在感が感じられるいい録音。高域の響きの美しさは素晴らしいものがあります。安心して身を任せていられる演奏ですね。
好きな2楽章は、響きを磨いた演奏というよりは、音楽の自然な佇まいを聴くべき演奏。この曲はエマニュエル・アックスの非常に美しい演奏が記憶に残っていますが、アックスはピアノ響き自体を研ぎすましていくような演奏なのに対し、アムランはあくまで音ではなく音楽の流れで聴かせる感じです。これはこれで深さを感じる演奏。冴え渡るアムランの音楽性。見えないのに非常に鋭利な刃物の存在を感じさせるような緊張感と迫力があります。非常に視野を広くもって音楽を組み立てていっていますね。恐るべしアムラン。
フィナーレは音に拘りなく流すような感じの音楽。このような表現が音楽の深さを阻害する方向ではなく、無常観を漂わせるように感じさせるあたりがアムランの凄さでしょう。音楽の構成よく考えて演奏するという次元ではなく、ただただ音楽を弾き進めていくような表現。実に含蓄に富んだ表現と言うべきでしょう。終わりのフレーズをかなり大胆にアクセントをつけているのが新鮮なところ。

このアルバム、聴き進めるとわかりますが、すべての曲が一つの曲のような一貫した音楽の流れをつくっているように感じる演奏。今日は時間の都合でXVI:20だけにしておきますが、このアルバムは非常に聴き応えのある演奏。ハイドンのピアノソナタ集としてはオルベルツ盤をしのぐ深さを持っているかもしれませんね。これから、少しずつ聴き進めていきたいと思います。XVI:20の評価は[+++++]とします。

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