アドルフ・ハーセス/アバド/シカゴ響のトランペット協奏曲
今日もラックの整理をしていて取り出した古いアルバム。

アドルフ・ハーセス(Adolph Herseth)のトランペットにクラウディオ・アバド(Claudio Abbado)指揮のシカゴ交響楽団の演奏によるハイドンのトランペット協奏曲。他にモーツァルトのホルン協奏曲3番、ファゴット協奏曲、オーボエ協奏曲(KV314)の4曲を収めたアルバム。収録はPマークが1985年というだけで記載がありません。レーベルは久しぶりのDeutsche Grammophon。
このアルバムは、アバドとシカゴ響の首席奏者らによるモーツァルトとハイドンの管楽協奏曲集という位置づけでしょう。手に取った理由は冒頭に置かれたモーツァルトのホルン協奏曲3番のソロが別のアルバムのハイドンのホルン協奏曲で名ホルンを聴かせたデール・クレヴェンジャー(Dale Clevenger)だと気づいたから。調べてみるとファゴットのウィラード・エリオット(Willard Elliot)、オーボエのレイ・スティル(Ray Still)ともにシカゴ響の当時の主席奏者。クラシック音楽全盛期の勢いを感じる企画ですね。
クラウディオ・アバドはハイドンをあまり振ってはいませんが、交響曲集が4枚でており、ご存知のとおりオケはヨーロッパ室内管で、小規模オケの俊敏な反応を生かした切れ味の良い演奏。特に96番奇跡はカミソリのような素晴らしい反応が味わえるもの。当ブログでも初期にとりあげています。
2010/02/11 : ハイドン–交響曲 : アバドの「奇跡」
このシリーズは1986年から95年の間に、ウィーンのコンツェルトハウス、フェラーラのテアトロコムナーレ、ベルリン、イエス・キリスト教会などでのライヴ中心の収録。今回取りあげるトランペット協奏曲は収録年はわかりませんがPマークが85年という事で、85年以前の録音ということになります。
アバドの経歴を調べると、1968年から1986年までミラノ・スカラ座の音楽監督・芸術監督を、1979年から1988年までロンドン交響楽団の音楽監督を務めている間、1982年から1985年までシカゴ交響楽団の首席客演指揮者となっています。シカゴ交響楽団とは一時かなりのアルバムをリリースしていましたので、この録音はこの頃のものでしょう。このあと1986年からはウィーン国立歌劇場の音楽監督に就任するためシカゴを離れた言う事だと思います。
アバドのディスコグラフィを確認すると、このトランペット協奏曲がハイドンのはじめての録音になるようです。
トランペットのアドルフ・ハーセスはwikipediaの情報によると、1921年アメリカのミネソタ州西部のレイク・パークという街の生まれ。もともと大学で数学を学び、第二次世界大戦では海軍で太平洋戦線に配属。戦後1946年からニューイングランド音楽院でトランペットを学び、地元ボストン交響楽団のトランペット首席奏者等に師事し腕を磨きました。その後、アルトゥール・ロジンスキの薦めでシカゴ交響楽団の首席トランペット奏者に就任し、2001年に退くまで53年間にわたってその職を務め、シカゴ響の黄金の金管セクションを支えた人です。ショルティ時代のシカゴ響の圧倒的な音響ははアドルフ・ハーセスの輝かしいトランペットの音色によるところも大きいでしょう。
現在はシカゴ交響楽団名誉首席トランペット奏者ということです。2000年のシーズンを最後にハーセスが引退した以後、シカゴ響首席トランペット奏者(現在はクリストファー・マーティン)に「The Adolph Herseth Principal Trumpet Chair」の名称が付けられる事となっているそうで、シカゴ響にとってハーセスの存在がいかに大きなものだったかがわかります。
Hob.VIIe:1 / Concerto per il clarino [E flat] (1796)
いきなり大オーケストラの分厚い響き。やはりヨーロッパのオケと違い、根底に絢爛豪華なアメリカンサウンドの香りを感じます。アバドのコントロールは晴朗さをきっちり表しながらもオーソドックスさを保ったもの。シカゴ響の派手な音色を抑えているのでしょうが、すこし金の縁取りがついているような華美な感じもあります。ちょっと気になるのはリズムの重さ。アバドとしては珍しいことですが重量級オケゆえのことでしょう。ハーセスのトランペットは演奏は落ち着いていますが、音色の安定感と高音域の伸び、輝かしい音質は流石なもの。アバドはときおりアクセントをしっかりつけて豪腕オケの存在感を感じさせます。ハーセスに全幅の信頼を置いてゆったりオケの反応を楽しむようです。ハーセスは、古典的なこの曲を、折目正しさの中で輝かしさをきっちりだして演奏しています。音階のひとつひとつが抜群の存在感。オケの音響から完全にクッキリ浮かび上がっています。カデンツァは音階の上昇と高音の圧倒的な伸びをゆったりと表現したもの。オケも落ち着いて寄り添います。
