作曲家ヨーゼフ・ハイドンの作品のCD、LP、映像などを収集しレビューしています。膨大なハイドンの作品から名盤、名演奏を紹介します。

アントニオ・ヤニグロ/ラジオ・ザグレブ交響楽団の「悲しみ」

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今日は定番のアルバム。ずいぶん久しぶりに取り出しました。

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アントニオ・ヤニグロ(Antonio Janigro)指揮のラジオ・ザグレブ交響楽団(Symphony Orchestra of Radio Zagreb)の演奏で、ハイドンの交響曲44番「悲しみ」、45番「告別」、46番、47番、48番「マリア・テレジア」、49番「受難」の6曲を収めたアルバム。収録は1963年8月19日、20日、当時はユーゴスラビア、現在はクロアチアのザグレブ(録音場所は不明)でのセッション録音。レーベルはVANGUARD CLASSICS。

ラックからしばらく聴いていないアルバムを偶然取り出したもの。おそらく手に入れたのは15年以上前の事だと思いますが、10年以上取り出していませんでした。出だしの悲しみをちょっとかけてみたところ、遥か昔の記憶とは異なり、非常に鮮明かつ情感的な音響でビックリするほど素晴らしい演奏。いまさらビックリしても遅いのですが、、、(苦笑)

今日は6曲のなかから時間の関係で「悲しみ」1曲を取りあげます。

Wikipediaの情報によれば、アントニオ・ヤニグロは1918年、イタリア、ミラノの生まれのチェリストで指揮者。1989年に亡くなっています。幼少の頃からチェロを学び、母の努力で11歳でパブロ・カザルスのレッスンを受けたのをきっかけにして、パリのエコール・ノルマルでカザルスの教えを受けることになりました。パリではポール・デュカス、ストラヴィンスキー、コルトー、ティボーなどの一流の演奏家と親交をもつように。ディヌ・リパッティとは親友であり、1937年のエコール・ノルマル卒業後リパッティやパウル・バドゥラ=スコダらとともにソロ活動を始め、演奏家として有名になったようです。第二次世界大戦中は当時ユーゴスラヴィアのザグレブ音楽アカデミーのチェロと室内楽の教授としてザグレブで活動。ヤニグロはユーゴスラヴィアのチェロ界の近代化につとめるとともに、ザグレブ放送交響楽団を指揮、また1953年にザグレブ室内合奏団(I Solisti di Zagreb)を設立し、自ら指揮者となりました。ザグレブ室内合奏団は世界的な室内合奏団としての地位を確立して、数々の演奏会と録音を残しています。ヤニグロは晩年を思い出の地ザグレブで過ごしました。ヤニグロの没後、その功績を讃えて「アントニオ・ヤニグロ・国際チェロコンクール」が開催されています。

Hob.I:44 / Symphony No.44 "Trauer" 「悲しみ」 [e] (before 1772)
1963年の録音としては十分に鮮明な響き。残響も多めで柔らかい木質系の響きにもかかわらず鮮明な、見事な録音。20bit DIGITAL ULTRA ANALOGのレッテルは伊達ではありません。シュトルム・ウント・ドラング期独特の濃い情感が溢れんばかり。オケもハーモニーがピタリと決まる腕利き揃いに聴こえます。生気もダイナミクスも十分。最新のデジタル録音よりも音楽が伝わってきます。1楽章の終わりにテンポを極端に落とすところが時代を感じます。
2楽章のメヌエットは濃い陰影がついたまさにシュトルム・ウント・ドラングを感じさせる表現。何という完成度。心を絞るような陰影。少ない音符から描き出される濃い情感。ホルンや木管も完璧なバランス。指揮者の指示に完全に一体化したオーケストラ。淡々と曲を進めているのに深まる一方の情感。この楽章は絶品ですね。
そして、奏者の全神経が集中したアダージョ。弱音器付きの弦楽器が奏でる訥々としたメロディー。じわりと盛り上がる感興。単純な旋律なのにこの深みはなんでしょう。演奏によっては平板にも聴こえますが、この演奏では淡々と進めることで深みを見せる至芸。ヤニグロの確信犯的コントロール。弦楽器のアンサンブルの精度は素晴らしいものがあります。
フィナーレはゴリッとした低音弦群のアンサンブルが絶妙。節度あるエネルギー感。前楽章との対比は鮮明につけて規則的なリズムの上での推進力の表現。くすんだ音色のオーケストラから発散される濃い音楽。この楽章も最後はテンポを極端に落として終わります。

