ルドルフ・ブッフビンダー/ウィーン響のピアノ協奏曲XVIII:11

東京は昨日までの雨が上がり、ようやく晴れ間が。府中は朝から大国魂神社のくらやみ祭りの太鼓が鳴り響いています。腰にくるような巨大な太鼓を野球のバットほどのバチで両側から交互に叩き続けます。

今日は今まで取りあげていなかったブッフビンダーのアルバム。

BuchbinderCon11.jpg
HMV ONLINEicon / TOWER RECOORDS

ルドルフ・ブッフビンダー(Rudolf Buchbinder)のピアノと指揮、ウィーン交響楽団(Wiener Symphoniker)の演奏でハイドンのピアノ協奏曲(Hob.XVIII:11)と、シューマンの序奏とアレグロ・アパッショナータ、ラヴェルのピアノ協奏曲、モーツァルトのきらきら星変奏曲、シューマンの交響的練習曲、幻想曲ハ長調を収めた2枚組のアルバム。ハイドン以外の演奏者などは上のHMV ONLINEのリンク先をご覧ください。ハイドンの収録は、1994年6月26日、ウィーンのムジークフェラインの大ホールでのライヴ。

ルドルフ・ブッフビンダーはオーストリア人かと思っていましたが、Wikipediaを調べてみるとチェコ生まれです。1946年、チェコのプラハの北方の街、リトムニェジツェ(Litomĕřice)の生まれ。5歳でウィーン国立音楽大学に入学し、8歳でマスタークラスを履修して同大学の最年少記録となったという神童ぶりでした。9歳で最初の公開演奏会を開き、1966年にヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで特別賞、1967年にはベートーヴェン・ピアノコンクールで1等を獲得するなど若い時から才能が開花しました。その後は室内楽やピアニストとして活躍。1976年にはハイドンのピアノ曲全曲録音によってグランプリ・デュ・ディスクを受賞したとのこと。ブッフビンダー本人のサイトがありましたので紹介しておきましょう。

RUDOLF BUCHBINDER - The Official Website

ブッフビンダーのハイドンのピアノ曲全集は、ちょっと肌合いが悪いというか、ハイドンのピアノソナタの深遠な響きに到達していない印象があって、あまり評価はしていなかったので、あまり聴き込んでいませんでしたが、このアルバムの協奏曲は指揮を含めて悪くありません。

Hob.XVIII:11 / Concerto per il clavicembalo(l'fortepiano) [D] (1784)
ウィーン響の透き通るようなヴァイオリンによる序奏。ムジークフェラインの柔らかく美しい響きが乗ったウィーン響の序奏が穏やかなテンポで入ります。木質系の美しい響き。非常にオーソドックスなオケの響き。これぞ古典的なハイドンの響きです。ブッフビンダーのピアノも中庸なテンポなからクッキリとメリハリがついて、俊敏な反応を楽しめるもの。ライヴならではの緊張感に包まれた演奏。オーソドックスなハイドンの協奏曲の演奏ながら、音楽の喜びに溢れた演奏です。盤石の安定感を見せるオケの伴奏に乗ってブッフビンダーは軽々と転がすようにピアノを弾き進めていきます。推進力は十分。愉悦感も十分。緩急の変化も適度についた秀演です。
2楽章はこの曲のもつ暖かい表情を十分表現したもの。分厚いオケの響きと高音を主体としたきらめくようなピアノの掛け合いから醸し出される素晴らしい情感。この曲の美しさを存分に味わえます。とろけるようなムジークフェラインの響きに包まれてゆったりと音楽を楽しむひと時。至福とはこの事でしょう。ハイドンのピアノ協奏曲の最も正統な演奏と思わせる説得力があります。
この演奏では曲全体で豊かな音楽を狙っていると思われ、楽章間の表情の変化はほとんどなく、テンポも演奏スタイルも一貫したもの。テンポやスタイルではなく楽譜に込められたメロディーの意図をフレーズごとに拾って再現していくよう。オケとピアノの美しい響きが織りなす音楽をただただ楽しむべき演奏といえるでしょう。フィナーレは適度な力感の盛り上がりと、終結に向かう音楽構成に身を任せるような演奏。最後はムジークフェラインの観客から万来の拍手で迎えられます。

ハイドンのご当地ウィーンで開かれたコンサートの模様を収めたこのアルバム。なぜかハイドンらしさ、ウィーンらしさを存分に感じる演奏でした。奏者の表現意図もあるのでしょうが、自然なオーケストラと自然なピアノがハイドンの名曲XVIII:11の美しさを浮き彫りにするようです。コンサートを聴く楽しみも合わせて感じる素晴らしいライヴ録音。ブッフビンダーのピアノ音楽全集の方は、なぜか平板な響きが魅力を削いでいるようにも感じますので、録音は重要ですね。評価はもちろん[+++++]とします。