2楽章のアンダンテはハーセスのトランペットの美しい音色と巧みなフレーズコントロールが絶妙。こうしたゆったりしたメロディーをしっかり聴かせるにはしっかりしたテクニックが必要でしょう。アバドは得意の弱音を表情豊かにコントロールすることでソロを支えます。不思議に叙情的に聴こえず純音楽的な表情。
そしてフィナーレは再び重厚なシカゴ響の響きが復活。リズミカルにそよ風のように刻むヴァイオリンの序奏から入り、重厚なオケが畳み掛けます。トランペットの突き抜けるような輝かしい響きがホールに響き渡ります。特に素晴らしいのが短いカデンツァ。高音の安定感は揺るぎないものがありますね。流石にシカゴ響の歴史に名を残す名トランぺッターの演奏。終結部はトランペットとオケのエネルギーが満ちあふれます。最後の響きがホールに消え入るところが絶妙。
このところ懐かしいアルバムを取り出して聴くのが定番になっていますが、このアルバムも30年近く前の演奏。アバドはこの頃はシカゴ響やロンドン響を振って飛ぶ鳥を落とす勢いのころ。このアルバムではシカゴ響の名手とモーツァルトとハイドンの協奏曲を楽しむように録音しています。モーツァルトの3曲はどちらかと言うとハイドンよりも相性がいいように感じます。このハイドンのトランペット協奏曲は名手ハーセスとの協奏曲のショーピースのような演奏と言えばいいでしょうか。指揮もオケもソロも名手ぞろいですのでテクニックと演奏の質は完璧。ただハイドンの曲の演奏という視点で見ると、ハイドンの音楽のほの暗い情感、ハイドンらしい晴朗感といったものとは何か違う演奏という印象がつきまといいます。トランペット協奏曲の評価は[++++]としておきます。
今日は月末日ですが、今月はいろいろあってレビューが少なかったのて恒例のHaydn Disk of the Monthはお休みとさせていただきます。今月分も含めて来月表彰したいと思います。

アドルフ・ハーセス(Adolph Herseth)のトランペットにクラウディオ・アバド(Claudio Abbado)指揮のシカゴ交響楽団の演奏によるハイドンのトランペット協奏曲。他にモーツァルトのホルン協奏曲3番、ファゴット協奏曲、オーボエ協奏曲(KV314)の4曲を収めたアルバム。収録はPマークが1985年というだけで記載がありません。レーベルは久しぶりのDeutsche Grammophon。
このアルバムは、アバドとシカゴ響の首席奏者らによるモーツァルトとハイドンの管楽協奏曲集という位置づけでしょう。手に取った理由は冒頭に置かれたモーツァルトのホルン協奏曲3番のソロが別のアルバムのハイドンのホルン協奏曲で名ホルンを聴かせたデール・クレヴェンジャー(Dale Clevenger)だと気づいたから。調べてみるとファゴットのウィラード・エリオット(Willard Elliot)、オーボエのレイ・スティル(Ray Still)ともにシカゴ響の当時の主席奏者。クラシック音楽全盛期の勢いを感じる企画ですね。
クラウディオ・アバドはハイドンをあまり振ってはいませんが、交響曲集が4枚でており、ご存知のとおりオケはヨーロッパ室内管で、小規模オケの俊敏な反応を生かした切れ味の良い演奏。特に96番奇跡はカミソリのような素晴らしい反応が味わえるもの。当ブログでも初期にとりあげています。
2010/02/11 : ハイドン–交響曲 : アバドの「奇跡」
このシリーズは1986年から95年の間に、ウィーンのコンツェルトハウス、フェラーラのテアトロコムナーレ、ベルリン、イエス・キリスト教会などでのライヴ中心の収録。今回取りあげるトランペット協奏曲は収録年はわかりませんがPマークが85年という事で、85年以前の録音ということになります。
アバドの経歴を調べると、1968年から1986年までミラノ・スカラ座の音楽監督・芸術監督を、1979年から1988年までロンドン交響楽団の音楽監督を務めている間、1982年から1985年までシカゴ交響楽団の首席客演指揮者となっています。シカゴ交響楽団とは一時かなりのアルバムをリリースしていましたので、この録音はこの頃のものでしょう。このあと1986年からはウィーン国立歌劇場の音楽監督に就任するためシカゴを離れた言う事だと思います。