古い演奏ですが、録音は素晴らしく、そしてヤニグロのコントロールするくすんだ音色のラジオ・ザグレブ交響楽団は素晴らしい精度の演奏。まさにシュトルム・ウント・ドラング期のハイドンの交響曲の理想的な演奏といえるでしょう。悲しみは名曲ゆえ素晴らしい演奏は多いですが、この完成度はこれ以上の演奏を必要としないほどの説得力を感じさせます。不思議に典雅なジャケットもなかなかオツ。評価は[+++++]に変更です。

このあとに続く告別の1楽章も素晴らしいエネルギー感。残りの曲も時間が取れる時に紹介する必要がありそうですね。

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4 Comments

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有田

No title

お久しぶりです。
御父君の御冥福をお祈り申し上げます。
我が父は20年以上前に召されましたが、息子にとって如何に大きな存在であったか…今でも思い返しております。貴兄の哀しみが少しでもいやされますよう、願わずにはいられむせん。

標題のヤニグロ指揮のハイドン、遥かいにしえに、FM放送で聴きました。中野博詞氏の穏やかな語り口で、45【告別】初めて知り、サプライズな幕切れにびっくりした記憶が甦りました。録音状態云々を超えて、職人芸の演奏こそがが、まさしく正鵠を射るものなのかも知れません。
私自身は、カラヤン指揮の交響曲から入りましたが、クラシック好きでハイドンを知らぬ知人…女性は特にハイドンは聴いていない方が多いですね…には、例の、ヴァントの超弩急級の名演76番を薦めております。カラヤンはあくまでもカラヤンであり、ハイドンではありませんね。



  • 2012/04/25 (Wed) 18:18
  • REPLY

michael

No title

A.ヤニグロ、ザグレブ放送SO、しっかり記憶しています。FMでたぶん44番を始めて聴いたのが、ヤニグロ、45番がドラティだったと思います。それ以来、疾風怒濤にハマりました、もう一度聴いてみたいですね。
10年以上、しまいっぱなしだった音源がとても良かった!というのはありますね。

Daisy

Re: No title

有田さん、こちらこそご無沙汰しております。
お心遣いありがとうございます。まさに同じ心境です。亡くなってはじめてわかる存在の大きさです。あとは時を過ごすしかないのかなと思っております。

ヤニグロは懐かしい存在なんでしょう。私は同時代で聴いた訳ではないのでそれほどでもありませんが、まさに職人芸の演奏でしょう。私も昔はFMのエアチェックでずいぶんいろいろな演奏を聴きました。昔はカラヤンとベルリンフィルの来日があるとFMの生中継がありましたね。たしか40年くらい前に父親からエアチェックを頼まれ、リヒャルト・シュトラウスの英雄の生涯のエアチェックの出だしを録りそこねた、今となってはほろ苦い思い出もあります。当時はカラヤンは圧倒的な存在感でしたね。以前の記事でも書きましたが、私が自分で買った最初のLPはカラヤン/ベルリンフィルのブルックナーの4番でした。

まだまだハイドンの啓蒙に努めなくてはなりませんね。地味ですが、音楽が好きな方にこそ聴いてほしいですね。早く日常のペースにもどって、役割を果たさねばなりません。今後ともよろしくお願いいたします。

  • 2012/04/25 (Wed) 23:10
  • REPLY

Daisy

Re: No title

michaelさん、コメントありがとうございます。
今更ヤニグロですが、少しも古さを感じさせず、素晴らしく新鮮な響きを再認識しました。ハイドンの最も魅力に溢れていた時代の素晴らしい曲ですね。今一番聴くべき音楽は自身のラックにあると誰かが言ってましたが、自身の所有盤も一度聴いたきりのものや、一度も通して聴いた事のないものもあり、宝の山なのかもしれませんね。そう思ってみると不義理をしているアルバムは山のようにあります。

  • 2012/04/25 (Wed) 23:14
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