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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

tag : ピアノ協奏曲XVIII:11 ライヴ録音

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No title

こんにちは。

先日は思いつくまま書き込みまして、失礼いたしました。東京も雨があがったようですね。稲田堤に住む高校時代の親友より、昨夜、大国魂神社のお祭りに出かけるとメールがきまして懐かしく思っておりました。

ブフビンダーも懐かしい名前です。彼のハイドンは知りませんが、シューマンの交響的練習曲…ピッタリかなぁなどと。独りごちておりました。短調の変奏曲から、ダイナミックな、これぞシューマンいうフィナーレ。シューマンも久々に聴きたくなりました。
それにしても、音楽を通しての楽しい語らい…感謝です。

Re: No title

有田さん、こんにちは。

今日は午後、一時雷が鳴り出し、太鼓は一旦避難しましたが、再び雲が切れて、お祭りももとの勢いになってます。ご友人が近くにいらっしゃるんですね。

さて、ブッフビンダーはちょっと敬遠しておりましたが、このコンチェルトのアルバムで見直した次第。流石地元の演奏ということで、自宅がムジークフェラインになったような豊かな響きにうっとりしておりました。残念ながら当方、シューマン、シューベルト、ブラームスあたりはからきしコレクションの穴になっており、あまり詳しくありません。ブッフビンダーのシューマン、すこし突っ込んで聴いてみなくてはなりませんね。

最近のライブは良いみたいです

こんにちは。急に蒸し暑くなりましたね。

ブッフビンダーのハイドンは聴いたことはありませんが、ベートーヴェンやブラームスの10年以上前のスタジオ録音を聴くと、どちらかというと、すっきりとしたシャープな演奏していました。
ハイドンのソナタ全集も昔の録音ですから、まだまだ熟成していないところがあったのかもしれませんね。
最近のライブ録音をいくつか聴くと、膨らみと余裕のある音楽に変わっているような気がします。
"ウィーン風"(?)の雰囲気を楽しんで聴けるのが良いところですね。

ピアノ協奏曲を弾き降りしているのでしたら、彼自身とても楽しんで演奏しているでしょうね~。
ベートーヴェンのコンチェルトのライブ映像を見ても、エネルギッシュで気合いが入ってました。
ライブ録音では、(コンチェルトに限らず)あまりタッチが精緻でないところがあるので、ちゃんと指揮者を立てて、ピアノに集中した方が、ピアノの演奏が雑にならなくて良いだろうに...と思いましたけど。
一般的に言って、ピアノの弾き降りは難しい奏法だと思いますが、コンマスがしっかりバックアップしてくれれば、曲によっては大丈夫なのかもしれませんね。
そういえば、モーツァルトの弾き降りはわりと多いですね。ベートーヴェンは少ないでしょう。

Re: 最近のライブは良いみたいです

yoshimiさん、おはようございます。
ブッフビンダーのベートーヴェンは良さそうですね。私は逆にブッフビンダーはハイドンのソナタ集から入ったため、なんとなく印象が良くありませんでしたが、この協奏曲を聴いてずいぶん印象が変わりました。演奏もそうですが、ソナタ集は録音でかなり損をしているように感じます。
協奏曲の弾き振りについては、ご指摘のように指揮者を立てた方が演奏に集中できるのでしょう。弾き振りの良さは、ソロとオケの一体感というか音楽的な方向性の一致でしょうか。私はどちらかというと弾き振りではない方が好きですが、それはソロと指揮者の価値観の微妙なズレというか緊張感のようなものが面白い事があるからです。指揮者の煽りに奏者が応えるとか、その逆とか。いづれにせよ協奏曲は好きな分野で、レビューでも多く取りあげています。ハイドンの協奏曲は楽器の音色と特徴による描き分けが見事で、興味は尽きません。
関西は今年は節電もふくめて暑い夏になりそうですね。東京はいまのところ例年より涼しいですが、このまま行くとは思えません。夏は暑さを楽しむと割り切っていこうと思ってます。
プロフィール

Daisy


Author:Daisy

ハイドン(Franz Joseph Haydn)の膨大な録音をコツコツ集めてレビューしております。好きなものはお酒全般(ワイン、日本酒、モルトなど)、美味しいものを食べること、料理、鄙びた温泉めぐり、歌舞伎見物、スポーツクラブで泳ぐこと(美味しいお酒を呑むため!)などなど。私はなぜハイドンにはまったのか?

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Joseph Haydn Discography
所有盤をジャンル別にリスト化しています。基本的に録音年順とし、録音年不明のものはリスト冒頭に記載。演奏者名はジャケットなどの表記に合わせています。

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(2019年3月31日)
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