アバドのディスコグラフィを確認すると、このトランペット協奏曲がハイドンのはじめての録音になるようです。
トランペットのアドルフ・ハーセスはwikipediaの情報によると、1921年アメリカのミネソタ州西部のレイク・パークという街の生まれ。もともと大学で数学を学び、第二次世界大戦では海軍で太平洋戦線に配属。戦後1946年からニューイングランド音楽院でトランペットを学び、地元ボストン交響楽団のトランペット首席奏者等に師事し腕を磨きました。その後、アルトゥール・ロジンスキの薦めでシカゴ交響楽団の首席トランペット奏者に就任し、2001年に退くまで53年間にわたってその職を務め、シカゴ響の黄金の金管セクションを支えた人です。ショルティ時代のシカゴ響の圧倒的な音響ははアドルフ・ハーセスの輝かしいトランペットの音色によるところも大きいでしょう。
現在はシカゴ交響楽団名誉首席トランペット奏者ということです。2000年のシーズンを最後にハーセスが引退した以後、シカゴ響首席トランペット奏者(現在はクリストファー・マーティン)に「The Adolph Herseth Principal Trumpet Chair」の名称が付けられる事となっているそうで、シカゴ響にとってハーセスの存在がいかに大きなものだったかがわかります。
Hob.VIIe:1 / Concerto per il clarino [E flat] (1796)
いきなり大オーケストラの分厚い響き。やはりヨーロッパのオケと違い、根底に絢爛豪華なアメリカンサウンドの香りを感じます。アバドのコントロールは晴朗さをきっちり表しながらもオーソドックスさを保ったもの。シカゴ響の派手な音色を抑えているのでしょうが、すこし金の縁取りがついているような華美な感じもあります。ちょっと気になるのはリズムの重さ。アバドとしては珍しいことですが重量級オケゆえのことでしょう。ハーセスのトランペットは演奏は落ち着いていますが、音色の安定感と高音域の伸び、輝かしい音質は流石なもの。アバドはときおりアクセントをしっかりつけて豪腕オケの存在感を感じさせます。ハーセスに全幅の信頼を置いてゆったりオケの反応を楽しむようです。ハーセスは、古典的なこの曲を、折目正しさの中で輝かしさをきっちりだして演奏しています。音階のひとつひとつが抜群の存在感。オケの音響から完全にクッキリ浮かび上がっています。カデンツァは音階の上昇と高音の圧倒的な伸びをゆったりと表現したもの。オケも落ち着いて寄り添います。
2楽章のアンダンテはハーセスのトランペットの美しい音色と巧みなフレーズコントロールが絶妙。こうしたゆったりしたメロディーをしっかり聴かせるにはしっかりしたテクニックが必要でしょう。アバドは得意の弱音を表情豊かにコントロールすることでソロを支えます。不思議に叙情的に聴こえず純音楽的な表情。
そしてフィナーレは再び重厚なシカゴ響の響きが復活。リズミカルにそよ風のように刻むヴァイオリンの序奏から入り、重厚なオケが畳み掛けます。トランペットの突き抜けるような輝かしい響きがホールに響き渡ります。特に素晴らしいのが短いカデンツァ。高音の安定感は揺るぎないものがありますね。流石にシカゴ響の歴史に名を残す名トランぺッターの演奏。終結部はトランペットとオケのエネルギーが満ちあふれます。最後の響きがホールに消え入るところが絶妙。
このところ懐かしいアルバムを取り出して聴くのが定番になっていますが、このアルバムも30年近く前の演奏。アバドはこの頃はシカゴ響やロンドン響を振って飛ぶ鳥を落とす勢いのころ。このアルバムではシカゴ響の名手とモーツァルトとハイドンの協奏曲を楽しむように録音しています。モーツァルトの3曲はどちらかと言うとハイドンよりも相性がいいように感じます。このハイドンのトランペット協奏曲は名手ハーセスとの協奏曲のショーピースのような演奏と言えばいいでしょうか。指揮もオケもソロも名手ぞろいですのでテクニックと演奏の質は完璧。ただハイドンの曲の演奏という視点で見ると、ハイドンの音楽のほの暗い情感、ハイドンらしい晴朗感といったものとは何か違う演奏という印象がつきまといいます。トランペット協奏曲の評価は[++++]としておきます。
今日は月末日ですが、今月はいろいろあってレビューが少なかったのて恒例のHaydn Disk of the Monthはお休みとさせていただきます。今月分も含めて来月表彰したいと思います。
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